-第七章-

「はぁ…はぁ…」

 ブレラは無数のバジュラの攻撃を、紙一重で交わしていた。

VF-27ルシファーは現状で待機させてはある。だが攻撃は一度もしていない。

「ここで…もし俺が…バジュラに向かって攻撃したら…全ては水の泡だ…」

 だがブレラの進入で殺気立っているバジュラ達には、そんな事はお構いなしと

攻撃の手を休める事はなかった。また一匹…そしてまた一匹…

まるで様子でも見ているかのように、一匹ずつブレラにアタックを続けている。

「くっ…今度は左からかよっ!おいっ!俺には攻撃の意図はないっ!

頼むから会わせてくれっ!クイーンに会わせてくれっ!」

 ブレラの言葉がまるで通じないかのように、バジュラは攻撃を続けている。

「ぐっ!!」

 ついに一匹のバジュラが、ブレラの左腕を掴んだ。そしてそのまま引きずるように

外へ排除しようとブレラを連れて行く。

「…ここまでなのか…俺には所詮…できるはずもなかったのか…」

 VF-27が自動でバジュラに標準を合わす。このままではブレラの身が持たない。

「や、やめろ…攻撃するな…ルシファー!」

 そこへ間一髪とぱかりに、オズマ、アルト、ランカの乗ったバルキリーが到着した。

「お、お兄ちゃんっ!ブレラお兄ちゃんっ!!」

 バジュラに腕を掴まれ、引きずり出される寸前の所でランカはそれを目撃した。

「…ら、ランカ…何故ここにっ!?」

『大丈夫か!?ブレラっ!くっ…攻撃は出来ないんだっけな…』

 オズマが歯がゆそうにブレラを見つめる。何とかしてあげたいが…それには

バジュラに一撃を交わさなければならない。

「アルトくんっ!このまま私を降ろしてっ!早くっ!」

「お、おいっ!ランカ…それはあまりにも無謀…」

「早くっ!大丈夫だからっ!」

 ランカに急かされてアルトは、バルキリーのハッチを開けた。

そしてガウォーク体型の ままランカを掌に乗せて、そっと地面に降ろす。

『お、おいランカっ!危険だっ!戻れっ!』

「ランカ…お前一体何を…」

 ブレラ、オズマの静止も無視して、ランカは一人バジュラ達の前に進んでいく。

「お願い…もう…やめて…ブレラお兄ちゃんは本当に、攻撃の意思はないのっ!」

 それまで殺気立っていたバジュラ達が、ランカの一言で大人しくなった。

『…こ、これは…ランカの体内のバジュラ菌が反応…しているのか…?』

「ら、ランカ…お前…」

 ランカは振り返りみんなの方を見た。そしてこう告げた。

「ここから先は…私が何とかしてみる…ブレラお兄ちゃんと私で…」

 ブレラの左腕を掴んでいたバジュラは、素直にその手を離した。まるで

ランカの言葉が通じるかのように、急に大人しく従うようになっていた。

「…お願い…バジュラ…ブレラさんは、あなた達の代表…クイーンに

話さなければならない事があるらしいの…お願い…私を信じて…」

 バジュラが道を開け始めた…まるでグレイスに操られていた時のように、

ランカのこの言葉で、クイーンに続く道を示し出したのだ。

「…ブレラお兄ちゃん…行こう…私達兄妹で…決着を着けなきゃいけないんだから」

「あ、ああ…そうだな…それが俺達…兄妹の…本当の試練…」

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