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【正論】
戦後70年に思う 謝罪にけじめをつけた安倍談話 杏林大学名誉教授・田久保忠衛
日本が卑屈になっていた根本には、東京裁判による満州事変以降の侵略戦争史観がある。首相の「戦後70年談話」の内容を検討した有識者懇談会「21世紀構想懇談会」の報告書で気になるのは、「日本は、満州事変以後、大陸への侵略を拡大し」云々(うんぬん)の「向こう側」に立った表現である。
歴史観は統一できないので「こちら側」の解釈があって然(しか)るべきだ。歴史には複雑な要素が絡み合って因果関係が形成されていくのであって、満州事変の少し前に定規を当て剃刀(かみそり)で切り取って1945年までの15年間を日本の侵略戦争と決めて断罪する不自然さに、学問的な疑問を感じないのか。
この間の事情を実態的に調べ上げたリットン報告書以上の詳細な調査結果はない。日本陸軍の暴走を正当化する理由は全く存在しないが、満州問題の複雑性は一言で片付けるにはあまりにも重い。
≪「こちら側」の立場を貫く≫
東京裁判の弁護副団長だった清瀬一郎氏は冒頭陳述第2部の最初に「本紛争に包含せられる諸問題は、往往称されるごとき簡単なものにあらざること明白なるべし。問題は極度に複雑なり。いっさいの事実およびその史的背景に関する徹底せる知識ある者のみ、事態に関する確定的意見を表示し得る者ありというべきなり」とのリットン報告書の表現を引用した。