2020年以降の温室効果ガス削減の新たな枠組みを話し合う国連気候変動会議(COP21)が11月末からパリで開かれる。その準備会合が先週、ドイツのボンであった。

 米海洋大気局(NOAA)によれば、今年7月の世界の平均気温は記録の残る1880年以降で最高となっている。化石燃料の使用による地球温暖化の進行が懸念されるなか、国際社会は新しい枠組みの合意を迫られている。

 COP21での合意を目指すボンでの会合では、先進国も途上国もこぞって対策に取り組むという意欲が確認されたのが最大の成果だ。二酸化炭素の最大排出国の中国や2位の米国をはじめ、欧州連合(EU)やロシア、日本などが、2020年以降の削減目標を国連に提出。主要排出国で未提出のインドやブラジル、南アフリカなどには、各国が様々な外交チャンネルで早期提出を働きかけてほしい。

 しかし、提出された各国の目標は、自主性を重んじたため全体に甘めだ。温暖化による気温上昇を工業化以前に比べ2度未満とする現行目標さえ達成不可能と見られている。

 対策の強化には、炭素税の導入や温室ガスの排出量取引など、市場メカニズムを活用する必要もある。これまでの取り組みを検証して、より効果的な仕組みを工夫していくべきだ。

 温室ガスの削減や気候変動への対応には資金が必要だ。途上国は、化石燃料の大量消費で経済発展した先進国の資金をあてにしている。削減に取り組む途上国には、先進国から資金が流れ込む。そんな知恵も出していきたい。

 折しも世界経済は減速している。温暖化対策のような長期的な課題は二の次になりがちだ。しかし、熱波や猛烈な台風などの気象災害は、すでに大きな被害をもたらしている。

 NOAAなどによると、昨年の世界の平均気温は史上最高だった。記録の上位10年は、1998年を除き、すべて21世紀に入ってからだ。

 今年は昨年を上回る可能性も取りざたされ、熱波による死者がインドで2300人以上、パキスタンで800人以上報告されている。台風やサイクロンなど熱帯性低気圧が強い勢力のまま各国を襲うことも多い。太平洋諸島の国々は、2度目標は不十分であり、1・5度未満とするよう主張している。

 将来世代も含め、人々の命と暮らしを守る。そんな長期的な視点で、各国が合意のために一層の努力をすべきである。