弁護士・森江春策の事件 2015.09.02


(雷鳴)
(クラクション)
(ノック)
(今井由香)失礼します。
車の用意が出来ました。
(森江春策)はい。
いってらっしゃいませ。
いってらっしゃいませ。

(由香)森江さん?助手席でお願いします。
あ…。
私の方が半年ほど先に入所しておりますので。
そうでした。
(由香)おはようございます代表。
おはようございます。
(片山郁夫)はいおはよう。
どうだい?森江。
はい?うちの事務所には慣れたかい?ああ…雰囲気はなんとか。
この前も言ったようにそろそろ君たちには顧問先を担当してもらう。
シリウス会長谷川病院だ。
知ってるね?はい。
名前は知ってます。
大きな病院ですよね?今井君は?はい。
シリウス会長谷川病院は関東に18の総合病院を持つ巨大な医療法人です。
現理事長は長谷川洋三郎。
自らも小児ガン手術の第一人者であり一代で医療法人シリウス会を築き上げました。
(由香)昨年度のグループ売り上げは896億。
現在7件の医療訴訟を抱えております。
よろしい。
完璧だ。

(ノック)片山です。
(長谷川洋三郎)どうぞ。
(片山)失礼します。
待ってたよ。
大勢で押しかけて申し訳ありません。
賑やかでいいよ。
病室は辛気臭くて困る。
ははは…。
理事長。
今日は私どもの事務所の新人弁護士を連れて参りました。
今後こちらの病院の顧問を担当致します。
今井由香です。
よろしくお願い致します。
森江春策です。
よろしくお願いします。
今井由香君は昨年の司法修習を最優秀で卒業した逸材です。
(洋三郎)そう。
しっかり頼みますよ。
はい。
そちらの森江君は…。
(洋三郎)新人にしてはとうが立ってますな。
ああ…はあ…。
私の大学時代の後輩でして昨年まで戸越銀座で自分の事務所を構えておりました。
ほお…そちらの事務所は?ああ…潰しました。
(洋三郎)そう…。
(片山)学生時代の頃から正義感が強い奴でして自分の事務所では金にならない国選弁護ばかりをやっておりました。
昔の片山君のようだね。
今の君は手を広げ過ぎた。
いやいや…事務所のおかげで大きくなりました。
(片山)感謝しております。
(松原美智代)理事長検温のお時間です。
ああ。
調子はいかがですか?えぇまあまあ。
体温測りますね。
はい。
(長谷川実)片山先生。
(片山)院長先生。
(片山)ご紹介します。
今度こちらの顧問を担当致します森江と今井です。
院長の長谷川実先生だ。
理事長のご子息でもあられる。
(実)よろしくお願い致します。
(由香)よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
(実)片山先生ちょっとお時間頂けますか?家内が相談したい事があると申しておりまして。
はい。
どのような事でしょう?それは家内の方から。
うちにおりますのでお寄りください。
わかりました。
失礼します。
(実)失礼します。
失礼致します。
(実)よろしくお願いします。
いやあ…すごい邸宅ですね。
(片山)すぐに駆けつけられるようにと理事長は病院の近くに自宅を建てたんだよ。
すごいですね。
森江大丈夫か?はい。
あの方は…。
(片山)長谷川真紀さん理事長のお嬢さんで今は病院の事務長だ。
(長谷川潤子)森江先生に今井先生ですね。
よろしくお願いします。
(森江・由香)よろしくお願いします。
(片山)それでご相談というのはどのような事でしょうか?
(潤子)ああ…お義父様の事です。
お義父様遺言について何かおっしゃってませんでした?いえ何も。
じゃあ先生の方から正式な遺言を残すようにお義父様に助言して頂けたら…。
(片山)いやそれは出来ません。
遺言はご本人の意思で残すものですから。
あと半年の命です。
(潤子)お義父様もご自分に残された時間はおわかりのはずなのに…。
遺言を残さない事が理事長のお気持ちかもしれません。
その場合ね…主人と真紀さんとで遺産が半分ずつという事ですよね?はい。
それが民法の規定です。
理事長には奥様がおられないので2人のお子様が均等に受け取ります。
民法900条第4号です。
主人は医者としても院長としてもずっとお義父様を支えてきました。
名前ばかりの事務長で遊んでばかりいた真紀さんと同額っていうのはちょっとおかしいと思いません?それに関しては弁護士が口を挟む事ではございませんので。
(洋三郎)うっ…。

(潤子)片山先生!今病院から連絡があってお義父様の容体が急変したって。
(片山)理事長が?電圧上げて。
(看護師)はい!離れて!院長ICUの準備出来ました。
あなた…。
遅かった。
私が気付いた時にはもう…。
片山先生。
(片山)はい。
警察に連絡してください。
警察?この急変は異常です。
こんな事になるはずがない。
わかりました。
それじゃあ…まさか殺人!?失礼致します。
(ノック)
(由香)失礼します。
(片山)警察の鑑識課が理事長の点滴パックから致死性の薬物を採取したそうだ。
やっぱり。
捜査本部は重要参考人の聴取を始めたらしい。
重要参考人?松原美智代理事長の担当看護師だ。
あっ…。
理事長検温のお時間です。
明日一番に2人で接見に行ってくれ。
私たちがですか?シリウス会長谷川病院の担当は君たちだろう。
ですがこれは刑事事件です。
顧問弁護士なら刑事事件も扱うのは当然だ。
はい。
「長谷川病院の関係者が弁護士の必要に迫られた時真っ先に駆けつけてほしい」それが理事長の言葉だった。
なんですか?いや…。
大丈夫ですか?しっかりしてください。
(水口警部)捜査担当の水口です。
弁護士の森江です。
今井です。
たった今松原美智代に殺人容疑の逮捕状を執行しました。
逮捕した?
