富田洸平
2015年9月5日20時01分
脳でつくられるオキシトシンというホルモンを鼻から吸収させ続けると、他人とのコミュニケーションが苦手なアスペルガー症候群などの成人男性の症状が改善したとする臨床研究の結果を、東京大などのチームが英科学誌に発表した。専門家は「治療薬開発の一歩になる」と話している。
オキシトシンは陣痛促進剤などに使われているが、相手の表情から感情を読み取りやすくなる効果もあるとされる。研究チームは、アスペルガー症候群や自閉症などコミュニケーション障害を主な症状とする「自閉スペクトラム症」と診断された男性20人に、オキシトシンと偽薬を1日2回、6週間ずつスプレーで鼻に吹きかけて効果を比べた。
その結果、20人のうち18人はオキシトシンを使った時に、話しかけても小さい声で無表情に話していたのが、笑い返したり、声に抑揚がついたりするようになった。相手に合わせてうなずく回数も増えた。また、MRIで脳を調べると、他人の感情を理解する働きなどに関わる領域の活動が活発になっていたという。
東京大の山末英典准教授(精神神経科)は「人数をさらに増やし、安全性や効果が持続するかなどを検証していく」と話す。すでに名古屋大、金沢大、福井大と合同で計114人を対象とする同様の臨床研究を始めている。オキシトシンには子宮収縮の作用があるため、女性は今回の研究の対象にしていない。(富田洸平)
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朝日新聞社会部
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