タイムスクープハンター セレクション「江戸おなら代理人」 2015.09.02


シャ〜ッ!
江戸時代の消防といえば町火消し。
組の名前はいろはの文字順に付けられていたがなぜか「へ組」は存在しなかった。
「へ」はおならを連想し格好悪いからだという。
江戸の人々はそれほどおならを恥じていた。
そのために驚きの職業が存在していた。
屁を負う尼と書いて屁負比丘尼。
どんな仕事ぶりなのかその珍しい職業の実態を探るべく私は早速江戸時代に飛んだ
え〜アブソリュートポジションN483W135E712S394。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB0401572年29時78分84秒。
西暦変換しますと1734年2月26日。
11時43分23秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー435672これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名も無き人々を記録していくタイムスクープハンターである。
1734年江戸。
道を急ぐ尼装束の女性。
見た目は尼さんでも本来の僧とは全く異なる仕事を務めている。
彼女こそ屁負比丘尼。
今回の取材対象だ。
向かった先は海産物を扱う商家。
新たな依頼主の家である
主より聞いておりますのでどうぞ。
(石塚弐右衛門)よくお越し下さりました。
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事ができませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
妙晴と申しまする。
比丘尼の名前は妙晴。
この道10年のベテランだという。
依頼主の多くは娘を持つ親である。
今回も一人娘のためにと両親から打診があった。
だがその娘の姿が見えない。
どうやら問題が起きているらしい
娘はずっと部屋に閉じ籠もったままだという。
一体何が起きたというのか
あいえ…。
実は…ええ。
引きこもりのきっかけとなったある事件。
私はその状況を知るべく3か月前にタイムワープする事にした
え〜現在1733年11月29日10時10分。
無事タイムワープ成功しました。
この水茶屋でおとしさんのお見合いが行われるはずです。
その模様をカメラに収めたいと思います。
間もなくお見合いが行われようとしている。
娘のとし。
緊張のためか硬くなっている。
やがて現れたのは相手方の家族。
当時のお見合いはこうして水茶屋などで偶然の出会いを装って行われていた。
そのためかどことなく不自然でぎこちない
としにとっては初めてのお見合い。
男性からの視線に緊張が一層高まっていく
その時としに異変が。
ドキドキが最高潮に達しているのだろうか表情がこわばり体を震わせ始めた。
そしてこのあとカメラは衝撃的な瞬間を捉える
(おなら)
それはとしのおならだった
(ふく)あらまあ…。
せめてすぐに取り繕って…
両親は最後の手段として妙晴に救いを求めたのだ。
まずとしの様子をうかがうため部屋を訪れる事にした
(ふく)としちょっと開けますよ。
部屋の奥で書物を読みふけるとし。
こうしてずっと閉じ籠もっているという
(ふく)気分はどうです?ごめんなさいまし。
よい女手にございますなあ。
読み書きがお好きですか?
(妙晴)手前はそれがなりわいですので。
としの気持ちを思いやる妙晴。
今日のところは挨拶だけにとどめ一旦引き下がる事にした
江戸の川柳である。
当時の若い女性にとって人前でのおならはまさに死にたいほど恥ずかしい事であった。
としにとって想像以上に深い心の傷となっていた。
娘の気持ちが癒えるには時間がかかる。
妙晴は長期戦を覚悟していた
だが2日後急展開を見せる。
妙晴の元に石塚家から呼び出しがかかった。
娘のとしが会いたいという
いいえ。
これといって用向きがあっての事では…。
ええようございます。
きっと恐らくは…例えばこの往来にあるような…それは良い事…!
としの心に芽生え始めた新しい気持ち。
このチャンスを逃すまいと妙晴は早速としを外に連れ出す事にした
そんな事ありません。
(弐右衛門)それは無理もない。
気楽に行っておいで。
向かう先は手習いの塾。
としにとって98日ぶりの外出となる。
緊張の色を隠せないようだ。
おならが出やすいのは精神的なストレスから来る腸の機能障害に原因がある事が考えられる。
また彼女の場合は江戸時代の食べ物にも関係があるように思えた。
その仮定を裏付けようと本部に調査を依頼した
こちら沢嶋。
本部応答願います。
(古橋ミナミ)はいこちら古橋。
ちょっとした追加調査を依頼したいんですけど。
はいどうぞ。
この時代の人々江戸時代の人々の食生活ですね主に何を食べていたのかデータを頂きたいんですけど。
了解しました。
すぐにアップします。
え〜江戸の人々の食事ですが…それらに共通する成分はありますか?それらの中にはラフィノースと呼ばれる消化されにくい低分子炭水化物が含まれています。
やっぱり…。
といいますと?ビフィズス菌は腸を活性化させるんでしたよね。
はい。
ありがとうございます。
やはり食生活との関係も否定できないようだ。
また粗相をしてしまうのではないかというストレスと不安そして食物繊維を多くとる食生活それらが彼女を更に追い詰める結果となっていた。
女筆指南。
女性向けの習字教室であると同時に礼儀作法やしつけなどの指導も行っている
さようでございますか。
お話は伺っております。
どうぞ。
その厳粛な雰囲気にとしの緊張感が高まっていく。
その不安を和らげようと妙晴が無言で励ます。
