2017年春に予定する10%への消費増税をにらみ、自民、公明両党の協議会が「日本型軽減税率」の検討を始めた。与党が財務省にたたき台を作るよう求めた経緯があり、それを基に具体的な制度を考えていく。

 お店での飲食料品の購入や外食の際、これから国民に配られるマイナンバーカードを代金支払い時にかざし、金額に応じたポイントをためる。そのポイントに基づいて支払った消費税の一部を還付し、税率引き上げに伴う負担増を和らげる。財務省案はそんな内容だ。

 与党、とりわけ公明党が主張してきたのは、飲食料品などの消費税率を今の8%にとどめる形での軽減税率だ。しかし、それでは負担減の必要性が乏しい高所得者も恩恵を受け、その分社会保障に充てる財源が目減りしてしまう。どんな商品やサービスに軽減税率を適用するかの線引きも難しい。

 財務省案では、還付の対象を酒類以外の飲食料品に限った。一人あたりの還付額に上限を設けながら、還付の対象者から所得の多い人をはずす選択肢にも触れており、軽減税率の問題点を意識した内容と言える。

 が、これはあくまで論議の出発点だ。問われるのは、与党の見識と姿勢である。

 今後、還付の対象分野を飲食料品以外に広げるのかどうか。還付の対象者や水準について、必要な人に必要な支援をする仕組みにできるのか。

 この機に改めて社会保障と税の一体改革の目的と議論の過程を思い出してほしい。

 社会保障費の増加などで財政難が深刻さを増すなか、消費税を増税し、国債発行という将来世代へのつけ回しを抑えつつ社会保障制度も支えていく。これが一体改革だ。ただ、消費税には低所得者ほど負担が重くなる逆進性があるため、その対策も講じる必要がある。

 それが与党協議の出発点だった。低所得者対策と言いながらその目的を離れて過度に膨らみ、社会保障財源に響くようでは本末転倒である。

 財務省案にも、課題はある。

 買い物や飲食をするたびに、支払金額に関する情報を行政に送ることについては、個別の品目と価格など内訳に触れないとはいえ、プライバシーの観点から心配する消費者もいるだろう。小売店などに新たに端末を置いてシステムを築く手間とコスト、情報管理のあり方など、実務や運用上の懸念もある。

 国民が納得できる制度に仕上げられるかどうか、与党の協議を注視したい。