天津爆発:神経ガスを検出 市民の不安に拍車

毎日新聞 2015年08月19日 21時18分(最終更新 08月19日 22時08分)

 【北京・石原聖】中国天津市で12日に発生した大規模な爆発事故で、有毒の神経ガスが現場から検出されたと国営中国中央テレビ(CCTV)の調査報道番組が19日に報じたことで、市民の不安に拍車がかかっている。中国政府はこれまで、シアン化合物などに関しては周辺地域で異常な汚染は見られないと公表してきたが、神経ガスには言及していなかった。

 番組によると、北京公安消防総隊が16日、防護服と酸素ボンベを装着し、観測機器を携帯して爆発現場で大気中の有毒物質の濃度を測定した。総隊の李興華副参謀長は「シアン化ナトリウムと神経ガスという2種類の有毒物質について、観測機器の針が振り切れた」と述べた。

 番組は神経ガスの種類は特定しないまま、「神経ガスを吸い込めば呼吸器系統や心臓などが突然停止し、死亡に至る可能性がある」と伝えた。

 爆発の起きた化学物質倉庫には、シアン化ナトリウムや硝酸アンモニウムなど40種類以上の危険な化学物質が計約3000トン保管されていた。専門家は番組で「こうした物質が水と混ざったり、アルカリ化して神経ガスができる。また、爆発の過程で化学反応を起こし、有毒ガスが生じる」と指摘。初期消火に水を使ったことが爆発を招くだけでなく、神経ガスを発生させた可能性を指摘した。

 番組は、CCTVのサイトで視聴できるようになっていたが、その後、削除された。

 天津市の環境部門によると、基準値の277倍近いシアン化合物が検出された地点もあった。市は、警戒区域として立ち入りが制限されている半径3キロ圏の外にも化学物質が飛散した恐れがあるとしている。ただ、神経ガスによる中毒症状の報告はないという。

 一方、中国共産党機関紙・人民日報のニュースサイト「人民網」では、軍事医学科学院の化学兵器の専門家が「消防隊の観測機器は化学物質専用のものではなく、誤った結果を出すことがある。現場にあった化学物質と爆発状況から神経ガスが発生することはありえない」と否定した。

 黄興国市長(共産党委員会書記代理)も19日に会見し、謝罪。爆発によって1万7000戸以上の家屋が損壊し、170以上の企業・工場の操業と従業員3万人に影響を与えたことを明らかにした。現場近くの工場で生産され、出荷されるのを待っていた車両3000台が燃えたという。

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