70年談話:「おわび」歴代の表現を引用 

毎日新聞 2015年08月14日 21時43分(最終更新 08月15日 01時05分)

戦後70年の談話を発表し、記者の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2015年8月14日午後6時40分、藤井太郎撮影
戦後70年の談話を発表し、記者の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2015年8月14日午後6時40分、藤井太郎撮影

 ◇「侵略」「植民地支配」言及

 政府は14日、臨時閣議を開き、戦後70年の安倍晋三首相談話を決定した。談話は「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と述べたうえで、「歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と明言。戦後50年の村山富市首相談話(1995年)などの表現を引用して「おわび」に言及した。

 「侵略」については、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」という戦後日本の不戦の誓いの形で言及。「植民地支配から永遠に決別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」と表明した。

 首相は臨時閣議後の記者会見で、自身の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」(座長・西室泰三日本郵政社長)が6日に提出した報告書を「歴史の声」と評価し、先の大戦について「報告書にもある通り、中には侵略と評価される行為もあった」と認めた。ただ、報告書が、31年の満州事変以後、日本は「大陸への侵略を拡大」したと記述したのに対し、首相は、何が侵略に当たるかは「歴史家の議論に委ねるべきだ」と述べた。

 談話は、29年の世界恐慌以降、孤立感を深めた日本が「外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みた」と指摘。「進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行った」と総括した。先の大戦への「深い悔悟の念」も表明した。

 「戦争の苦痛をなめ尽くした中国人や、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜のみなさんが寛容であるためには、いかほどの努力が必要だったか、思いを致さなければならない」と中国などに配慮。「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも忘れてはならない」と慰安婦問題にも間接的に言及した。

 一方で、「あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とも述べ、今回の談話を機に、アジア諸国との謝罪を巡る問題に区切りをつけたい考えをにじませた。

 そのうえで「歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り開いていく。アジアと世界の平和と繁栄に力を尽くす」と未来志向を強調。安倍内閣が掲げる「積極的平和主義」の外交理念を踏まえ、「自由、民主主義、人権といった基本的価値を共有する国々と手を携えて、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献していく」と宣言した。

 談話は約3300字で、村山談話の約3倍。英訳も同時に公表した。また、在中・在韓日本大使館のホームページに、中国語訳と韓国語訳を掲載した。【樋口淳也】

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