労働者派遣法改正:雇い止めの無念…実態訴え続ける声

毎日新聞 2015年09月09日 19時59分(最終更新 09月09日 22時09分)

 人を代えれば派遣先が派遣労働者を使い続けることが可能になる労働者派遣法改正案が9日、参院で可決された。11日に成立する。改正案への反対を表明してきた派遣労働者たちは「人生を踏みにじられた思いだ」と悔しがりつつ、今後も学習会や集会を開き派遣労働者の雇用安定をアピールし続ける意向を示した。

 派遣法改正を巡っては、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会で原案が練られた。審議会には派遣会社の役員がオブザーバーとして参加したが、派遣労働者はメンバーに選ばれず、議論に加わっていない。

 派遣労働者は労働組合加入例が少なく、労働者同士が集まって話し合う機会も少なかった。派遣法改正案の国会審議を機に日本労働弁護団などが集会参加を呼びかけると、多くの派遣労働者が集まり「雇い止めにあった」「専門業務以外の仕事ばかりさせられている」と実態を訴えた。

 問題を共有する中で「不安定な雇用で声を上げられなかったが、現状を変えたい」との声が上がった。派遣労働者10人が8月、「派遣向上フォーラム」を発足させ、弁護士ら約20人の支援を受けて、国会議員を訪ね改正案反対を訴えた。今後は学習会や集会を開催し、雇用を守る方策も模索する。

 中心メンバーの東京都の女性(56)は、OA機器操作の専門業務で同じ会社で15年働いてきたが、改正案の審議に伴い、派遣先から3年後の雇い止めを通告された。「改正案でまじめに働いてきた人生を踏みにじられた思いだ。どう対処するか仲間と共に考え、行動したい」と話した。同様の専門業務で13年働き、昨年3月に雇い止めされた都内の女性(52)は「法律も行政の仕組みも派遣労働者を守る仕組みになっていない。黙っていないで現状を伝えなければ」と語る。【東海林智】

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