韓国の来年度予算案 北抑止力強化と平和統一基盤構築へ

【ソウル聯合ニュース】韓国政府の2016年度(1~12月)予算編成で朝鮮半島統一と外交、国防分野は、北朝鮮の軍事的挑発の脅威に対する抑止力を強化しながら平和統一の基盤を築くことに焦点が当てられた。

 先月、朝鮮半島の緊張を一気に高めるきっかけとなった北朝鮮の地雷埋設・砲撃のような挑発の再発を防ぎ、南北高官協議の合意で生まれた南北関係改善の流れをつないでいくという意志が読み取れる。強固な安保を基盤に南北の対話と協力により信頼を構築していく「朝鮮半島信頼プロセス」を本格化し、平和的な南北統一を早めることを目標に据えた配分となった。

◇国防予算、北朝鮮の挑発抑止に焦点
 来年度予算案の総額は386兆7000億ウォン(約38兆3300億円)で、今年度に比べ3.0%増加する。

 このうち国防費は38兆9556億ウォンと策定された。今年(37兆4560億ウォン)の国防予算から4.0%増額し、全体予算の増加率を上回る。予算編成において国防分野が重視されたことが分かる。

 政府は北朝鮮による5月の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験や先月の非武装地帯(DMZ)での地雷爆発・砲撃事件など軍事的な挑発の経験を踏まえ、韓国軍の北朝鮮に対する抑止力の強化に焦点を合わせた。

 国防予算のうち防衛力改善費は11兆6803億ウォンで、前年比増加率は今年(4.8%)より大きい6.1%となる。特に最前線DMZの戦力強化に投じられる予算は3兆28億ウォンで、40.6%増額される。これは次期対砲兵探知レーダーや高高度無人偵察機などを通じた探知能力の強化と、K9自走砲やK2戦車、次期多連装ロケットなどによる攻撃能力の向上に費やされる。

 北朝鮮が漸増させている潜水艦の脅威に対抗するための戦力強化の予算は1兆6758億ウォンで、5.4%増える。北朝鮮は5月にSLBM発射実験を実施し、先月に軍事的緊張が高まった際には数十隻の潜水艦を基地から一斉に出動させるという行動で韓国に脅威を与えた。

 北朝鮮の核兵器やミサイル基地を探知、追跡、破壊する「キルチェーン」と韓国型ミサイル防衛(KAMD)構築にかける予算は1兆5292億ウォンと、64.5%急増する。

 このほか、兵営環境の改善に引き続き取り組むため、兵力運営費を4.8%増の16兆3520億ウォンとした。

◇統一予算、対北経済協力と人道支援に重点
 来年度の統一分野の予算は1兆5189億ウォンで、今年(1兆5025億ウォン)と同水準だ。対話と協力に基づき南北の相互信頼を築いていく朝鮮半島信頼プロセスの持続的な推進が中心となる。

 南北経済協力部門では、鉄道路線・京元線(ソウル―北朝鮮南東部・元山)復旧工事の予算が今年の32億ウォンから来年度は630億ウォンに増額される。総事業費は1508億ウォンで、先月5日に南側区間の復旧工事の起工式が行われた。ただ、DMZ内の駅から軍事境界線までの第2期工事区間については北朝鮮との合意が必要だ。

 開城工業団地の浄水・配水場増設と第2消防署建設などのインフラ拡充には666億ウォンが振り分けられた。

 人道的支援の予算は927億ウォンで17.9%増加した。朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会行事の支援、北朝鮮の乳幼児のワクチン接種、医療機器提供など保健医療協力の拡大などに用いられる。

 社会・文化交流の活性化に向けた予算も140億ウォンから163億ウォンに増えた。開城の歴史的建造物群と遺跡群、高句麗時代の文化発掘などの学術研究や、テコンドー、サッカーなどスポーツ分野の交流がこれに含まれる。

 一方、統一に対する社会的コンセンサスの形成に向け、韓国の統一教育院の施設拡充予算を54億ウォンと2倍近く増やす。北朝鮮離脱住民財団に213億ウォン、北朝鮮脱出住民(脱北者)青少年の学業支援には32億ウォンを投入する。

◇在外公館の安全予算を拡充
 外交分野の予算は今年(2兆9931億ウォン)より5.3%多い3兆1504億ウォンで編成された。

 在外公館などに対する対テロ特別警護・警備、保安施設強化の予算が161億ウォンと2.3倍増額したことが目を引く。リビアやイエメンの韓国大使館の治安が脅かされる事件があり、在外公館の安全対策を補完すべきとの声が高まったためだ。

 また、米国の学会やシンクタンクなどとのネットワーク構築の予算が23億ウォンから39億ウォンに増えた。日本が資金力を武器に韓国の「中国傾斜論」をワシントンで広めているのに対抗し、韓国も米国への働きかけを強化すべきとの判断があったと分析される。特に米国は来年大統領選を控えており、候補者に韓国の外交政策を周知させる必要性もあると韓国政府はみている。

 政府開発援助(ODA)分野では経済協力の潜在力が高いアフリカへの支援が強化される。海外の大規模な災害に対する緊急救援予算には47億ウォン増の450億ウォンを配分した。

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