指南の先生が現れると部屋は張り詰めた空気に包まれた
早速手習いの指南が始まる
ほらほらここの所これをもうちょっと丸みを帯びて。
ほらここの所!
厳しい指導を目の当たりにするとし。
果たして乗り越えられるのか
さように力を抜き。
再び高まっていく緊張。
だが妙晴が付き添っているという安心感からかとしは粗相をする事はなかった
やがて指南も締めくくり何事も無く授業は終わろうとしていた。
だがこのあと予想だにしない出来事を目の当たりにする
(くしゃみ)
(鼻をかむ音)
鼻をかんだ先生の顔に異変が。
紙が付いている事に全く気付いていない先生
一方必死に笑いをこらえる生徒たち。
そしてとしも。
笑わないようにすればするほど逆におかしくなっていく
筆は心で持つのだと。
完全につぼに入ったとし。
必死に耐える。
その時だった!
(おなら)
誰かが粗相をした。
臭気センサーを立ち上げ発生源を突き止める。
果たして…。
やはりとしだった。
緊張していた筋肉が一気に緩んだのだ。
…が次の瞬間!
(妙晴)あれまあ!
妙晴のファインプレー。
部屋は笑いに包まれおならの事など吹き飛んでしまった。
としにも笑顔が戻った
それに致しても…ええ誠に。
ああやはり…お気をつけなさいませ。
あの〜…。
屁負比丘尼が仕事として成り立つのは世間の暗黙の了解や人の情けを前提にしている。
私はそんな感じを受けた
確かこの通りをまっすぐ行った所にある…もうさような時期に。
せっかくにございます。
としはとんだハプニングで吹っ切れたのか明るさを取り戻した。
気持ちに余裕が生まれた2人は寄り道して梅の花を見に行く事にした
ところがそれは思わぬ事態へ…
尼様。
泥を拭おうと橋の欄干に下駄を置くとし。
その時だった
落ちた所が悪かった。
そこにいたのはたちの悪い男たち
どっちにせよ構わねえ。
なあ?ああ違えねえ。
慰謝料を払えと言いがかりをつけてきた
頭に当たったんだよ。
命に関わるんだぞ。
出せよ。
(おなら)
また出てしまった
すかさず妙晴が身代わりに
己だと?
(妙晴)ぶしつけにございました。
しかし…
男の乱暴な言葉に対してついに妙晴の怒りが爆発した
ふざけるな!
逆上した男たちが襲いかかってくる。
逃げるしかなかった
とりあえず茶屋に逃げ込み身を隠す2人。
ところが男たちは執ように追いかけてくる
隙を狙って脱出を試みる。
だがその行く手に…
(男)お前はそこを捜せ!
危機一髪。
すぐ横にあった納屋に身を寄せる。
辺りには追っ手が依然としてうろうろしている
行き場を失ってしまった。
じっと物陰に身を寄せるしかない。
ついにこの納屋にも…
男が手当たり次第に物をひっくり返していく。
明らかに2人を捜している。
もはやこれまでか。
としの表情が硬直していた
その時!ついに悟られた。
だが…
現れたのは3か月前お見合いしたあの男性だった
(とし)ええ。
まさかこんな所でお会いできるとは。
いえね…ひょっとして…なあに…あっいやあのその…今手前が申し上げたのは…あれ以来ずっと。
それは蔵之介からのプロポーズだった
(妙晴)お静かに!
(妙晴)ええ。
訳がございまして。
訳は後にしましょう。
助かります。
では参りましょう。
裏口から川に出ると蔵之介の船が待っていた。
猶予は無い。
急ぎ船に飛び乗る
(蔵之介)気をつけて。
(蔵之介)さあ気をつけて。
頼む。
(船頭)へい!
そしてついに脱出成功
(男)あっちじゃねえのか?
としの瞳には桟橋にいる蔵之介の姿がいつまでも映っている
家に着いた時は既に夜
とし!
あまりに帰宅の遅い2人を案じて両親が取り乱していた
全責任を負う覚悟の妙晴
だが…
いえ誠の事でありましょう?違います。
騒動を招いたのも手前の…。
いいえ違います!そんな事ありません。
あれほどおとなしかったとしが必死に妙晴をかばい始める。
それは彼女が自立への一歩を踏み出した証しだった
参りましょう。
2人の長い一日はこうして幕を閉じた
1か月後部屋には婚礼衣装に身を包んだとしがいた。
これから蔵之介との結婚式が行われるという。
すっかり自信を取り戻したとし。
その表情は柔らかくすがすがしい
おとしさん。
蔵之介さんに。
ええ。
幸せに満ちた彼女たちの姿を見送り今回の取材を終える事にした
私はこの辺で失礼します。
大きな歴史の中にひっそりと存在していた屁負比丘尼。
その奇妙で珍しい仕事の実態をかいま見た。
そしてまた恥ずかしさにとらわれた若い女性の苦悩を知る事もできた。
それはいつの時代も変わらない普遍的な人間の姿である
え〜以上コードナンバー435672アウトします。
2015/09/02(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「江戸おなら代理人」[字]

「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は江戸時代の屁負比丘尼(へおいびくに)と呼ばれる尼さんに密着取材を行う。

詳細情報
番組内容
今回の取材対象は江戸時代の尼僧である。その中でも屁負比丘尼(へおいびくに)という特殊な尼さんがいた。人前でおならなど粗相をしたら、その恥を本人に成り代わって引き受ける役を務めるという。いったい、どんな職業なのか。時空ジャーナリスト・沢嶋雄一(要潤)は早速、江戸時代にタイムワープし、娘・としに付き添う尼・妙晴の2人に密着ドキュメントを敢行した。ある日、思いがけない事態に遭遇する。
出演者
【出演】要潤,杏

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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