(水口)ええ。
本人が自供したんですか?いや本人は否認していますがね。
状況から考えて松原美智代以外には不可能な犯行なんだ。
不可能?あんたたち…先生方も見たでしょう。
あの特別病棟の廊下には防犯カメラがあって各病室への出入りはチェックされてる。
(水口)おたくらが病室を出たのが午後2時21分。
そのあとに1人で病室に入った人間は松原美智代だけだ。
4時に長谷川実医師が看護師を伴って回診した時にはすでに被害者は亡くなっていた。
検出された薬物はロクロニウム臭化物。
麻酔薬として手術にも使われる薬剤だそうだが致死量を投与されれば3分から5分で死に至る。
3分?
(水口)ええ。
また鑑識からの報告によると点滴パックには注射針の刺さった穴があった。
注射針…。
犯人は点滴パックの外から注射器で薬物を注入したという事だな。
なるほど。
確かに看護師ならその知識も技術もありますね。
そう。
第一に防犯カメラの映像という絶対的な証拠がある。
松原美智代本人はなんと言ってるんですか?殺していないの一点張りだよ。
否認してるんですね。
ええ。
接見させてください。
弁護士として本人と話してみます。
昨日お会いしましたね。
私たちはシリウス会長谷川病院の顧問弁護士です。
そして今はあなたの弁護士です。
あなたに不利な事は誰にも言いません。
ですから正直に答えてください。
私理事長の点滴パックに毒を注射したりしてません。
殺してなんていません!否認は不利になりますよ。
罪を認めて謝罪すれば情状酌量という可能性もあるんですけど。
今井さん。
なんですか?この人はやっていないと言ってるんだ。
私本当に何もしてません。
理事長…あの人を殺すなんて考えられない!あの人?私は理事長を愛してました。
私と理事長は結婚しています。
えっ?結婚!?はい。
10日前に籍を入れました。
10日前?森江さん。
本当に彼女がやってないと思いますか?彼女がそう言ってるんだよ。
被疑者が弁護人にも嘘をつく事はよくあります。
まず鵜呑みにするんじゃなくて真実を問いただしてから弁護方針を決めるべきだと思いますけど。
彼女が嘘をついてるっていうの?ええ。
客観的に見れば本人の供述よりも防犯カメラの映像の方が信用出来ますね。
まして極秘の婚姻届ですよ。
財産目当てという動機まで成立します。
依頼人が嘘をついているなんて初めから決めつけてたら弁護人との信頼関係は築けないんだよ。
真実を知るにはどんな事があったって弁護士は被疑者の味方であるべきなんだよ。
理想論ですね。
先生がご自分の事務所を潰した理由がなんとなくわかりました。

(高柳明信)いやあ検事マスコミはもうこの事件の話題で持ちきりですね。
(高柳)へえ〜…。
(菊園綾子)高柳さん何を読んでるんですか?確かに毒殺された医療法人の理事長と被告人の看護師は秘密の婚姻関係にあった。
そういうスキャンダルがマスコミ向けの話題でしょう。
けれども私たち検察までそんな軽薄な報道に踊らされてはいけません。
もちろんです。
いや本当に軽薄な報道には腹が立ちます。
被告人は一貫して犯行を否認していますね。
ですが検事状況から見て被告人の犯行である事は疑う余地がございま…。
先入観を持ってはいけません。
否認事件ならしっかり補充捜査しましょう。
いつもながらの真摯な姿勢高柳敬服の極みでございます。
弁護を担当するのはキャピタル総合法律事務所ですね。
はあ強敵ですね。
まさか代表の片山弁護士までが出てこないとは思いますがキャピタル総合法律事務所といえば弁護士界でも選りすぐりのエリート集団でございまして…。
検事?どうなさいました?担当は森江春策とあります。
長谷川先生。
潤子さん。
どういう事です?片山先生。
先生たちは裁判であの女の味方をするとおっしゃるんですか?私どもはシリウス会長谷川病院の顧問弁護士として洋三郎理事長と契約を致しました。
その契約の中には病院関係者が刑事事件の被告人となった場合は弁護をするという一文が入っておりました。
偽装結婚してお義父様を殺した女ですよ。
ねえあなた。
(実)ああ。
偽装結婚とは思われません。
偽物の婚姻届を勝手に出したに決まってます。
筆跡は理事長のものでした。
ご確認致します。
少々お待ちください。
お預かり致します。
おめでとうございます。
区役所に婚姻届を提出したのは美智代さん1人でした。
ただ婚姻の有効性を証明するために彼女は婚姻届のコピーをしています。
そのコピーにあった署名の筆跡と理事長の筆跡が専門家の鑑定で一致しています。
これがそのコピーです。
お義父様をだまして署名させたのよ!大体婚姻届のコピー取っとくなんて普通じゃないでしょう?理事長の指示だったそうです。
(実)父の?はい。
結婚の事実を秘密にしたのもコピーを用意させたのも遺産争いのトラブルを避けるために理事長が考えた事だそうです。
(潤子)そんな…。
あの今のままだと父の遺産は…。
法定相続分は妻が2分の1。
残りの2分の1を実さんと真紀さんが分ける事になります。
すぐに結婚の無効を訴えてください。
偽装結婚だと証明してあの女に遺産が渡らないようにしてちょうだい。
それは出来ないんです。
出来ない!?弁護士は利益が相反する依頼人がいた場合両方からの依頼は受けられないと弁護士法25条で定められているんです。
つまり片山先生は私たちではなくあの女の味方をするとおっしゃるんですね。
よくわかりました。
ですがシリウス会を継ぐのはわたくしたちです。
そうなった時には別の弁護士事務所と顧問契約を結びます。
ねえ?いやあの…。
それでよろしいですね?あ…いや…。
(片山)長谷川先生…。
(片山)長谷川先生お待ちください。
先生!
