友達の旦那はブログをやってる。いわゆるブロガーだ。名前は半匿名だけど(山田太郎 通称やまたろ みたいな)、Facebookに更新したと報告するし、ご近所にもよくブログのことを言っているらしいので、匿名性はない。
ブログで月に10万前後の収入があるらしい(とブログにかいてあるのをみた)。
友達は最近だるくなりやすいので、ナントカという3000円くらいのサプリを飲み始めたらしい(とブログで見た)。去年生まれた子供は、選ぶのに7つの理由を並べたベビーカー(ブログで見た)に乗せて連れてきており、この子は一時期夜泣きが激しく、それを理由に夫婦喧嘩をしたけれど、旦那が箱の本とやらを読んで謝ったらしい(とブログで見た)。
子供にもう少し手がかからなくなったら、離婚すると彼女は言った。
何故?と聞くと、ブログが辛いらしい。
何か子供にあるとすぐブログに書く、物を買うときは私の意見よりもブログ受けするかを優先する(彼女は別のベビーカーが良かったらしい)、どこかに出かけたら旅ブログ、何かを食べに行ったら食ブログ、喧嘩してもブログ、ブログ、ブログ…。
有名人でもないのに、私生活が周りに筒抜けなのが苦痛なのだと彼女は言う。
確かに私は彼女のうちの事情をブログから知りすぎている。知りたくないことまで知ってしまっている。
経済状況も想像できるくらい、家族の出来事が事細かにブログのネタにされている。彼女の家の年表を見ているようだと思う。
匿名にしてもらったら?と提案すると、今のブログが彼のアイデンティティーになっているのでそれは嫌なのだと却下済みなのだと。
収入がもっと増えたら許せる?と聞いたら、そうなるとますます家族のことがネタにされるようになるのが目に見えているので嫌らしい。
いくらお金を積まれても嫌なものは嫌だ、子供が大きくなったときに、この子とその家族の出来事が全て他人に公開されてるなんてこの子がかわいそうだと。
今では、どこかに行こう、あれ買おう、旦那からの提案が全て「ブログのため」にしか思えず、家族のための言葉に聴こえなく、愛情も薄れてきた彼女は言う。
離婚しようとしたら、弁護士への相談、届けの書き方、役場への提出方法、子供への面会、とこの辺りもブログのネタにされるんだろうね、と彼女は笑っていた。