文・写真 玉置太郎
2015年9月7日17時15分
■70年後の青春:上
夏休みが明け、86歳の上竹原(うえたけはら)三郎さんは通学を再開した。いつもワイシャツ、ジーンズ姿でリュックを背負い、午後1時に家を出る。大阪府和泉市からバスとJRを乗り継いで1時間余り。小さな歩幅で休まず歩き、堺市立殿馬場(とのばば)中学夜間学級の教室に着く。
「僕は頭にぶいからね。はよ来てエンジンかけんと」。一番乗りの教室で苦手の英語と数学の予習を始める。午後5時半~8時半の授業を終え、家に着くのは10時。「ふらふらですわ」
■最年長の86歳、進学は夢のまた夢
殿馬場中の夜間学級は1974年にできた。約200人が在籍する。全国31校の公立夜中で最大規模だ。在籍期間は最長9年。10~80代の生徒の中で、6年目の上竹原さんは最年長だ。
鹿児島で生まれ、4歳で福岡に。13歳から軍需工場に住み込みで働き、病身の両親と弟2人の生計を支えた。進学は夢のまた夢だった。終戦の年の4月、父が死んだ。
18歳で大阪に出て、模造真珠の工場で働いた。26歳で結婚し、2人の娘を授かった。40代で電気工事士など四つの資格を取り、空調管理の仕事に就いた。周囲は高卒、大卒の社員ばかり。「理科の知識がないからごっつい苦労した。せめて中学出てたら、もっとやれたのになあて。ずいぶん背伸びして仕事してました」
77歳で退職。識字教室の交流会で殿馬場中に通う88歳の女性と出会った。「八十からでもやれますよ」。入学を決意した。
背筋を伸ばして板書を写す。理科の実験では率先して前に出る。「青春を取り戻した気持ちです。勉強したいこと、ようけあるんですわ」
今夏の七夕で地元の中学生との交流会があった。いつも持ち歩く電子辞書を引いて、短冊につづった。
「夜間の星 永遠に輝け」
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