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迷宮都市のアンティークショップ 作者:大場鳩太郎
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変わった匂いの肩掛け(未鑑定)②

 それは前回のダンジョン探索から帰還した時のことだ。

 ミントたちは持ち帰ってきた戦利品の鑑定結果を、店内で待っていた。

 立ち寄ったのはアンティークショップ『古き良き魔術師たち(オールドグッドの時代』。
 行きつけの酒場『太陽を見上げる土竜』亭で聞いた噂によれば知る人ぞ知る付与道具マジックアイテムの名店らしい。実際、店内には抱えきれない程の金貨を積まなければ手に入らないような代物が無造作に陳列されていたりするから恐ろしい。

 店主は寝癖気味のぼんやりした眼鏡の青年。あまり接客に向いていないような感じだが腕だけは確かなようだ。ジャンルを問わずあらゆるアイテムを鑑定することができ、かつ即座にしかも正確に答えを出すことができた。本来鑑定というものは武器、防具、装飾品、薬などそれぞれの専門店で行うものなので、これだけでも驚きなのだが本職は付与道具専門なのだ。

 だがまあどんなに腕のいい鑑定士に見てもらったところで、持ち込んだ品が悪ければろくな結果にはならないのが現実だ。

 眼鏡の店主がにこやかに宣言してくる。
「こちらの装飾品類はすべて偽物ですね」

 カウンターには預けていた重量感のある宝箱(チェスト)がどっかりと置かれている。蓋の開いたその中には貴金属や金貨や銀貨が山盛りできらきらと輝いている。
 素人であるミントたちからすればそれはまごうことなきお宝のはずだった。

「おいおいそんなわけないんだお。店長さんつまらない冗談は止めて欲しいお? 本当にちゃんと見てくれたのかお?」
「ええまあ。例えばこれですけど、一見銀の指輪のようなんですが、実は試金石で擦ると僅かに黄色く変色するんです」
「それがどうしたんだお?」
「本物の銀はそんな反応はしません。御了解を頂ければ硝酸をかけて調べてみますけどおそらく中は銅じゃないかと思います」
「ま、まじか」
「ええ。更にこちらのブローチですが」
「そ、それはどこからどうみても金製なんだお」
「ええ確かに見た目は金かもしれません。ただ比重を計ったところすべてがそうではないようです。薄いメッキで覆っているだけでこれも中身は銅ですね」
「ほ、他にも金貨とか宝石とか沢山あるんだお? ちょっとくらい偽物が混じってたからって他もそう決めつけるのはよくないんだお?」
「いえ全て調べてさせて頂きましたが、残念ながらどれもよくできた模造品(イミテーション)のようです。もし納得できないようでしたら一つずつ説明させて頂くことも可能ですのでお申し付け下さい」
「……まじかお」
 カウンターによじ登るようになって問いつめていたハーフリングのマルモが力を失ったようにずり落ちて尻餅をついた。
 宝箱チェストはダンジョンの隠し部屋のなかで発見したものだ。巧妙に隠蔽されたその場所で見つけた上に、錠には御丁寧に難解な罠まで施されていたので、誰もが偽物が入っているとは疑わなかった。
 十数時間かけて罠を解除し、荷物になるので他のドロップアイテムを殆ど破棄して二人がかりでようやく持ち上げ、交代で運びながら時にはモンスターと闘いもして、ようやくここまで持ち帰ってきたというのになんと質の悪い冗談だろう。

「無念でござる。拙者、今回手に入れた金で名刀菊一文字の足がかりにしようかと思ってたでござる……」
「おれも借金して耐炎属性のチェーンメイルに買い換えたばっかりなんだよなあ……」
「おりは酔っ払いのスキットルを買い戻すつもりだったんだお……」

 期待を裏切られがっくりと肩を落とす仲間たち三名。
 誰もがの今回の収穫は、山分けしても一年近くは豪遊できるくらいの額になるはずと期待していたのだった。

「ははは……こうなりゃやけ酒だね……」

 乾いた笑いを受けべてみるもののかく言うミントも落ち込んでいた。
 ダンジョンの帰り道では、重たい宝箱を運びながらずっと頭のなかで手に入れた大金で購入するものリストを作り上げていたのだ。かねてより手に入れたかった魔術指南書やアクセサリー、食べようと思っていたスイーツ、その他諸々が、全て水の泡になってしまった。

