中東やアフリカから欧州に向かう難民や移民の流れが止まらない。その数は今年だけで30万人を超え、昨年の総数約22万人をすでに上回っている。

 多くはシリアなどから戦火を逃れた人々だ。エーゲ海や地中海を渡り、陸路でドイツや北欧をめざす波となっている。

 その保護と受け入れは、一刻を争う人道問題である。最前線の現場である欧州各国にまず一体的な取り組みを望みたいが、同時に世界規模で緊急対応する道を探るべきだ。

 すでにカナダや豪州、南米諸国などが受け入れを表明している。欧州を率先するドイツを筆頭に、難民救済の決断は重く、評価に値する。米国や日本を含む他の主要国も、早急に世界の難民救援策を出すべきだ。

 欧州への難民移民の流れは、中東の「アラブの春」を機に、2011年頃から急増した。北アフリカから地中海を渡る人が多かったが、今年に入ってトルコからギリシャ経由で旧東欧へ入るルートが中心になった。

 その途中では痛ましい事故も続いている。8月には、オーストリアで冷凍トラックに乗っていた70人以上が死亡した。今月はトルコの海岸に流れ着いた3歳児の写真が衝撃を与えた。

 欧州連合は今週、16万人を加盟国に割り当てる案を出した。受け入れ実績の豊かな欧州といえども、習慣や文化が異なる人々を迎える戸惑いは市民の間に根強い。移民排斥を訴える右翼などの反対運動もある。

 それでも、ドイツに続き、英国、フランスなどが受け入れを拡大する方向で動いているのは歓迎すべき流れだ。

 国連は今月下旬の定例総会の際、この問題をめぐる高位会合を開く。より迅速な対応のために、ドイツとフランスが主導して多国間で調整する国際枠組みを検討してもいいだろう。

 難民問題は、今の世界で最も深刻な危機の一つである。内戦状態が4年以上続くシリアだけでなく、アフガニスタンやソマリアなど各地の混沌(こんとん)から逃れる人々は長年、後を絶たない。

 難民の最大の流入先になっているトルコやパキスタン、レバノンなど、紛争の近隣地域での難民支援も急がれる。紛争自体の収拾をめざす国際努力もいっそう強めねばならない。

 日本にとって、地球規模での対応が迫られる難民問題こそ、積極的平和主義と呼ぶにふさわしい分野ではないか。日本が昨年1年間に認定した難民は11人だった。国際責任を果たすうえでいま、何ができるか、真剣に考えるべきときだ。