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安東泰志の真・金融立国論

東京金融市場が香港、シンガポールに
追いつくためには何が必要か

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第61回】 2015年9月8日
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東京と、香港・シンガポールとの差は大きい。写真は香港の金融街

 金融は産業を支援する重要な役割を担うばかりでなく、歴史を紐解けば、覇権国家であったオランダ・英国・米国でも、産業が成熟した後は金融自身が成長産業となって国家を支えてきた。もちろん、金融資本だけが肥大化することの弊害はリーマンショックで学んだばかりだが、金融と産業は国家の経済運営上、車の両輪であることは間違いない。

 ところが、金融における東京の地位は年々低下している。成長戦略にとって決定的に重要な金融市場の国際化が後回しにされている背景には、日本独特の閉鎖的な文化がある。

年々低下する東京市場の地位
「香港、シンガポールには追いつけまい」

 2007年に創立された英国の独立系シンクタンク「Z/Yen Group」が本年3月に公表した「国際金融センター指数」において、東京は、前年より1つ順位を上げて5位になったものの、ポイント数で見ると、1位のニューヨーク、2位のロンドンとは大差がつき、3位香港、4位シンガポールとの差も大きいままだ(表1)。しかも、競争力の要素別評価で見ても、「ビジネス環境」「金融セクター進化度」「インフラ」「人的資源」「レピュテーション等」、ほぼ全ての項目で、香港とシンガポールに大きく後れを取っており、「ゆっくりとレピュテーション(評価)を取り戻しつつあるが、香港とシンガポールには当分追いつけまい」とまで酷評されているのだ。

 日本には世界的に見ても有力な投資先企業や投資家が存在する。金融とは、投資先と投資家を結ぶビジネスであるから、東京が国際金融センターとして機能できる基本的な要素は十分に揃っているにもかかわらず、どうしてこのようなことになるのだろうか。 

 
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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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