「えっと、そうだ。良い引き取り業者を紹介しますよ。恐らく五百ゲルン程度……にはなるはずです」

 さすがに気の毒だと感じたのか沈んだ一行の為に眼鏡の店主がそう提案してくれる。
 だがそれっぽっちの額では残念ながら探索にかかった費用も回収できないだろう。本当にやけ酒を飲んで終わってしまいそうであった。

「うう、何か見落としてたりしないかお。もしかしたらすごい付与道具とかあるかもしれないんだお?」
「どれもこれも魔力の欠片も感じないものばかりですからねえ……」
「この指輪なんかどうかお? なんかないかお?」
「それれはさっき見たやつですってば……おや失礼ですがそちらも戦利品ですか?」
「はい? ええそうです」

 眼鏡の店主がふいにこちらに声をかけてくる。
 未練がましく絡んでくるマルモをかわす為に話を逸らそうとしているのかと思ったが違うらしい。

 ミントが胸に抱いているものは、宝箱の中身が偽物と判明した以上、唯一の戦利品らしい戦利品といえるものだった。
 ダンジョン内で拾ったもので、飴色の円形の中心をくり貫いた形状の上着の上から肩や背を覆う衣類。いわゆる円形肩掛け(サーキュラー・ケープ)である。
古ぼけているせいかすこし変わった匂いもするが、何の防御力もないし、事前に感知と隠蔽破棄の呪文をかけてみて付与道具でないことは確認済みである。
 だがデザインがとても可愛いくて普段着としても使えそうなの見た目だったので、これだけは捨てきれずに持ち帰ってきたのであった。ミントは宿に戻ったらこれを洗濯しながら、沈んだ気持ちを紛らわそうと考えていた。

「ふむ。……その匂いとその生地の光沢から察するにマルデカズバナという植物から生成した糸で織られたものですね。実を食われないように昆虫が嫌う匂いを発生させる特性があるんですが」
 眼鏡の店主が鼻をこちらに向けて言う。
「もしかしたらそれは付与道具かもしれませんよ。その生地で造られた衣類はたいてい虫除けの魔術回路が組み込まれているんです」
「まじかお」
「本当でござるか」
「嘘だろおい」

 鑑定の結果、眼鏡の店主の見抜いたとおりだった。
 どうやら上位呪術でなければ破れないような非常に高度な探知回避と隠蔽の呪文がかけられていたらしい。『鑑定』したという事はつまりそれらの呪文を破棄することに成功したという事だ。
 匂いだけで嗅ぎ当てるという観察眼と嗅覚もさることながら、魔術の腕前のほうもかなり域にいなければできない芸当。とてもただの付与道具店の店長とは思えなかった。

「どこで魔術を習ったんですか?」
「いやまあ、なんというか師匠直伝なんです」

 まあ兎に角、仲間たちは彼のおかげで骨折り損な結果にはならずにすんで大いに喜んだ。虫避けの付与道具自体はそれほど希少なものではなかったが品質は良品であったし、高額なアイテムであることは確かなのだ。

 ただミントとしては少々複雑な心境である。彼女としてみればそれはせっかく手に入れたお気に入りの肩掛け(ケープ)が自分だけのものでなくなるのだ。ただそれを手に入れたのが彼女の手柄だとしても、それなりの品である以上きちんと等分で分配するのがパーティの不文律なので仕方がない。

 などと思いつつも三人が言うまでもなく即売却し、その金を山分けをすることを提案した際に、ミントはごねにごねた。

「そんなもの絶対役に立たないと思うんだお。だいたい虫は集めると楽しいのに意味わかんない付与道具だお」
「拙者もその能力はどうかと思うでござるよ。虫が怖ければ叩いて潰せば良いだけのことでござろう」
「まあ使う場面想像しろって言われても難しいかもな。おれも虫ってわりと平気な方だしさ」
「絶対に嫌だもん!」
 口々に諭してくる三人に対して、ミントは頑として譲らなかった。

