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【産経抄】あなたに褒められたくて 11月19日

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【産経抄】
あなたに褒められたくて 11月19日

 きのう訃報が届いた日本映画を代表する大スター、高倉健さん(83)は、寡黙な人だった。本名・小田剛一のプライバシーは謎に包まれていた。その一方で、エッセー集『あなたに褒められたくて』では、自らのルーツに言及している。

 ▼1333年5月、鎌倉幕府の執権だった北条高時の屋敷は、新田義貞の攻撃によって灰燼(かいじん)に帰す。このとき、高時とともに自害した一族の一人、北条篤時(あつとき)が先祖だった。吉川英治の『私本太平記』にも登場する。篤時の子供たちは、鎌倉から西へ逃げた。

 ▼何代かを経て、北九州に落ち着く。両替商を営むうちに名字帯刀を許されて、小田姓を名乗るようになった。健さんの5代前、幕末を生きた小田宅子(いえこ)という女性は、なんと善光寺から日光までの参詣(さんけい)の旅を楽しんだ。宅子の日記をもとに田辺聖子さんが『姥(うば)ざかり花の旅笠』で、道中を詳細に再現している。田辺さんによると、宅子の墓誌には「少(わか)クシテ容姿艶麗(えんれい)」だったとあった。やはり、美男美女の家系らしい。

 ▼筑豊の炭鉱町に生まれた健さんが、もっとも強い影響を受けたのは、やはり母親だった。昨年の文化勲章受章の際に発表したコメントで、映画人生の支えとなった母親の「辛抱ばい」という言葉を披露している。

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