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【正論】戦後70年に思う 謝罪にけじめをつけた安倍談話 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

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【正論】
戦後70年に思う 謝罪にけじめをつけた安倍談話 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

 安倍首相は有識者会議の報告書を尊重すると述べながら、満州事変に関しては「こちら側」の立場を貫いた。「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」は国際連盟規約、不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)、国連憲章、日本国憲法第9条第1項に貫かれている一貫した原則だ。

 「向こう側」の論理と日本の歴史学界を覆っていたマルクス主義史観の合作は歴史教科書だった。この是正を求めて発足した「新しい歴史教科書をつくる会」が直面したのは、中学校の歴史教科書全てに「侵略」の二文字が躍っている異常な事態だった。しかし、いま「侵略」を変えていないのは、中学歴史教科書8社中3社にすぎない。安倍談話はこのキーワードなるものを取り入れたが、違う文脈で使用した。賢明だと思う。

 ≪戦後日本の不戦条約の精神≫

 安倍談話は「植民地支配から永遠に訣別(けつべつ)し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」と当然の常識を述べたが、チベット、ウイグルなど事実上の植民地を持っている国はどう反応するか。「痛切な反省」が入っているかどうかは「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました」を読めば一目瞭然だ。時制は現在完了だ。

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