 それにはいくつかの理由がある。
 まずミントは自分が思っていた以上にこの肩掛け(ケープ)が気に入ってしまったからという事。

 そして付与されている魔術が『虫除け』であるという事。
 彼女は大の虫嫌いだった。特に毛虫だけは触るどころか見るだけでも鳥肌が立ち、気分が悪くなる。ダンジョンのなかには当然、大型の虫系モンスターもいるし、石壁や床にはそこらじゅうに小さな足の多く生えた虫が蠢いている。彼女にとって探索者は天職と言っても過言ではないほど性分に合っていたが唯一、野営中に寝袋にそれらの小虫が忍び込んでくる事だけは許せなかった。
 だがこの肩掛けを身につけてさえいれば虫刺されることなどもなくなるのだろう。探索女子にはマストなアイテムだ。
 彼女にしてみればそんな素晴らしい能力の付いた品を手放すわけにはいかなかったのだ。

 そして俄然、所有権を主張し、揉めに揉めたが最終手には泣き落としにまで持ち込んで、暫くの間売らずに使用させてもらうことになった。

 三人としては折を見て売るつもりなのだろうが、ミントとしてはこのままなし崩し的に使い続けてそのうちお金が貯まったら半値くらいで買い取る魂胆でいた。何よりこの付与道具が役に立つような場面が万が一にでも訪れれば彼らも考えを変えるかもしれないと考えていた。

 だがまさかミント自身もこの虫除けのケープが、これほどまでに時間を経ずに活躍する機会がくることになるとは思いもしなかったのであった。


『ギギギギギギ?』『ギギギイギギギギ?』『ギギギギイギギイ?』『ギギギイギギギギギギイ?』『ギギイギギギギギイ?』『ギギイギギギギギイ?』『ギギギギギイギギイ?』『ギギギギギイギイ?』

 殺人蜂(キラービー)たちには何が起きているのか理解できなかった。
 先ほどまで狩りをしている最中だったはずだ。
 出産の為に絶えず機嫌の悪い女王の為に多くの肉を集めなければならず、狩りに奔走しており、そして目の前には丁度良い獲物がいた。
 まだ若いし肉付きの良さそうな雌のハーフエルフだ。
 先ほどまで追いかけていた三人よりも質が良さそうだったので、女王蜂(クイーン)も満足するだろうと喜んだ。
 そして一斉に襲い掛かろうとして、異変が起きたのだ。
 突然、群れ全体が恐ろしい威圧感に囚われたのである。
 まるで気がついたら樹海の主である巨大蚯蚓(ヨルムンガント)の胃の中に飲まれていたような感覚。
 抗うことのできない絶対無比の迫力。
 それは巣穴から常に漂ってきて群れを統率、鼓舞する女王蜂の甘いフェロモンの効果すらも打ち消すほど強烈なものだ。
 恐ろしくて身動きがとれずただその場で羽を動かし続けるので精一杯。多くの個体が恐慌状態に陥り、あまり強くない少数は意識を失い落下していった。
 殺人蜂(キラービー)たちは誰もがその気配がどこからくるものかを探そうとした。
 そして驚愕した。
 何故なら信じがたいことに元凶は目の前にあったからだ。
 つまり群れを威圧する圧倒的な気配を放っていたのは雌のハーフエルフだったのである。



 ミントは安堵の息をつく。これで虫除けの肩掛けケープを着用している限り自分が襲われることはなくなった。

 この肩掛けの威力は絶大だった。
 すでに炎の壁が消えてしまったにも関わらず殺人蜂(キラービー)たちは襲い掛かってこない。それどこか先程までの敵意に満ち満ちていた嵐のように羽音もおとなしくなり、ただその場で抜け殻のように浮遊している状態になった。

 肩掛け(ケープ)からはこれまでに感じたことのない異質なそれでいて強力な質感の魔力が放たれていた。まるで巨大な生物の気配にも似たもので、それが殺人蜂(キラービー)に絶大な影響を与えているのは想像に難くなかった。

