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夢は洋画をかけ廻る

タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。

「ミッション:8ミニッツ」:犯人を捜す為、爆破8分前の列車の乗客の意識に入り込んだ男の試行錯誤

アメリカ映画 フランス映画

ミッション:8ミニッツ」(原題: Source Code)は、2011年のアメリカ、フランス合作のSF/サスペンス&アクション映画です。爆破される8分前の列車の乗客の意識に入り込み、犯人を捜すというミッションを課せられた男が何度も同じ時を彷徨い、試行錯誤する姿を描いています。

 

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監督:ダンカン・ジョーンズ

脚本:ベン・リプリー

出演:ジェイク・ジレンホール(コルター・スティーヴンス)

   ミシェル・モナハン(クリスティーナ・ウォーレン)

   ヴェラ・ファーミガ(コリーン・グッドウィン)

   ジェフリー・ライト(ラトリッジ博士)

   マイケル・アーデン(デレク・フロスト)

   キャス・アンヴァー(ハズミ)

   ラッセル・ピーター(マックス・デノフ)

   ほか

 

【あらすじ】

午前7時40分、陸軍パイロットのコルター・スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)はシカゴ行きの通勤列車の中で目を覚ましますが、周りの光景にも、自分に話しかけてくる目の前の女性クリスティーナ(ミシェル・モナハン)にも見覚えがなく、自分が何故ここにいて彼女が誰なのかわかりません。陸軍大尉のコルターはアフガニスタンで戦闘ヘリを操縦していたはずですが、鏡に映る自分の顔も別人であり、所持していた身分証明書には、「ショーン・フェントレス:教師」と記されています。そして8分後、列車は大爆発を起こして乗客は全員死亡します。

コルターが操縦席の様な薄暗い密室でが意識を取り戻すと、モニター画面に映る軍服姿の女性、グッドウィン空軍大尉(ヴェラ・ファーミガ)から、列車の爆発事故について質問されますが、コルターは状況が飲み込めず、回答できません。ラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)が開発した「包囲された城」と呼ばれるこの施設は、「ソースコード」という実験的なプログラム装置を用いて、死亡したショーンの脳に残っていた爆発直前8分間の記憶と、コルターの意識とを同期させ、脳内で体験させるものだと知らされます。午前7時48分に列車爆破事件が発生したことは事実で、コルターの任務は、乗客であるショーンとなって車内を捜査し、爆弾魔を特定することであり、6時間後に次の爆破テロがシカゴのダウンタウンで実行される前に、列車爆破の犯人を見つけなければならないと説明を受けます。

コルターは混乱しつつも列車の時間に戻り、列車を降りてクリスティーナと逃げようとしたり、列車に仕掛けられた爆弾を解除を試み失敗するなど、何度か8分間の体験を繰り返すうち少しずつ状況を把握していきます。また、自分が2か月前アフガニスタンで出動中に重傷を負って身体の大部分を失い、生命維持装置にかけられており、さきほどの操縦席の様な密室も自分の体も脳が創り出した幻想であることを知ります。 コルターは安楽死させて欲しいとラトレッジ博士に頼み、爆弾犯を見つける任務の完遂を条件に許可されます。

コルターは8分間を何度も繰り返した後、ついに爆弾犯フロスト(マイケル・アーデン)を発見し追い詰めますが、フロストはショーンとクリスティーナを銃で撃ち、爆弾を積んだライトバンで走り去ります。コルターは記憶したナンバープレートと方角を報告し、これによって現実世界ではフロストが逮捕され、次の爆破テロを防ぐことに成功しますが、ラトレッジ博士は約束を破り、次の任務でもコルターを利用する為に彼の記憶を抹消するようグッドウィンに指示を出します。一方、コルターは「まだやり残したことがある、8分経ったら、生命維持装置を切って欲しい」とグッドウィンに頼み、列車の時間にもう一度転送してもらいます・・・。

 

90分と比較的コンパクトな SF/サスペンス&アクション映画ですが、感動的な作品に仕上がっています。主人公のミッションは列車事故の犠牲者の最後の8分間の意識に入り込み、犯人を特定することですが、起きてしまった事故は避けられないという常識に反して事故を防ごうと手を尽す一方、犠牲者たちが最後の瞬間を幸せに過ごせるようにと手を打ちます。

 

ミッション:8ミニッツ」は「恋はデジャ・ブ」と「オリエント急行の殺人」の中間的作品という評がありますが、主人公が何度も死を経験する中で活路を見出そうとする点は、むしろ「オール・ユー・ニード・イズ・キル」に似ています(公開は「ミッション:8ミニッツ」が先)。また、主人公が経験する熾烈な心理的戦いは、「恋はデジャ・ブ」にはないものです。

 

ミッション:8ミニッツ」は監督デビュー作「月に囚われた男」で一躍、注目を浴びたダンカン・ジョーンズの監督第二作で、前作を超えるすばらしい仕上がりとなっています。彼は、デヴィッド・ボウイと最初の妻である元モデルのメアリー・アンジェラ・バーネットの子ですが、本人自らアピールすることはなく、また、映画を観れば実力で評価を得ていることがわかります。

 

脚本は緻密なサスペンスを描いた実験性の強いものですが、ダンカン・ジョーンズ監督は、「特殊な設定を用いて『人間が果たすべき責任は一体何なのか?』を描きたかった」と語っています。また、映画製作に当たっては、爆発事故前の8分が繰り返されても飽きないような工夫がこらされています。監督は、「人間関係を描きたかった」とも語っており、同じ8分間の出来事も、コルターの出方が違うと周囲の反応が変わってくるのが見事です。特にクリスティーナとの関係は、ちょっとしたラブ・ストーリーに発展していきます。

8分間を何度も繰り返すので、視覚的に何らかの新鮮さを保ち続けなければなりません。ただし、映画の謎をすぐに明かすわけにはいかない。そのコントロールには苦労しました。また俳優たちもチャレンジが要求されました。ジェイクは時系列を追って謎を解き明かしていく役ですが、相手役のミシェル・モナハンは8分を「同じ状態」でスタートして、ジェイクの行動や出来事にあわせて演技を変えていかなければならないんです。(ダンカン・ジョーンズ監督)

 

列車の中で目覚めるコルター(ジェイク・ジレンホール) 

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迫り来る大惨事など露知らぬクリスティーナ(ミシェル・モナハン

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コルターに指示を出すグッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ

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時限装置の解除を試みる

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幸せな最後を演出する

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「我思う、故に我あり」と言ったのは哲学者のデカルトですが、この映画を観ていていて、「意識が存在を規定するのか、存在が意識を規定するのか?」とふと思いました。デカルトの言うように、意識が存在を規定するのであるならば、意識のあり方によって存在のあり方も変わり、自分を取り巻く世界が違ったものになります。もし、意識が同時にふたつ以上存在できれば、複数の世界が同時に存在しても不思議ではない事になります。我々は気づいていないだけなのかもしれませんね。

 

この映画のエンディングについては、様々な解釈があるようですが、ダンカン・ジョーンズ監督は次のように語っています。

僕の中では「たったひとつのエンディング」しかありえないと思っているので、そこいたるヒントを映画全編に散りばめました。ちなみに、オープニングタイトルが出るシーンにもすでにヒントが入ってます。何度も観て楽しんで欲しいですね。(ダンカン・ジョーンズ監督)

 

映画に登場するシカゴ、ミレニアム・パークのクラウド・ゲート

 

主人公が生死を繰り返す映画

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ダンカン・ジョーンズ監督作品

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