片山健志
2015年9月10日16時08分
医療や教育、司法などさまざまな分野で活躍する心理職には、これまで臨床心理士など民間の資格しかなかった。高まるニーズに応えるため、初めて国家資格を設ける「公認心理師法」が9日、参院本会議で可決、成立した。超党派の議員立法として提出されていた。2017年度にも施行される。
日本臨床心理士会などによると、心理職には約2万8千人の臨床心理士をはじめ、学校心理士、臨床発達心理士など20程度の民間資格がある。その職場は、医療機関の精神神経科や心療内科、福祉施設での心理相談、企業のメンタルヘルス担当部署、家庭裁判所の調査官など幅広い。
学校のスクールカウンセラーも大半は臨床心理士だ。13年度には2万310の公立小中学校に配置されているが、文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」は約3万校の全公立小中学校に増やす方針を掲げる。
民間資格のままでは、働く環境が安定しているとは言えない。例えば医療分野では、心理職は診療報酬の対象職種ではないため雇いにくく、心理職による心理療法を保険適用外で通常の診療と別にしている医院もあるという。
日本臨床心理士会が11年に会員を対象に行った調査では、臨床心理士の就業形態は非常勤が45%だった。国家資格になれば、雇用の安定にもつながるとして、関係団体や学会が国家資格の創設を求めていた。
ただ、成立した公認心理師法の中で、関係者の意見が分かれる条文もある。
支援する相手に主治医がいるときは、その指示を受ける必要性が法に明記された。この点について、臨床心理士の養成に携わる伊藤良子・学習院大教授は「医師に秘密で心理職にセカンドオピニオンを求めに来る患者は少なくない。医師の指示を受けることが前提になると秘密が保てず、結果的に患者のためにならない」と指摘する。
また、大学院修了のほか大卒後に実務に就いた人などにも受験資格を認めた。大学院修了が条件の臨床心理士に比べ、質の低下を心配する声もあるため、文科、厚生労働の両省令で定める実務に就く期間を「相当の期間とすること」などを付則で定めた。(片山健志)
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞官邸クラブ
PR比べてお得!