-最終章-
「ランカ!ブレラ…二人とも無事だったのか…」
戻ってきたブレラとランカに、アルトは駆け寄ってきて声を掛けた。
「あぁ…二人ともすまない…俺の勇み足だったみたいだ…」
ブレラは気まずそうにアルトとオズマを見つめた。自分の勇み足で、ここまで
騒ぎを大きくしてしまった事を後悔もしていた。
「まぁ…無事だったんだ。それはそれでいいとしよう…」
オズマもバルキリーから降りていた。ランカがバジュラ達に声を掛けてからは、
洞窟内のバジュラ達は大人しくなり、バルキリーから降りても攻撃してこなくなったのだ。
「それより…オズマ…何で話したんだ?あれほど内密にして欲しいと俺は言ったはずだが」
ブレラにこう言われて、オズマはちょっと待てと言い返した。
「俺は最後まで何も喋っていない…ランカの夢で、アルトが勝手にバルキリーを
飛ばして
その後を追いかけてきただけだ」
「本当なの…ブレラお兄ちゃん…オズマお兄ちゃんは、私達を止めようとしていたんだから」
ランカは無意識のうちにオズマを庇う。それを見てブレラは思わず噴出した。
「解った…信じるからそんなに睨むな…ランカ…」
まるで洞窟内が和気藹々と満ちている最中、アルトだけはある心配をしていた。
「隊長…結局俺は…責任を取らなきゃならないんですか?無断でバルキリーに乗って
ここまでランカを連れ出してきたんだ。それなりの処罰は覚悟はしているけど…」
二人が無事だと解ると、アルトにとって問題なのはバルキリーから降ろされる事。
空が好きでたまらないアルトにしてみれば、厳罰は覚悟の上だが…
バルキリー
から降ろされてしまうのは、正直たまらない屈辱でもある。
「…私のせいだから…お兄ちゃんっ!お願い…アルトくんから空を取り上げないでっ!」
「む…むぅ…」
「いや、そもそもの発端はこの俺だ…アルトがランカを連れてきてくれなかったら…
俺は今頃どうなっていたのか…オズマ、アルトをあまり厳罰にはしないでくれ」
ブレラがまさか、アルトの肩を持つ事になろうとは、正直アルト自身も驚いていた。
「と、とにかく一度戻ろう…アルトの処罰は戻ってから決める…」
「お、お兄ちゃんっ!」
そこにオズマのバルキリーに無線が届いた。何だろう…とオズマが出てみると、
無線の相手はボビーであった。
『早くみんな出てきなさい。お迎えが来たわよ』
「…お迎え…?」
オズマが首を傾げて無線を切る。そしてみんなにバルキリーに戻るよう指示し、
ブレラもついでにみんなの後を追うようにして、洞窟からそれぞれバルキリーを発進させた。
そして外に出てみて…オズマもアルトも…そしてブレラでさえ驚いてしまった。
そこには巨大なマクロスクォーターが、上空高く浮遊していたのである。
『あー…聞こえるか?二人とも緊急演習ご苦労である。繰り返す。これは緊急演習である』
それはワイルダー艦長の太い声。そう、これはあくまでも演習。マクロスクォーター
総掛かりの緊急演習という名目になっている。
「…ワイルダー艦長…中々にしてやるじゃねぇか…演習なら、
アルトはお咎めなしって事だな」
「…ワイルダー艦長…」
アルトはクォーターの粋な計らいに感激していた。本来は無断でバルキリー使用、という
お咎めを受ける立場ではあるが、ボビーの計らいにワイルダー艦長も乗ってきた…
というのが
大方の想像ではある。これなら正規軍に対しても言い訳が出来る。
『ほらほら…もう演習は終りよ。早く帰還しなさい。そこのルシファー機もよかったらどうぞ』
ボビーの声が無線に届く。キャシーと相談して進めていたのは、アルト機無断使用の
隠滅…まぁ聞こえは悪いが、これがマクロスクォーターの粋という物でもある。
「了解!アルト機…クォーターに帰還しますっ!」
人が…本当にこの星をきれいに使えるのか?本当に汚さないという自信はあるのか?
それはまだ解らない…人はやっと、その翼を休められる星を手に入れたばかりなのだから…
「…信じてみるか…フロンティアの技術…フロンティアの市民達を…」
ブレラも続いてクォーターに着艦した。そして飛び立っていくマクロスクォーター。
それを多数のバジュラ達は、ただ見つめていた…クイーンの眼を通していつまでも…