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 取り調べの録音・録画(可視化)を一部の事件に義務づけたり、司法取引を導入したりすることを柱とした刑事司法改革の関連法案について、自民党は今国会での成立を断念する方針を固めた。衆院では可決したが、参院は十分な審議時間を確保できなくなり、会期中の採決が難しくなったためだ。

 法案は8月21日に参院本会議で趣旨説明が行われたが、法務委では、先に審議に入ったヘイトスピーチを禁止する「人種差別撤廃施策推進法案」の対応をめぐり、与野党が対立。委員会自体が開かれない状態が続いていた。

 改革法案には、可視化のほか、ほかの人の犯罪を明らかにすると起訴の見送りなどの見返りを受ける司法取引制度の導入や、通信傍受(盗聴)の対象犯罪の拡大などが盛り込まれた。検察の証拠改ざん事件を機に改革が検討され、法務省が今国会に法案を提出した。

 5月に衆院で審議入りした後、衆院法務委では「可視化の対象が限定的だ」「司法取引が新たな冤罪(えんざい)を生む」などの指摘や懸念が相次いだが、約70時間の審議を経て、8月7日に本会議で可決。参院を経て、今国会中に成立する見通しになっていた。