在外被爆者:医療費支給「国外にも適用」最高裁初判断

毎日新聞 2015年09月08日 21時02分(最終更新 09月08日 21時55分)

 被爆者援護法の医療費支給規定が海外に住む被爆者にも適用されるかどうかが争われた訴訟の上告審判決が8日にあり、最高裁第3小法廷は「在外被爆者が国外で医療を受けた場合にも適用される」との初判断を示し、医療費支給を担当した大阪府側の上告を棄却した。在外被爆者への医療費全額支給を認めた大阪高裁判決が確定した。判決を受け国は、33の国と地域に約4280人いる全ての在外被爆者を医療費支給の対象とする方針を明らかにした。国内外の被爆者の医療費格差が解消される。

 岡部喜代子裁判長は、援護法は医療費支給の要件を、国内に限るとは定めていないとし「在外被爆者が医療を受けるため日本に渡航するには困難を伴う」と指摘。「国外で医療を受けた場合に一切支給されないのは援護法の趣旨に反する」と述べた。裁判官5人全員一致の意見。

 同種の訴訟では、広島、長崎両地裁が医療費支給を認めず、米国と韓国の在外被爆者らが広島、福岡高裁に控訴している。国は2件についても自治体と調整し、原告への医療費支給の作業を進めるとしている。

 最高裁判決の原告は、胎内被爆した韓国人男性(69)と、韓国人男性2人の遺族。3人はいずれも広島で被爆し、被爆者健康手帳の交付を受けた。援護法に基づき、韓国の医療機関で自己負担した治療費の支給を大阪府に申請したが、海外在住であることを理由に却下された。これを不服として提訴。1審・大阪地裁が2013年10月に却下処分を取り消し、大阪高裁も14年6月に支持していた。【山本将克、古関俊樹】

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