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 国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、諫早湾内や近くの漁業者ら53人が国を相手取り、潮受け堤防排水門の開門などを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁は7日、一審・長崎地裁に続き、開門を認めない判決を言い渡した。大工強裁判長は干拓事業と漁業被害の因果関係を認めず、漁業者らの控訴を棄却。一審判決が漁業者ら16人に計約1億1千万円を賠償するよう国に命じた部分を取り消した。漁業者側は上告する方針。

 開門の是非については、有明海沿岸の漁業者らが開門を求めた訴訟で2010年、福岡高裁が3年以内に5年間開門するよう国に命じた判決が確定。一方、開門に反対する干拓地の営農者らが申し立てた仮処分申請では13年、長崎地裁が開門の差し止めを命じた。

 今回の判決は、確定判決と仮処分命令の効力には影響せず、国が相反する二つの義務を負う状況は変わらない。大工裁判長は判決で「国には、現在の困難な状況を打開するために必要な方策を早急に決め、実現に向け努力することが求められている」と言及し、控訴審で和解協議に応じなかった国の姿勢を批判した。

 この訴訟は、小長井町漁協(長崎県諫早市)と佐賀県有明海漁協大浦支所(佐賀県太良町)の漁業者が08年に提訴。①干拓事業と漁業被害の因果関係②漁業補償を超える被害があるか③因果関係がある場合、事業の公共性や公益性を考慮しても受忍限度を超えて違法性があるか、が争われた。

 高裁は、アサリやタイラギの漁場環境が悪化し、被害が生じていると認定する一方、「堤防を閉めきり、開門しないことに起因するとまでは言えない」と指摘。干拓事業との因果関係は認められないとして、漁業者らの主張を退けた。(安田桂子)