(ため息)代表松原美智代の弁護を断って院長と奥様の言うとおり婚姻無効の訴えを出した方がいいと思います。
うちの事務所にとってかね?はい。
新人の分際で差し出がましい事を言いますがシリウス会の顧問料を失うというのはうちの事務所に…。
失うと決まったわけじゃないよ。
もし松原美智代さんが無罪になれば彼女がシリウス会を継ぐかもしれない…。
無罪になんかなるはずありません!彼女はやっていないと言ってるんだよ。
弁護する僕たちがその言葉を信じないようじゃ…。
2度目ですよ。
2度目って何が?あの女前の夫も殺して保険金を受け取っています。
ええ?
(由香)9年前西伊豆で軽トラックがカーブを曲がりきれずに崖から落ち運転していた男が亡くなりました。
それが松原耕一。
松原美智代の前の夫です。
警察は事故として処理しましたけど遺体からは睡眠薬が検出されました。
耕一には6000万の死亡保険がかけてあり松原美智代はその全額を受け取っています。
あの女本物の悪女ですよ。
いやあそれにしても驚きました。
森江弁護士の事務所が倒産してたなんて。
国選弁護ばかりやっていましたから。
50を過ぎて今さらイソ弁なんてのも大変な人生ですね。
あっ検事。
この建物の7階が現場となった特別病棟です。
調書にもあったように専用のエレベーターでしか行く事が出来ません。
あれが防犯カメラね。
(高柳)はい。
プライバシーの問題もあって病室の中にカメラはありませんけれど部屋の出入りは全てチェック出来るようになってます。
ここが事件現場となった部屋ですね。
外から侵入するのは不可能だと思いますよ。
7階ですから。
そうですね。
これはどう考えても被告人の犯行に間違いありません。
森江弁護士たちがここを出て次に院長の長谷川実さんが死亡を確認するまで部屋に入ったのは被告人の松原美智代ただ1人です。
動機に疑問があります。
動機?なぜ被害者を殺す必要があったのか?それは財産目当てで…。
調書には被害者は末期のすい臓ガンと書かれていました。
あっ…。
長くても余命は半年。
殺さなくても遺産は入ったでしょう。
あの結婚は偽装だったんですよ。
婚姻届が偽物だと判明すれば結婚は無効になる。
それを恐れて早めに殺害したんです。
考えられない事もないけれど計画があまりにもずさん過ぎる。
この状況では自分が疑われるに決まってるのに。
たかをくくってたんですよ。
前の保険金殺人の時も逃げおおせてますから。
早くしてください。
(由香)ありがとうございます。
森江さん!私は理事長を殺してなんかいません。
それが本当の事です。
わかりました。
私は全力であなたの無罪を勝ち取るための弁護をします。
ですから1つだけ松原さんも約束をしてください。
何をですか?私にだけは包み隠さず全てを話してください。
全て?はい。
9年前西伊豆で前のご主人が亡くなられてますね?あれは事故ですか?ええ事故です。
遺体からは睡眠薬が検出されたそうですけど。
事故に遭う少し前から睡眠薬を常用してました。
軽い不眠症にかかっていて。
信じられませんか?2度もこんな疑惑をかけられる女の言葉なんて。
信じます。
私はあなたの弁護士ですから。
森江さん!森江先生。
はい。
必ず無罪を勝ち取ってください。
この裁判に負けると私は全てを失う事になります。
(長谷川真紀)事務長の長谷川真紀です。
(高柳)被害者のお嬢さんでもあられます。
東京地検の菊園です。
早速ですが事件に使われたロクロニウム臭化物という薬品はこちらの病院にあったものなんですね?ええ警察に何度も話しましたよ。
薬剤室の奥の劇薬庫にあったものです。
(瀬尾正也)どうぞ。
これですか?
