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在外被爆者に医療費支給すべき 最高裁が初判断9月8日 18時54分
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広島や長崎で被爆したあと、日本を離れた人には、国内の被爆者のように医療費が全額支給されないことについて、最高裁判所は「被爆者救済のために定められた法律の趣旨に反する」として、医療費を支給すべきだとする初めての判断を示しました。
広島や長崎で被爆した人たちには国が病気やけがの医療費を支給していますが、日本を離れた人については、制度が異なるなどとして、上限のある別の事業で医療費を助成しています。これに対して、韓国人の被爆者や遺族合わせて3人が、韓国でかかった医療費の全額を支給するよう大阪府に求める裁判を4年前に起こし、1審と2審は訴えを認めました。
8日の判決で、最高裁判所第3小法廷の岡部喜代子裁判長は「医療を受けるために日本に渡航するのは困難で、国外で受けた医療の費用が支給されないとなれば、被爆者救済のために定められた法律の趣旨に反する」として、海外に住む被爆者にも医療費を支給すべきだとする初めての判断を示し、原告の勝訴が確定しました。
海外に住む被爆者の医療費を巡っては、広島と長崎でも裁判が起こされ、いずれも1審で訴えが退けられていますが、8日の判決はほかの裁判にも影響を与えるものとみられます。
厚生労働省によりますと、広島と長崎の被爆者は海外に4200人余りいるとみられ、国は医療費について国内の被爆者と同じ対応をとるよう求められることになります。
8日の判決で、最高裁判所第3小法廷の岡部喜代子裁判長は「医療を受けるために日本に渡航するのは困難で、国外で受けた医療の費用が支給されないとなれば、被爆者救済のために定められた法律の趣旨に反する」として、海外に住む被爆者にも医療費を支給すべきだとする初めての判断を示し、原告の勝訴が確定しました。
海外に住む被爆者の医療費を巡っては、広島と長崎でも裁判が起こされ、いずれも1審で訴えが退けられていますが、8日の判決はほかの裁判にも影響を与えるものとみられます。
厚生労働省によりますと、広島と長崎の被爆者は海外に4200人余りいるとみられ、国は医療費について国内の被爆者と同じ対応をとるよう求められることになります。
「命の大切さ共有しうること見せてほしい」
判決のあとに開かれた会見では、支援者が原告のイ・ホンヒョンさんのコメントを読み上げました。
イさんは腎臓の病気で人工透析を受けているため、来日できなかったということで、「医療費の負担があまりにも大きく、生活面での困難と精神的な被害が甚大でした。日本政府などには、命の大切さを共有しうることを見せてほしいと思います」と話していたということです。
また、弁護団の永嶋靖久団長は「今後、国外に住む被爆者に簡便な手続きで迅速に医療費を支給できるかどうかは行政の宿題だ」と指摘しました。
イさんは腎臓の病気で人工透析を受けているため、来日できなかったということで、「医療費の負担があまりにも大きく、生活面での困難と精神的な被害が甚大でした。日本政府などには、命の大切さを共有しうることを見せてほしいと思います」と話していたということです。
また、弁護団の永嶋靖久団長は「今後、国外に住む被爆者に簡便な手続きで迅速に医療費を支給できるかどうかは行政の宿題だ」と指摘しました。
厚生労働省 制度見直して全額支給へ
広島や長崎で被爆したあと、日本を離れた「在外被爆者」について、最高裁判所が国内の被爆者と同様に医療費を支給すべきだとする初めての判断を示したことを受け、厚生労働省は年内にも制度を見直し、在外被爆者にも医療費を全額支給することになりました。
厚生労働省は、過去にかかった医療費については、領収書やカルテなどの資料を提出してもらい支給するかどうか検討することにしています。
判決について、厚生労働省は「重く受け止め、今後、速やかに原告の方々に対し、医療費の審査や支払い手続きが進められるよう対応します」としたうえで、「訴訟を起こしていない在外被爆者の方々に対しても医療費の支給を行うため、申請先を決めるなど支給手続きの進め方について検討を進めます」などとコメントしています。
厚生労働省は、過去にかかった医療費については、領収書やカルテなどの資料を提出してもらい支給するかどうか検討することにしています。
判決について、厚生労働省は「重く受け止め、今後、速やかに原告の方々に対し、医療費の審査や支払い手続きが進められるよう対応します」としたうえで、「訴訟を起こしていない在外被爆者の方々に対しても医療費の支給を行うため、申請先を決めるなど支給手続きの進め方について検討を進めます」などとコメントしています。
在外被爆者を巡るこれまでの対応は
広島や長崎で被爆し、その後日本を離れた人たちは、国内の被爆者と同じ支援を受けることができませんでした。被爆したあと、海外へ移り住んだり帰国したりした人は「在外被爆者」と呼ばれ、現在、韓国やアメリカなど33の国と地域に4200人余りが暮らしています。
国は、国内の被爆者には「健康管理手当」やかかった医療費の全額を支給していますが、在外被爆者については支給していませんでした。
しかし、平成14年、在外被爆者が健康管理手当の支給を求めた裁判で、大阪高等裁判所が「被爆者援護法は、海外の被爆者にも適用される」と判断したのをきっかけに、国内の被爆者と同様に毎月およそ3万4000円の健康管理手当が支給されるようになりました。医療費については現在、年間30万円を上限に支給され、それ以上かかった場合は、日本の医療保険制度で決められた自己負担と同様の水準が支払われています。しかし、国内の被爆者のように無料とはなっておらず、在外被爆者の団体などは「高齢化が進み、がんなどの病気にかかる人も増え、高額な医療費が払えない人も多い」などとして、医療費を全額国が負担するよう繰り返し求めていました。
今回の最高裁の判断で医療費の格差は解消される見通しですが、在外被爆者の支援団体は、介護サービスに対する給付などほかにも格差は残されているとしています。
国は、国内の被爆者には「健康管理手当」やかかった医療費の全額を支給していますが、在外被爆者については支給していませんでした。
しかし、平成14年、在外被爆者が健康管理手当の支給を求めた裁判で、大阪高等裁判所が「被爆者援護法は、海外の被爆者にも適用される」と判断したのをきっかけに、国内の被爆者と同様に毎月およそ3万4000円の健康管理手当が支給されるようになりました。医療費については現在、年間30万円を上限に支給され、それ以上かかった場合は、日本の医療保険制度で決められた自己負担と同様の水準が支払われています。しかし、国内の被爆者のように無料とはなっておらず、在外被爆者の団体などは「高齢化が進み、がんなどの病気にかかる人も増え、高額な医療費が払えない人も多い」などとして、医療費を全額国が負担するよう繰り返し求めていました。
今回の最高裁の判断で医療費の格差は解消される見通しですが、在外被爆者の支援団体は、介護サービスに対する給付などほかにも格差は残されているとしています。