【コラム】産経新聞対処法

 米国にジェリー・ファルエルという牧師がいた。この牧師は聖書を文字通り信奉した。この世界のすべてのことを「神が禁じたこと」と「そうでないこと」に分けた。英国の幼児向け番組『テレタビーズ』もこの牧師の目には「ゲイ」に見えた。2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の時は「同性愛者やフェミニストたちが米国を世俗化させた。米国はこうした攻撃を受けても仕方がない」と言った。それ以降、米国の知識人たちは陣営に関係なく「ビンラディンよりファルエルの方がしゃくに障る」とうんざりしていた。今、この牧師を丁重に取り上げる欧米メディアはほとんどない。

 その日の午後、二つのことで悩んだ。一つ目の悩みは実務的なことだった。記事を書くべきなのか、書くべきではないのか、だ。東京に来てから知り合った日本人学者や報道関係者の多くは「一定水準以下の嫌韓の論客は無視しなさい」と言った。微々たる存在にスポットライトを当てるなという意味だ。痴漢対処法の専門家たちも同様のアドバイスをする。「『バーバリー・マン』(裸でトレンチコートなどを着用し、人前でコート広げる露出狂のこと)に会ったら悲鳴を上げずに、透明人間扱いをしてやり過ごせ」。一理ある話だが、その日、結局私は記事を書いた。

 二つ目の悩みは、もっと根本的なことだった。これらの人々が果たして微々たる存在なのかどうかだ。今回の件の背景には、膨張する軍事大国・中国とそれに緊張する日本がある。この構図だと、日本の極右派はしょっちゅう声を上げるしかない。中国が気になればなるほど、彼らの直接的な攻撃心理は中国よりも韓国に向かう可能性が高まる。深く考えない卑劣な人々であるほど、そうするだろう。そのたびに韓国政府が腹を立て、第2・第3の産経新聞に「記事を削除しろ」と要求することは賢明なのだろうか。相手が「言論の自由」を振りかざして好き放題しているのが、記者である私にとっては一番つらい。

東京=金秀恵(キム・スへ)特派員
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