(瀬尾)ええ。
事件後に確認したら数が合いませんでした。
理事長の殺害に使用されたのはここにあったものに間違いありません。
この劇薬庫の鍵はいつも薬剤部長のあなたが…?いえいつもは事務所の金庫の中にあります。
開ける時は一応サインして複数で取り扱うという内規になっています。
その金庫の開け方を知っているのは?私とこの瀬尾さん。
もちろん院長の兄も知っていました。
松原美智代さんは知っていたんでしょうか?一般の看護師は知らないでしょう。
ただ父は知っていましたからうまい事を言って父から聞き出したのかもしれません。
ありえますね。
被告人が薬物を入手する事は可能です。
ごめんなさい。
私エステの予約してあるんであとは瀬尾さんに聞いてください。
エステ…?
(高柳)検事。
検事。
何か?いえ先ほどからずっと何をお考えになってらっしゃるのかと。
薬物の入手経路も判明しましたし被告人の有罪は確実だと思いますが。
1つだけ気になる事があります。
なんでしょう?凶器。
凶器?凶器ってなんの事ですか?理事長の死因は毒殺ですよ。
じゃあ薬物はどうやって注入されたの?点滴パックに開いていた穴から注射器によって注入されたと…。
あ…!そうなんだよ。
例の薬物ロクロニウム臭化物は注射器で点滴パックに注入された。
だから点滴パックからは薬物が検出されたけどでも注射器自体は発見されてないんだよ。
美智代さんはね事件のあった日の午後はずっと特別病棟のある7階にいたんだよ。
警察は美智代さんたち関係者全員の身体検査をしたし特別病棟内を徹底的に調べたんだよ。
でも薬物を注入した注射器はどこからも発見されなかったんだよ。
(由香)トイレに流して捨てたとか…。
今の注射器はねプラスチック製だから割って流すっていうわけにはいかないんだ。
では共犯者がいてその何者かに渡した。
共犯者ね…。
うーん…。
森江さん。
裁判でその注射器の事持ち出しても無駄だと思いますよ。
注射器が出てこないからって被告人の無実が証明出来るわけではありませんから。
ああそれはそうなんだけど気になるんだよね…。
凶器の注射器がどこに消えたのか…。
この裁判には勝てないか。
はい。
森江さんは凶器の注射器が発見されない事が被告人の有利になると考えているようですがそれだけで無罪を勝ち取れるとは思えません。
(片山)それでどうしろと?代表から弁護人を降りるように言ってください。
そもそもこんな裁判はうちのようなトップの法律事務所が扱う裁判だとは思えません。
いや何があっても弁護士は被疑者に寄り添うべきだ。
はい…。
ハッハッハッハ…。
森江はそう言ってただろう?ああ…。
もうしばらく付き合ってやってくれないか。
あいつといるとな昔の青い気持ちを思い出すんだ。
わかりました。
協力はしますけど一緒に闘おうとは思いません。
負けた時には自分のキャリアに傷がつくか。
協力してくれるだけで助かるんだよ。
本当あいつ1人じゃ心配なんだ。
ハッハ…。
あの人が地検のエースと呼ばれる菊園検事ですか?そう。
(町田澄代)すいません。
失礼します。
町田さん。
ご無沙汰しております。
お久しぶりでございます。
森江事務所は潰れ…あいやいや閉められたと伺いましたけど今はあなたは何を…?内緒です。
特にあなたには。
またこれはご挨拶ですねえ。
あなたがいるという事は…また相手は菊園検事ですか?はい…。
何かとご縁があるようですね。
(高梨)それではこれより被告人松原美智代に対する審理を開始します。
被告人は前へ出てください。
「公訴事実。
被告人は平成23年5月20日午後3時15分頃東京都世田谷区世田谷5丁目3番1号シリウス会長谷川病院7階病室において長谷川洋三郎当時78歳に対し殺意を持ってロクロニウム臭化物を点滴剤に混入し同人を同薬物による急性中毒により死に至らしめたものである」「罪名及び罰状殺人。
刑法199条」被告人に聞きます。
今検察官が読み上げた事実について何か言いたい事はありますか?薬物を混入した事実はありません。
私は理事長を殺してなんかいません。
(傍聴人のざわめき)弁護人ご意見は…?被告人の供述どおり弁護人としては無罪を主張致します。
(菊園喜助)はい中トロ。
いやー驚きました。
まさか本当に全面無罪狙ってくるとは。
無茶と言うべきか無謀と言うべきか。
ああいう弁護してるから事務所潰すんですよ。
でも森江さんあの防犯ビデオの映像をどう説明するつもりなのか…。
被告人以外に薬物を混入出来た人間はいないのに。
(喜助)はい中トロ。
(高柳)無難に反省させて情状酌量を狙えばいいんですよ。
あの僕も中トロを。
いやまともな弁護士だったらそうしますよ。
やっぱりね事務所を潰すような人間って…。
あの…中トロを。
(喜助)うん?
