児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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政治を変える1枚の悲劇の報道写真 シリア男児の死

 1枚の報道写真が、欧州と世界の政治を変えつつある。

  トルコから海を越えて新天地のイタリアそして叔母のいるカナダを望んだシリア人家族の3歳の男児の悲劇の写真だ。
 
ベルリンの壁の崩壊となった1989年以降の欧州政治の大混乱を我々は目撃してきたが、今回の中東、アフリカ、アジアの、人間の最低限の尊厳さえ守れない抑圧的国家と、その指導者の無能さによる大量の難民の欧州への殺到という出来事を見ると、ベルリンの壁の鉄のカーテンの崩壊後欧州を見舞った大混乱も、いかに秩序だったものだったかを我々は知る。

 もとより、 難民問題の悲惨さには、中東をめぐる国家、中には国家の低をなしていないところもあるのだが、の当事者の無能さが背景にある。

 今回の悲劇に、わずかに救いがあるとすれば、21世紀のドイツにたいする再評価ということだろう。

 「世界を滅ぼすドイツ帝国」などという無様極まりないタイトルの書で、フランスのナショナリスト、トッドのごときものを世界最高の知性として、持ち上げる出版社があるわが国である。

 だが、トッド輩などとは違い、ドイツがまさに人類のなすべき道を示している。そしてその実力を持っている。もとより、国内の排外主義、極右勢力の反対を抱えてのことだ。

  1933年の第3帝国の成立以降、45年の無残な敗戦まで、ドイツはアーリア人の血の優位性というフィクションを掲げ、自民族を支配する民族と唱えて、強制収容所をつくり、ユダヤ人絶滅計画を進めて、国外だけでなく民族自体も滅ぼす瀬戸際まで進んだ。

  21世紀の20159月、難民がメルケルの写真を掲げて、プタペストから行進する中東難民のあの映像こそが、ドイツの今日的、積極的に評価されるべき意義を象徴的に示している。

 ドイツこそ、戦後最も真摯に、歴史の体験を踏まえ、歴史に向き合った国家だろう。 それが、難民をしてドイツの政治指導者メルケルの肖像を掲げて行進する事態を生んでいる。

  ドイツは、20世紀前半のドイツとは違い、21世紀の今や、難民の希望の国家である。
 
それにしても、イギリス。あの悲劇の写真で、UKIPのごとき、極右勢力に引きずられる形で、内向き姿勢を前面に出していたキャメロン保守党政権は、難民政策の転換を迫られたのである。

  一見平和なわが国だが、独裁の国家が跋扈し、政治的抑圧に苦しむ民がいるアジアのことだ。

  遠からず、欧州に起きている事態は、別の形で、波及してくる可能性が高い。

  しっかりと欧州の先進国の対処に学ぶ必要がある。

  累計すれば、数百万をはるかに超える難民の発生については、一国で解決できる問題ではおよそない。米国の力が低下した今なおさらそうだろう。 国際社会が一体となってこれに対処せねばならない。

 ヨーロッパについていえば、危機は、これまで同様、国家間の協力を超え、一体となる政治機構を強化しつつ、欧州統合とEUを確実に進めていく。

なお、下記のWSJによると、トルコはすでに170万人のシリア難民を受け入れている。シリア国内にも400万人の難民がいると推計。ため息をつく数字である。


参考記事

溺死したシリア難民の男児の写真に世界が衝撃

ウォール・ストリート・ジャーナル 94

参考ブログ

 奇妙なる仏のナショナリスト、E・トッドEmmanuel Toddの書、『ドイツ帝国が世界を破滅させる』 文春新書2015年 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3865

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3868

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