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 北朝鮮が拉致被害者らの再調査を開始してから1年あまり。北朝鮮側は調査報告の延期を伝えてくるなど先行きは見えない。2002年9月に小泉純一郎首相が訪朝し、10月に拉致被害者の蓮池薫さんら5人が帰国した。当時、官房長官だった福田康夫元首相が朝日新聞の取材に応じ、5人を北朝鮮に戻さないことを決めた政府の検討プロセスの一端を語った。

 福田氏は、「一時帰国」した5人の「永住帰国」を政府が決定する際の政府内のやりとりを当時の記録や資料を元に明かした。

 5人は02年10月15日に帰国した。日本政府が苦慮したのは、5人を再び北朝鮮に戻すか否か、ということだった。日朝間の交渉では、あくまで5人は「一時帰国」であり、滞在は1~2週間を目途とすることで合意していた。

 北朝鮮に戻れば、5人が再び日本に来られる保証はなかった。一方、拉致問題解決に向けた対話の扉は開いたばかりで、合意を破った場合の北朝鮮側の反応も読めない。

 福田氏によると、5人が帰国してから1週間がたった10月22日昼、首相官邸の官房長官室で、中山恭子内閣官房参与と対応を協議した。

 中山氏は「国の意志として戻すべきではない」と主張。福田氏は「北朝鮮に残された(被害者の)家族や子供たちに危害を加えられたらどうするのか」と考え、「北朝鮮での状況はどうだったのか。まず、何よりも本人たちの意向を確認すること」を求めた。