矢木隆晴 ミュンヘン=玉川透、ローマ=山尾有紀恵、ウィーン=喜田尚
2015年9月8日23時38分
内戦下のシリアから欧州をめざす難民たち。ギリシャのレスボス島で出会ったシリア難民のグループを記者が追った。
7月23日。レスボス島の港で、救命胴衣を着た約40人がギリシャ港湾局の船から下りてきた。シリア北部イドリブ出身の大学生ニスマさん(24)の家族や友人たちだ。一行は7月15日、シリアを出てトルコに入国していた。
自宅が爆撃されたのは3月。父(46)が勤める外資系運送会社も砲撃されたという。命の危険を感じてシリアを出た。妹のファラちゃんは2歳。「生まれた時には内戦下で、この子には何も幸せはなかった」
トルコで密航業者に1人あたり1100ドル(約13万円)払って長さ約8メートルのゴムボートに乗った。2時間後、ギリシャ側のエーゲ海上で保護された。
レスボス島の収容施設に着いたニスマさんは、持っていた太陽光発電機でスマートフォンの充電を始めた。どのルートが安全か。仲間と情報交換するため、携帯電話は欠かせない。
一時滞在許可を得た一行は7月25日、フェリーで首都アテネに着くとすぐ鉄道駅に向かった。目的地はドイツ。紛争地の出身者ならば正式な難民として認められる可能性が高いからだ。多くの難民や移民が使う「バルカンルート」を列車やバス、徒歩で進んだ。
8月1日夕方、セルビア国境に近いハンガリー南部の草原で、記者は難民たちが警察に拘束される様子を目撃した。ニスマさんと行動を共にしてきた友人のモンタセ・イスリムさん(27)ら19人。徒歩で国境を越えた直後だった。
ニスマさんは数人で越境し、夜になるまで森に隠れた。翌日ハンガリーの首都ブダペストに到着。イスリムさんたちも指紋を取られた後にすぐ解放され、遅れてブダペストに着いた。
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朝日新聞国際報道部
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