(高柳)あ中トロを…。
だから高柳さんよ…。
(高柳)あはい。
(喜助)あんたもうちの綾子もその森江ってのは古い友達だろ?いやいやいや…お父さんね…。
(喜助)うん?いやあの…大将友人ではありません。
彼は検事の敵です。
知り合いには違いねえじゃねえか。
その知り合いがさ自分の店潰してよその店の職人になったんだ。
少しはお前同情ってものがあるんじゃねえのか?え?綾子。
いやだから職人って…寿司屋じゃないから。
おんなじだろう。
自分で店構えてた男が新しい店へ行けばさペーペーの新人扱いだ。
その中で必死に働いてる奴をお前笑っちゃいけねえよ…。
いえ笑ってはおりません。
ただあの彼の弁護というのは逆効果なんですよ。
ああいう弁護をしているとですね今雇ってもらっている法律事務所の名前にも傷がつくんですね。
へ〜そういうもんかね。
所詮は菊園検事の敵ではございません。
大将中トロを。
え?中トロを。
(喜助)はい。
あ…。
いらっしゃいませー。
ああ先生!今日はありがとう澄代さん。
わざわざ傍聴に来てくれて。
何をおっしゃいます。
先生と私の仲じゃないですか。
ああ…とりあえず腹減った。
カツ丼。
…じゃなくてもりそば1つ。
まだダイエット中なんですか?また体重増えちゃった。
ストレスかなあ…?フン…もり1丁!難しい裁判ですけどこれはチャンスですよ。
チャンス?これだけ話題になった事件です。
この裁判に勝てばマスコミも大騒ぎしますしね。
先生の評判が上がれば森江事務所再建が近づきます。
事務所再建か…。
このおそば屋さんのパートは世を忍ぶ仮の姿。
夢はお家再興ですよ。
お家再興って赤穂浪士じゃないんだから。
ハハハハ…!フフフフ…。
あおつかれさまです。
おつかれさま。
あ桐山さん。
聞いてくださいよ。
あのオヤジ本当に全面無罪を主張しました。
(桐山俊哉)え…?あの裁判で無罪を主張か!?無茶もいいところだなあ。
はい。
代表も物好きだよ。
いくら大学の後輩だからってあのレベルの人間をうちに入れる事ないだろう。
そこまで言いますか。
ハハハハハハ…!でも代表は昔の自分を見てるようだって言ってましたよ。
確かにここも最初は代表1人の小さな個人事務所だったんだ。
大きくなったのはシリウス会長谷川病院の顧問になってからだよ。
亡くなった長谷川理事長は代表を信頼してましたもんね。
自分の父親みたいだって代表は言ってた。
この事務所もシリウス会長谷川病院も代表と理事長の二人三脚で大きくなったんだ。
だからこんな面倒くさい裁判も引き受けたんだろう。
でもその裁判に負けたらシリウス会との顧問契約は切られますよ。
松原美智代の弁護をするという事は後継者の院長夫妻を敵に回すという事ですから。
(ため息)証人は事件当日担当医として現場の特別病棟に勤務していましたね?はい。
最後に被害者が生きている事を確認したのは何時ですか?2時半ちょっと前だったと記憶してます。
片山先生やそちらの森江弁護士たちが父を見舞ってくれた時です。
防犯ビデオには午後2時21分とあります。
被害者の死亡を確認したのもあなたですね?はい。
4時が回診の時間でしたので2人の看護師と父の病室に入りました。
この4時の段階ですでに被害者は心停止の状態だったという事ですね?はい。
その間に被害者の病室に入った人間はいますか?はい。
1人だけおります。
その人はこの法廷にいますか?はい。
松原美智代さんです。
彼女だけが父の病室…。
証人…?どうしました?証人!長谷川さん!
(潤子)あなた!あなた…!
(潤子)あなた…どうしたの…?あなた!
(高梨)静粛に。
落ち着いてください。
救急車の手配をお願いします!
(潤子)あなた…あなた…!いやーっ!長谷川さん!