 群れが攻撃してこないのはその意志がくじかれたから。聞こえてくる羽音が弱いのは飛ぶ能力が低下したから。そしてこちらが近づくと後退するのは恐怖しているから。少なくともこのケープは『鎮静』、『弱体』、『恐怖』という三つの能力を持っているようだと、ミントは効果を分析する。

 ただこのままでは駄目だった。
 自分だけが襲われなくなるだけではこの場にいる意味がない。
 目の前にいる群れたちも愚かではない。今はまだ動きを止めているが、ショックから立ち直ったならば虫除けの魔力の射程外まで逃げてしまうだろう。そうなれば蜂の巣穴コロニーに向かうことも十分に考えられた。
 ミントの役割は目の前の殺人蜂(キラービー)たちを足止めする事。女王蜂クイーンをしとめる為に蜂の巣コロニーに向かった仲間たちの支援することが彼女の仕事なのだ。

 だから工夫(・・)することにした。


 『ギギッ!!』
 ふいに群れの一部が何かに気がついたように慌てて動きだそうとする。上方への動きを見せる。壁を越えるようにしてミントの背後にある蜂の巣コロニーへ向かおうとしているようだった。
 おそらくは女王蜂(クイーン)から送られてきた救難をを受け取ったのだ。彼女の微弱な魔力フェロモンには群れをまとめたり、興奮させたりする他に、細かい指示を織り込ませることもできるらしい。つまりに巣にたどり着いた仲間たちが暴れ始めたという事だろう。

 ならば尚更その動きを許すつもりはなかった。

 彼女が行ったのはケープから放たれている魔力に干渉することだ。
 流れに方向性を与えてやることで形状を変化させ、見えない大きな手をふたつ作る。それを腕を長く伸ばすようにして後ろから回りこませ、両手のひらで包み込むように殺人蜂の群れ全体を取り囲み、球形の魔力の檻をつくる。

『グギャギャッ』
 上に向かおうとしていた殺人蜂たちは突然、火に触れたような反応を見せて弾かれた。上々の反応。思い付きだったが上手く言ったようだ。

 ミントは額にういた汗をローブの袖口でぬぐう。

 これは『蟲籠』と命名すべきだろうか。
 それは虫除けのケープの魔力がなければなしえないものではあったが、それは言わば独自で構築したひとつの技と言って差支えない技術(わざ)だ。

 更に蟲籠を少しずつ縮めて外側から内側へと追い込んでいくと、群れは押されるようにてじりじりと後退していく。
 すると群れはまるで牧羊犬に追われた羊のように、己の身を守ろうとして一匹一匹が群れの中心へ向かおうとする動きをみせる。そして距離を縮め合ってある程度塊が小さくなったところで状態を維持(キープ)させた。

「よしよしこのままなかで大人しくしてるんだよ」

 球形を縮めたのは魔力の量を少なくする為。血中魔力の消費を抑えることで、虫除けの効果を持続させたかったからだ。このまま魔力が途切れることさえなければ蜂たちはこの蟲籠のなかで身動きをとることができない。
 後の自分の役割は、仲間たちが仕事を終えるまでこのまま蜂とにらめっこを続けるだけだった。

 攻撃呪文はあまり得意ではなかったが魔力操作と根気の良さには自信があった。それだけなら上級魔術師と張り合えるだろうなと魔術の先生からもお墨付きまでもらっているのだ。

 暫く持久戦を続けていると、背後から甲高い女の悲鳴に似た声が上がる。

 そして同時に、蜂たちの様子に変化が訪れた。
 まず蟲籠のなかのすべての蜂たちがざわつくような動きを見せた。それから縮まっていた群れの形がじわじわと拡散していく。だがそれは蟲籠の呪縛から解放されたわけでなく、ただ一匹一匹が判断力を失ってよろめいているように見えた。
 そして手近な仲間に襲いかかり、毒針をぶつけ、噛みつき合い、殺し合いを始めてはふらふらと魔力の壁に触れて弾かれる。

