【コラム】中国発通貨戦争、韓国は万全の備えを

【コラム】中国発通貨戦争、韓国は万全の備えを

 先週末トルコで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、中国は人民元政策を懸命に説明した。先月11日から13日にかけての3日間に人民元を突然4.7%も切り下げ、世界市場に衝撃を与えたためだ。

 経済政策の責任者である李克強首相は、会議に先立ち、数日前から人民元問題に関する公式見解を表明。先月28日の国務院会議では「人民元の追加切り下げを行う根拠はない。人民元の為替レートを安定的に維持していく」と述べた。

 中国による突然の人民元切り下げを受け、世界各国が通貨価値を先を争うように切り下げる「通貨戦争」に中国が遅ればせながら参戦したのではないかとの観測が聞かれた。中国は昨年、2004年以来10年ぶりに人民元を切り下げたが、年間で2.5%にすぎなかった。今年初め以降も1日で人民元相場が0.1%以上変動した日は5日しかなかった。それほど安定的に為替相場を管理していた中国が突然大幅な切り下げに踏み切ったものだから、世界が驚いた。

 告示レート決定に際し、市場レートをより反映したという名目を掲げたが、実際には人民元の価値急落だった。2010年にブラジルのマンテガ財務相が「我々は通貨戦争のただ中にいる」と危機を警告した状況の再現とみられた。

 しかし、李克強首相は通貨戦争に当面は加わらないと一線を画した。実は中国はこれまで臨んできた通貨戦争の戦線は全く異なる次元にあった。人民元が世界2位の経済大国、世界1位の貿易大国の通貨という地位に見合う待遇を受けるために戦っていたのだ。中国は2009年から人民元の国際化を国家戦略に位置づけた。内心では米ドルと肩を並べる基軸通貨へと育て上げることが目標だった。

 そのためには人民元の変動幅は小さくなければならなかった。人民元の価値をドルに安定的に固定することを最優先に掲げた。ある程度の人民元高も受け入れざるを得なかった。世界舞台に人民元が初めて踏み出すにあたり、誰もが人民元を保有したがる状況をつくる必要があった。将来的に価値が下落する通貨を保有しようとする人はいないからだ。その結果、人民元は今や世界5位の貿易決済通貨になった。しかし、輸出は減少し、経済成長のペースが落ちる苦痛に耐えなければならなくなった。中国は他国とは全く異なる通貨戦争を戦っていたことになる。

 しかし、3日連続の人民元切り下げを見て、中国が人民元の国際化戦略を一時保留する可能性があると感じた。一部香港企業は人民元資金を香港ドルへと交換している。人民元建ての預金やファンドを保有する人も多額の損失を被った。さらに人民元が大幅に下落すれば、その魅力は一気に低下しかねない。

 中国は今、米国が利上げに踏み切る時点で、通貨戦争をどういう方向で進めるべきか決断を下すべき瞬間を迎えている。人民元をドルのような基軸通貨にするためには、苦しくてもドル高に追随しなければならない。あるいはドル追随はいったん取りやめ、景気低迷を防ぐためには人民元の追加切り下げというカードを切る必要がある。

 李克強首相の発言の真意もそのころになればはっきりするはずだ。韓国の為替当局と企業は中国の人民元政策の急激な変化も想定し、さまざまなシナリオで対応策を練っておく必要がある。

方顕哲(パン・ヒョンチョル)論説委員
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