(ドアの開閉音)
(高柳)検事。
東京地裁から連絡がありまして裁判は延期。
再開日時は未定との事です。
仕方ありません。
法廷で証人が亡くなるなんて…。
それから警察から司法解剖の報告書が届きました。
検出された薬物はシアン化カリウムです。
青酸カリ?はい。
科警研が分析した薬物指紋からこれもシリウス会長谷川病院の薬物庫に置かれているものと判明しました。
長谷川さんはいつそんなものを…?証人尋問に臨む前に服用したと思われます。
(高柳)長谷川さんは病院で調合された栄養剤を持ち歩いていました。
一日に数回服用していたそうです。
薬物はその中に入っていた…。
はい。
いやでもたった1錠です。
服用された以外のカプセルは通常の栄養剤でした。
たった1錠…?はい。
いつも1週間分をピルケースに入れてたそうです。
その中の1錠にだけ毒が仕込まれていた。
つまり法廷で倒れたのは偶然だった…。
はい。
長谷川さんがいつ服用するかはわからない。
ただいつかは必ず飲んで死ぬ事になる。
薬物の混入経路の確認が必要です。
(潤子)主人が持ち歩いていた薬の事ですか?はい。
いつもピルケースに入れて持ち歩いていたという…。
ええ。
週の初めに1週間分を院長室にある薬瓶の中からピルケースに入れ替えて携帯してました。
その薬は長谷川病院で調合されたものですよね?ええ。
瓶が空になったら薬剤師さんが補充してくれるんです。
ご主人がその栄養剤を常用していた事は病院関係者はみんな知っていたという事ですね?ええ。
知ってたはずですよ。
ああ…。
(瀬尾)ええ。
3か月に1度こちらのカプセルを調合してました。
院長室に運んだのもあなたですか?いえ。
私は薬剤部長として持ち場を離れられないのでいつもは看護師さんのどなたかが…。
最後にカプセルを運ばれたのはどなたでしょう?それは…松原看護師です。
松原美智代…?はい。
(瀬尾)ちょうど理事長がお亡くなりになる数日前に調合して松原さんに運んでもらいました。

(高柳)信じられません。
長谷川実さんを殺したのもあの女なんですよ!高柳さん。
まだ疑惑の段階です。
私たちがその言葉を出す時は徹底的な検証をしたあと。
申し訳ございません。
高柳一時の感情に流されてしまいました。
検事のご教示に目の覚める思いでございます。
ただ…松原美智代が重要な容疑者である事は確かです。
はい。
まさか…遺産の取り分を多くするために?いや検事お言葉ですが実さんを殺害しても美智代の取り分は増えないはずです。
真紀さんと妹さんがいらっしゃる以上。
そのとおり!今回の場合理事長が先に殺害されそのあとに実さんが殺害された。
実さんの遺産は妻である潤子さんが4分の3妹である真紀さんが4分の1を受け取るから実さんを殺害しても美智代の取り分は全く変わらない。
おっしゃるとおりでございます。
検事は何をお考えなのでしょう?遺産の取り分とおっしゃいましたが…。
相続人が全ていなくなれば…。
はい…。
あ…!まさか…。
そんな…。
真紀さんの薬からも薬物が検出された…!?はい。
長谷川真紀が昨日警察に持ち込んだサプリメントから法廷での殺人事件に使用されたものと同じシアン化カリウムが検出されました。
(由香)長谷川真紀の供述によるとビタミンを多く含んだサプリメントだと松原美智代に勧められて一日に2度服用していたそうです。
(片山)その中に青酸カリが?
(由香)はい。
亡くなった実さんと同じ状況ですね。
たまたま服用はしませんでしたが瓶の中にたった1錠致死量のシアン化カリウムが入ったカプセルが混入されていました。
つまり犯人は…。
松原美智代です。
遺産相続の権利がある人間を全員殺害するつもりだったんですよ。
2つの殺人に1つの殺人未遂。
これは死刑判決が出ますね。
そんな事言っちゃいけないよ。
無実を叫んでる人間がいるんだよ。
それを弁護士が死刑だなんて言っちゃいけないよ。
(片山)森江。
一番弱い立場の人間に寄り添うのが弁護士の役目じゃないのかい?そんな理想論本気で言ってるんですか?
(片山)今井君も。
ならば私も言わせてもらいます。
森江さんは被告人の言う事を信じる信じるって言うだけで何も事実を検証していません。
依頼人の言う事をなんでも鵜呑みにするだけじゃちゃんとした弁護なんて出来ないと思います!依頼人だから信じてるんじゃない。
一番立場の弱い人だから寄り添ってるんだよ。
(片山)2人ともやめなさい。
弁護士同士が怒鳴り合ってどうするんだ!すいません。
彼女と面会して参ります。
(ドアの開閉音)変わってないなあいつも。
学生の時のままだ。
それって成長してないって事ですよね。
(片山)純粋という意味もあるな。
もしかして君たちいいコンビになるかもしれんな。
そんな事ありえません。
ハッハッハッハッハ…。
私が渡したカプセルに毒が…?実さんの栄養剤と真紀さんのビタミン剤にです。
私じゃありません。
病院関係者なら誰でも院長室や事務室に入れます。
お二人があの薬瓶からカプセルを取る事も知ってました。
毒入りのカプセルを混入したのは別の人物だと言うんですね?はい。
