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2015-09-06

『アイドルマスター シンデレラガールズ』 21話 感想

卯月の笑顔を見て、初めて胸が張り裂けそうだと感じた。何かに彼女が苦しんでいるということ、不安を抱いているということ。それを痛い程に突きつけてくる映像はまさに延々と続く暗い陰に覆われていたかのようで。そして卯月が 「大丈夫です」 と二つ返事の言葉を投げ掛ける度に浮かんでしまう仄暗い疑問。

「貴女(あなた)は、本当に大丈夫ですか――?」

だって心配だったんです。不安だったんです。眺めているだけであんなにも勇気を分けてもらえていたはずの彼女の笑顔が今はこんなにも不安を感じてしまうものになり替わってしまっていたから。
未央の 「ごめん、待たせて...」 の言葉に 「どこ...?」 なんて。彼女が小さく呟いたりするから。

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喜びはなく、悲しみだけが残響する。見ているだけで痛みばかりを感じてしまう程の彼女の “笑顔”。それこそ多くの少女たちが前へとその足を踏み出していく中にあって一人佇む卯月がそれでも “笑う” 理由に対し、どうしても私は好意的な解釈を見出すことが出来なかったんです。

それも彼女が一つ力む度にこちらもぎゅっと手先に力を込めてしまうような、そんな歯痒ささえ感じてしまう状況と心境。それだって未央が決意を演劇の台詞にのせて言葉として紡ぎ出す度に心は震えたし、美波が力強く視線を前に向ける度に大きな高揚感だって強く感じることが出来たんです。けれど彼女は違った。そうじゃなかった。

誰かの “一歩” が映し出される度に酷く脆弱に見える彼女の足元。頼れるものがない。縋るものがない。ただ漠然と “今に悔いのないよう” 頑張って来た彼女の目前には、けれど目指すべき確かな景色がなかった。

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だから成長がない。あの日から何一つとして島村卯月は変わっていない。それはもしかしたらある意味で長所にだって成り得るし、むしろそれこそが彼女のアイドルとしての、最大の武器なのかも知れないのだけれど。

でも、そうじゃないってことは他のみんなが証明してしまったんですよね。“変わらない” ために “変わる” ことの大切さ。凛がそうしたように。未央がその一歩を踏み出したように。ラブライカの一員で居るためにと美波が語ってみせたように。踏み出さなくちゃ見えない景色が在る。出会えない奇跡があるから。またその巡り合いを人は “冒険” と呼ぶのだと。責任とか義務とかじゃない。やりたいからやる。たったそれだけのことでいいんだ。蘭子が言いたかったことだってきっとそういうことだったんじゃないかって。

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また、だからこそ彼女たちはその足を動かし続ける選択を自らの意思で選んだのだと思います。「私にとってアイドルとは――?」 そんな大それた質問にだってきっと答えられない子が多い中で、それでもこの道はきっと私たちがドキドキすることの出来る場所へと繋がっている筈だから。だから進んでいける。無邪気に。真剣に。ひた向きに。それぞれが数少ない舞台の上で感じた “あの感動” と再会するために彼女たちは歩み続けることが出来る。

進むことに自覚的なフィルムであったのもその証左で、またそれは一つ一つのカットに込められた願いのようなものでもあったのだと私は思います。そして、それもまた逆に考えれば卯月に向け贈られたエールそのものとも捉えられる存在でもあったはずで、他のアイドルたちが前に進むことでむしろこの物語は島村卯月という一人の少女の土台を創り上げようとしている節すらあって。

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“先に進むという選択” が生み出してしまう “先に進まれてしまうという感覚”。その不条理さを受け入れた上で尚、その背中はきっと貴女の道標にだってなるのだとこの作品は卯月に伝えたかったんじゃないかって。遅くても良い。ゆっくりでいい。自分のペースで。自分なりの歩幅で。だって貴女の傍にはこんなにも認め合える素敵な仲間たちが居るじゃないか。

今は相談されてしまう立ち位置だからしっかりしなくちゃと自分を鼓舞しているのかも知れない。でも貴女だってまだまだ十二時前のシンデレラなんだ。何かに縋らなくちゃ舞台に立てない。魔法がなくちゃ輝くことすら出来ない。でも、今はそれで良いんだよって。そのことに気づいて欲しいんだって、そう思うんです。

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それこそこれまでの冒険の旅路。“誰の笑顔” が彼女たちの道標になっていたのかを私は知っているし、そんな貴女の笑顔があんなにも素敵であったことも、その笑顔が誰よりも眩しく力強かったことも決して私は忘れていません。

まただからこそ、私は信じているのです。彼女がまた素敵な笑顔でこの場所に還ってきてくれることを。この場所で再び互いに心から笑い合えることを。だから頑張れ、島村卯月。頑張れ346プロ。あなたたちが例え立ち止まったとしても、私たちはこの場所でずっと待っているから。

そして 「ありがとう」 と。あなたの笑顔を前に初めて口にしたあの言葉を。またきっとこの物語の上でそう伝えさせて下さい。

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