『グギャギャ!』『ギギギギギギ!』『ギガッガガガ?』『ギャアアアギギ!』『ギギグギイイイ!』『ギガガグッガガギ!』『グギイガガガギイ』『ギイイギギギギイ』『ギギイギガギイ……』『ギギイ……ギギギ……』『ギギ…ギギイ……ギギイ……』『ギッ……ギッ……』『……』

 何度もそれを繰り返すうちに彼らは衰弱し、次々と墜落していった。

 多くの探索者たちが知ることだが殺人蜂キラービーには恐るべき習性がある。それが『殉死』だ。
 女王蜂クイーンが死ぬとその瞬間、彼女から強烈なフェロモンが放たれる。昆虫学者によればそれには死の間際に感じる絶望感が込められており、受け取った蜂たちは強度のストレスに苛まれ、誰かれ構わず襲いかかり、やがて飛ぶこともできなくなりやがて死に至るのである。

 つまりこの現象が起きたという事は仲間たちによって女王蜂(クイーン)が退治されたという事だ。

 程なくして黒い群れの塊は消え、代わりにキノコのかさでできた地面のあちこで殺人蜂キラービーたちの死骸が転がっていた。

 ミントは慎重に一匹残らず死んでいる事を確認してから虫除けの肩掛け(ケープ)の魔力を解除する。
 どっと疲れが溢れてきてその場にへたり込んだ。
 その場から一歩だって動いてなどいないのに全力疾走を続けていたみたいに呼吸が苦しい。致死量とはいかなくとも一度にかなりの血中魔力を消耗してしまっていたから当然だろう。
 もう暫くはまともに動くことができそうになかった。

「あー……疲れた」

 ミントは仲間たちが戻ってくるまでの間、寝そべったままの体勢で、今回の手に入れる報酬で何を買おうか考えることにした。このところ探索ではうまくいかないこと続きだったから買物を我慢していたので欲しい物は山ほどある。

 ただ地上に戻って何よりも先にすることはいきつけの酒場『太陽を見上げる土竜』亭に向かうことだろう。何しろ仕事がうまくいった後に仲間たちと飲むエールほど美味いものはないのだ。

「むーん……」

 いつの間にか、キノコの柔らかい地面に頬をつけ目を閉じてしまっていた。
 そして危険な『樹海』のなかで剛胆にも眠る彼女は、そのまま呆れ顔の仲間たちに起こされるまで眠り続けるのであった。



 鑑別証『虫除けの肩掛け(ケープ)(良品)』

『汝、蟲愛ずる姫君に告げる、その血を二千五百六十五滴捧げよ――さすれば世界を介し、群がり這いずる有象無象の者どもに告げる、戦慄せよ、恐怖せよ、畏怖せよ、そして崇め尊び奉れ、オルグルマグルの胃袋ごとく』

『古き良き魔術師(オールドグッド)たちの時代』後期に成立した短編物語集には、古の森に住まう若きエルフの娘たちの間で護衛用または愛玩用として蟲を飼い慣らす風習についての記述があり、彼女たちを揶揄した『蟲愛ずる姫君』という言葉も登場します。
蟲とは昆虫のなかでも大型のものを示す呼び名で、『闇夜に咽び(キルギリアン)泣く』、『這いずる禍々(コクロチス)しき』、『群れなし羽ばたき(パピヨニア)彷徨える』など人や他の動物に危害を加える恐れが高いとされているものを指します。
いくらエルフとはいえそれを捕獲、調教しようとする試みはかなり危険を伴うものであったとされており、恐らくこの肩掛け(ケープ)は蟲を飼い慣らそうとして失敗し、痛い目を見たエルフが古き良き魔術師に依頼して作製されたものであると考えられます。
ちなみに巨大なワラジムシに似た造形であるとされる『すべてを呑むもの(オルグルマグル)』はひとたび大移動を始めると進路上の森林が瞬く間に荒野へ変貌することからあらゆる蟲たちから恐れられているとされています。
 以上が、ミントが『虫除けのケープ』を手に入れた経緯である。
 彼女はこの付与道具を使いこなして『闇夜に咽び泣く』という蟲を従えることになるのだがそれはまた別の話だ。
+注意+
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