私は誰も殺してないし殺そうともしていません!私を疑うんですか?あなたも私を疑うんですね。
いやあの…。
それよりも先生。
はい。
理事長の遺産がいくらくらいになるのか教えてください。
遺産ですか?私は妻ですから遺産の半分を受け取れるんでしょう?はい。
それがいくらになるのか調べて報告してください。
いや今は遺産の事よりも…。
先生は私の弁護士でしょ?依頼人の要望に応えるのが弁護士の仕事のはずです。
(由香)だから言ったじゃないですか。
あの女は根っからの悪女なんですよ。
でも彼女はやってないと言ってる。
森江さんだって心から信じられないからこんな所まで来てあの女の過去を洗ってるんじゃないんですか?信じてるさ。
だけど君は事実の検証をするべきだと言った。
それももっともだなぁと思って。
私の意見を受け入れてくれたんですか。
検証を徹底的にやるべきだっていうのも正しいなと思ったから。
ここが松原美智代の前の夫松原耕一が事故死した道ですね。
普通に運転してたら事故起こすような道じゃないよね。
えぇ…。
服用していた睡眠薬の影響が考えられますね。
うわっ痛っ!ちょちょっと…。
な何するのちょっと待ちなさい。
(佐野真知子)華!ちょっと何やってんの!やめなさい!すいません。
本当に申し訳ありませんでした。
弁護士の先生だなんて思わなくて…。
華は…娘は週刊誌の記者だと思ったみたいで。
週刊誌?美智代さんの事を悪く書くから敵だと思ってるんです。
松原美智代さんのお知り合いなんですね?娘がお世話になりました。
5歳の時に小児ガンだと診断されてこの町の病院に入院しました。
その時に担当してくださったのが美智代さんで…。
あぁ〜。
(真知子の声)担当の先生からは難しい手術だと言われました。
美智代さんはそれなら東京に小児ガン手術の第一人者がいると言ってくださって3人で長谷川洋三郎先生に会いに行きました。
(由香の声)それが理事長と美智代さんの出会いだったんですね。
美智代さんと長谷川先生がいらっしゃらなかったら華は今ここにいなかったかもしれません。
でもそのために美智代さんは地元の病院に居づらくなってしまって…。
(由香)その病院の先生としては面子を潰されたような気分でしょうからね。
はい。
それで長谷川先生が美智代さんをご自分の病院に誘ったんです。
お別れするのは残念でしたけど美智代さんのためには良かったんだと思います。
この町には前の旦那さんの事故の事で美智代さんを悪く言う人もいましたから。
転落事故の事ですね?えぇ…。
美智代さんが保険金を狙っただなんていうマスコミもいて…。
だけどそんな事は絶対にありません。
どうして言い切れるんですか?美智代さん旦那さんの保険金なんて自分では1円も受け取ってません。
前の旦那さんには大きな借金があったんです。
お友達の保証人になったとかで…。
じゃあ受け取った保険金は…。
全部借金返済に充てたそうです。
ほぅ…。
懐に入れないんだったら保険金目当ての殺人とは考えられない。
(佐野華)美智代さんに会うんでしょ?うん。
これ渡してくれる?これ美智代さんにプレゼント?そうか。
わかった。
必ず渡すからね。
(高柳)いやーそれにしても毀誉褒貶の激しい女ですね。
報道どおりの悪女だと言う人もいれば優しい看護師さんだったと言う人もいる。
一体本当の松原美智代ってのはどんな女だったのか。
森江さーん!あっ…。
森江さんたちも被告人の過去を調べに?はい。
私は公園で出会った親子の言葉を信じます。
子供の目から見た姿が一番正しい気がします。
森江さんらしい。
いやでも法律家が情緒だけで結論を出すのはまずいと思いますけれど。
情緒じゃないよ。
あの子からの情報だよ。
松原美智代は華ちゃんを紹介する事で長谷川理事長と知り合ったんですよ。
そのあとに長谷川病院に就職して戸籍上の妻にまでなっている。
華ちゃんの病気を利用して取り入ったとも考えられますよ。
なるほど。
こちらの先生の方が鋭いですね。
確かに1つの行為も違う角度から見れば全然別なものに見えます。
本当に子供のためを思ったのか子供を打算に利用したのか。
はい。
本当の事は本人にしかわからない。
そして法廷は人間が必死になってその真実を見極めようとする場所です。
それなら可能な限りの努力をして見極めなければならない。
そのとおり。
そのために検事自らこんな所までいらしたんですか?それは菊園検事の信念でございますから。
森江さん。
また勝負になりましたね。
どちらが真実に近づくか。
はい。
ではまた法廷でお会いしましょう。
高柳さん。
はい。
では。
さすがは東京地検のエース。
大丈夫ですか?森江さん。
負けるわけにはいかないよ。
美智代さんの無罪を勝ち取るためには…。
それを華ちゃんが?はい。
ぜひあなたに渡して欲しいと。
残念ながら拘置所には持ち込めないらしいんで私が大切に保管しておきますから。
森江先生。
はい?そのためだけにわざわざ…?華ちゃんとの約束ですから。
では失礼します。
星を見ました。
2人で星を見たんです。
(洋三郎)あぁデネブが見える。
(美智代)デネブ?
