安倍首相の戦後70年談話で 朝日新聞が「重大誤報」!? ~官邸の陽動作戦に引っかかったのか

2015年08月24日(月) 田崎 史郎
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「悲惨な迷走」はどっちのほうか

以上から、9日付朝日新聞の報道は「誤報」だったということだ。私たちも気をつけなければならないので内実を一つ明かしておく。正副長官会議で、あるメンバーが内容に驚きこう提案した。

「よくここまで踏み込まれました。14日まで厳秘にしましょう。外にはできるだけ『期待値』を下げるように話しておきましょう」

3日以降、官邸の要人は記者からの取材に対し、できるだけ期待値を下げるように話したわけだ。朝日は官邸の陽動作戦にひっかかってしまったのではないか。にもかかわらず、朝日は15日付朝刊社説で「戦後70年の安倍談話 何のために出したのか」と題してこう書いた。

《それにしても、談話発表に至る過程で見せつけられたのは、目を疑うような政権の二転三転ぶりだった。安倍氏は首相に再登板した直後から「21世紀にふさわしい未来志向の談話を発表したい」と表明。村山談話の歴史認識を塗り替える狙いを示唆してきた。

そんな首相の姿勢に中国や韓国だけでなく、米国も懸念を深め、首相はいったんは閣議決定せずに個人的談話の色彩を強めることに傾く。それでは公式な政府見解にならないと反発した首相側近や、公明党からも異論が出て、再び閣議決定する方針に。節目の談話の扱いに全くふさわしくない悲惨な迷走ぶりである。

この間、国内のみならず欧米の学者も過ちの「偏見なき清算」を呼びかけた。世論調査でも過半数が「侵略」などを盛り込むべきだとの民意を示した。そもそも閣議決定をしようがしまいが、首相の談話が「個人的な談話」で済むはずがない。日本国民の総意を踏まえた歴史認識だと国際社会で受け取られることは避けられない。それを私物化しようとした迷走の果てに、侵略の責任も、おわびの意思もあいまいな談話を出す体たらくである。》

「目を疑うような二転三転」、「悲惨な迷走」をしたのは政権ではなく、朝日新聞である。朝日の社説は「論」として立派かもしれない。しかし、誤った報道に基づいて「論」を構成するなら、砂上の楼閣ではないか。(敬称略)


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