心臓手術:僧帽弁閉鎖不全症…カテーテル治療に国内初成功

毎日新聞 2015年09月09日 20時14分(最終更新 09月09日 20時56分)

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は9日、心臓内の弁が閉じにくくなって血液が逆流する「僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症」のカテーテル(細い管状の器具)治療に国内で初めて成功したと発表した。胸を切開する従来の心臓手術に比べ、患者の肉体的な負担が小さい。年度内にも国循を含め5病院で治験として30例の治療を行い、国に医療機器の承認申請をする方針。

 僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にあり、血液の逆流を防ぐ機能を持つ。閉鎖不全症は高齢者に多く、死亡するケースもある。治療は弁の補修手術が有効だが、胸を開いて人工心肺装置を使うなど負担が大きく、患者によっては手術できない場合があった。国循によると、国内では年間約5000例の手術が行われているという。

 今回の治療方法は、先端に金属製のクリップを付けたカテーテルを使う。太ももの静脈からカテーテルを通し、クリップで弁の一部を閉じる。海外では約2万例の実績がある。

 重症の80代の男性患者を対象に7日、今回の方法で治療したところ、逆流がほとんどなくなり、1週間程度で退院できる見込みとなった。記者会見した心臓血管内科の天木誠医師は「高齢化で今後も患者が増える。新たな治療法の拡大を目指したい」と話した。【畠山哲郎】

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