好き嫌いはいけません――。子どものしつけの基本である。多様な栄養素を満遍なく摂取しないと、からだに障る。脳も同じらしい。色々なことをバランスよく経験すると、若々しさが保たれるという。脳科学者の茂木健一郎さんは、脳は「雑食」を好む、と表現している▼茂木さんは右利きだが、なるべく左手を使うそうだ。左手で箸を持ったりすると、左右の脳が釣り合いよく使われることになる。脳を疲れさせないためには大切らしい。単調な使い方だと脳は弱くなってしまうという。偏食はいけない▼何でも食べるというと、昔の自民党を思い出す。右派からリベラルまで、官僚出身から党人派まで、幅広い人材を抱え、土建、農政、厚生と族議員の品ぞろえも豊富だった。「国民政党」と言われたゆえんだ▼以前、自民党幹部が民主党を「雑居政党」と評したので、筆者は自民党は「雑食政党」ですねと返した。宿敵社会党をものみ込んで連立したのだから、と。負の側面も含め、胃の丈夫な集団だった▼よく肥えた健啖(けんたん)家の面影は、今の自民党にはない。右の方に傾いて、やせぎすに見える。きのう、「この道しかない」の安倍総裁が再選された。「この道も、あの道もある」と掲げた野田聖子氏は、わが子の偏食を叱るかに見えたが、及ばなかった▼心配する義理はないが、この道を行きすぎて栄養不足にならないか。茂木さんよろしく、時には左手も使ってバランスを取って、などと言ったら怒られるに決まっているが。