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G20閉幕 中国経済と米の利上げに懸念
9月6日 0時34分

G20閉幕 中国経済と米の利上げに懸念
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トルコのアンカラで開かれていたG20、主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議は、日本時間の5日夜、閉幕しました。声明では、名指しはしないものの世界同時株安の発端となった中国経済の減速と、アメリカが検討している利上げが世界経済に及ぼすリスクについて懸念を示しました。
日本やアメリカ、中国など主要20か国によるG20は4日からトルコのアンカラで開かれ、2日間の議論を終えて閉幕し、声明を発表しました。
声明ではまず、世界経済の現状について「経済の成長は、われわれの期待に届いていない」として、前回4月よりも厳しい表現で、中国経済の減速やそれに伴う世界同時株安などの金融市場の動揺で、世界経済に不透明感が強まっていることへの警戒感を表しました。
また、「通貨の競争的な切り下げを回避する」として自国の輸出に有利になるよう意図的に通貨を切り下げる「通貨安競争」をしないことを明記し、先月、通貨・人民元の基準値を相次いで引き下げた中国をけん制する形となっています。
一方で、「経済見通しの改善に沿っていくつかの先進国で金融政策の引き締めの可能性がより高まっていることに留意する」という文言が盛り込まれ、新興国で強まっている資金流出に伴う通貨安などへの懸念を踏まえ、名指しはしないものの事実上、アメリカに対しゼロ金利政策の解除による利上げは慎重に判断するよう求めています。
このように今回のG20の声明では、リーマンショック以降、世界経済を押し上げてきたアメリカの金融緩和と中国の高い成長が転換点を迎えるなか、米中両国の政策転換が世界経済に及ぼすリスクに懸念を示す形となりました。

中国「その後の対策は適切」

G20、主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議で経済の減速への懸念が示されたことについて、中国政府は、国内の株式市場ではバブルが発生し株価の急落が世界経済に影響を与えたもののその後の対策は適切だったと発表しました。
これは、中国の中央銀行、中国人民銀行が5日夜、発表したもので、会議の中で中国人民銀行の周小川総裁は中国の株式市場について「ことし6月中旬までバブルが膨らみ先月下旬の株価の調整では世界に影響を与えた」と述べ、上海市場の株価の急落が、世界同時株安の要因となったことを認めました。
しかし周総裁は株価の急落を受けた政府の対策については適切で先月、通貨・人民元の基準値を相次いで引き下げたことについても、「為替レートがもともと高かったことが要因だ。長期的に元安が続く根拠はない」と述べ、問題はないと言う認識を示しました。

米利上げ 慎重に見極めへ

アメリカは今回の会議の声明で利上げについて慎重な対応を求める内容が盛り込まれたことについて、特段の反応を示していませんが、早ければ今月中旬に、利上げを決める可能性もあります。会議の直前には、利上げの判断を大きく左右する、アメリカの雇用統計が発表されましたが、利上げに踏み切るかどうか、強弱が入り交じる内容で、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は利上げした場合の影響などをぎりぎりまで慎重に見極める見通しです。

麻生氏「中国に警告出せてよかった」

G20の閉幕後記者会見した麻生副総理兼財務大臣は、「金融市場の短期的な動きだけにとらわれるのではなく、各国が構造的な問題の解決に取り組む必要があることが浮き彫りになった」と述べました。
また麻生副総理は、声明に「負の波及効果を最小化し、不確実性を緩和し、透明性を向上させるために明確にコミュニケーションを行う」という文言が中国を意識して盛り込まれたとしたうえで、「上海株式市場の乱高下への中国の対応のしかたは、普通の国にはない市場介入だった」と述べました。
そのうえで、麻生副総理は「自分たちの経済が非常に大きくなり影響力を持っているということを理解して経済運営をすることが重要で、中国にとっては各国から警告が出たのはよかった」と述べました。

異例相次ぐG20

今回のG20は、アメリカと中国という2つの大国の経済状況が大きな曲がり角を迎えるなかで開催されたことを背景に、これまでにない異例の展開となりました。
まず、会議は、国際機関による報告からスタートするのが通例ですが、今回は、冒頭、中国が自国の経済などについて説明する異例の展開となり、各国の中国への関心が極めて強いことを示す形になりました。
また、麻生副総理兼財務大臣が過剰設備の解消や人口減少への対応、不良債権の処理といった具体的な内容まで触れて構造的な課題に取り組むことが重要と指摘したように、各国から中国への意見が相次ぎましたが、これも、ともすれば内政干渉と受け取られかねない内容だけに、国際会議の表の場でこうしたやり取りは異例です。
それでもあえて踏み込んだのは、世界第2の経済大国である中国の経済がしっかりしないと、みずからの国にも悪い影響が及びかねないという各国の強い危機感がありました。
一方、アメリカの利上げについて慎重な意見が新興国から出ていることから議論の結果、声明で「いくつかの先進国で金融政策の引き締めの可能性がより高まっていることに留意する」と盛り込んだことや名指しはしないものの通貨・人民元の基準値を相次いで引き下げた中国をけん制したこともこれまでよりも踏み込んだ表現ぶりとなりました。
このように今回のG20は、リーマンショック以降、世界経済を引っ張ってきたアメリカの金融緩和と中国の高い成長といういわば2つのエンジンにこれまでのように頼ることができなくなったあと、世界経済はどう進んでいくのかという不安心理がもたげていることを色こく反映する展開になりました。

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