(洋三郎)はくちょう座のデネブだよ。
(美智代)あぁあの星。
今僕たちが見ている光ね1300年から1800年かかって地球まで届くんだ。
僕たちが生まれるよりずっと前の光だ。
それを2人で見ている。
すごいですね。
それを考えると私たちの年の差なんてとても小さい。
はは…そうだね。
千年生まれた時が違えば君とは会えなかった。
40年ぐらいで良かったよ。
私…あの人を本当に愛してました。
あの人には夢があったんです。
今まで築いた財産を元に病気の子供たちのために院内学級を全国に作るという夢。
院内学級?今まで残したお金を全部そのために使いたいって。
その夢を私は引き継がなくてはいけません。
それで理事長の遺産の事を?ごめんなさい私…森江先生の事心の底からは信用してませんでした。
ここから出してください。
私本当にあの人を殺してなんていません。
はい。
必ず…必ず出します。
何?なんの御用かしら。
今後の事をご相談しようと思って。
今後の事?あの女はいずれ死刑になるわ。
もちろんお父様の財産なんて1円だって渡さない。
当然ね。
(真紀)つまり長谷川家の財産は私が8分の5お義姉様が8分の3を受け取る事になるの。
お兄様の残した財産の4分の1は妹である私が受け取る権利があるから。
問題はこれからのシリウス会を誰が動かすかって事。
何が言いたいの?お兄様が生きていれば院長から理事長になった。
けれどそのお兄様はもういない。
だから?私は事務長としてずっとお父様やお兄様の仕事を支えてきた。
お義姉様のように家の中の事だけをやってきたわけじゃないわ。
あれが仕事かしら。
事務室にいるよりもエステやショッピングの時間の方が多かったみたいだけど。
長谷川の血を引いてる人間はもうこの世に私しかいないの。
私シリウス会を解散して美容整形をメーンにした病院にしたいのよ。
小児ガンの治療なんてお金にならない事はもうやめて保険外治療で稼げるメディカル企業にするべきだわ。
遺産をもらったらご実家に戻られたらどうかしら。
じゃ。

(真紀)あぁっ!急いでください!本当に車を運転してる人間の顔はわからなかったんですか?
(真紀)警察にも聞かれたけどまさか狙われるなんて思わないもの。
あぁはい。
でもきっとあの女よ。
あの女って?松原美智代に決まってるじゃない!あの女が私の財産狙って…。
落ち着いてください。
松原さん今拘置所の中ですから。
で逃げた車は?防犯カメラに映像が残ってたんだけどナンバーに細工がしてあったみたいで行方はつかめてない…。
やっぱり遺産を狙った犯行ですかね?真紀さんが死んだら誰かが得をするっちゅうような。
いやそれはありませんね。
基本的に真紀さんの遺産を受け継ぐ人間はいないんです。
いない?はい。
あのね日本の法律では遺産を相続出来るのはね血の繋がっている血縁か配偶者だけなんだよ。
だから真紀さんが死んだとしても血の繋がっていない美智代さんや潤子さんには遺産はいかないんだよ。
ふーん。
じゃあ誰のとこいくんですか?遺言がない場合は特別縁故者ってのを探すんだよ。
「特別縁故者」。
つまり籍は入ってなくても同居してたとか死ぬ間際まで面倒見てた。
で裁判所がその人を特別縁故者だって認めればその人のところに入る。
じゃこれもいない場合は?国庫に入る。
もう国がね全部持ってっちゃうんだよ。
あの先生。
それうちのメニューなんですけど。
あぁっ!書いちゃった!ごめん消すから。
でも車で真紀さんを狙った犯人は絶対に美智代さんではないわけですよね?うん。
だから美智代さん以外に長谷川家の人間の命を狙っている人物がいるって事だよ。
きっとその人物こそが一連の事件の真犯人じゃないかなって思うんだ。
ちょっとカスだらけですよ!あらら…。
ちょっと待って。
という事はよその真犯人を見つければ美智代さんの無実が証明されるって事じゃないですか。
いやでもそれ簡単じゃないですよ。
防犯カメラに美智代さん以外映っていなかったんですから。
防犯カメラに映らない…。
まさか透明人間じゃないですよね?透明人間?ハハハハ…!アハハハ…!透明人間…アハハハ…!アハハハ…!検事。
夫が殺されたばかりだというのにもう他の男とデート。
しかも相手は事件で使用された薬物を保管していた薬剤部長です。
これは裏に何かありますね。
2人の関係を徹底的に洗いましょう。
はい。
やっぱり最後はここなんだ。
美智代さん以外にも犯行が可能だって事を証明しなければ無罪にはならない。

(津村妙子)お待たせしました。
これが当日の勤務表と病室の状況です。
医師が2人に…看護師が5人か。
特別病棟には病室が12あって当日患者が入院してた病室は理事長を含めて…7部屋か。
他の患者さんは2時から4時の間廊下に出ていません。
そうだね…。
事件当日午後現場の病室に入った見舞客は私たちだけです。
僕たちの事は考えないでいいよ。
点滴パックなんか誰もいじってないし。
この裁判での決定的な証拠は防犯カメラの映像です。
私たちが出てから実さんが理事長の死を確認するまでに入った人間は被告人だけ…。
これを覆すのは無理ですよ。
瀬尾には先物取引で作った大きな損失がありその埋め合わせのために潤子からも個人的に借金してたようです。
ただの関係ではない。
潤子はよくこのホテルを利用してました。
もしかしたら2人の関係が出てくるかもしれませんね。
(戸田)こちらが長谷川様のご利用状況です。
恐れ入ります。
外れましたか。
夫婦で泊まってますね。
防犯カメラの映像見せて頂けますか?なるほど!瀬尾が院長の実さんの名前を騙っているかもしれない…という事ですね?これ瀬尾じゃありませんよ。
瀬尾は180センチ以上ありますからやっぱり実さんという事になりますか。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
結局美智代さん以外に犯行が可能な人物は見つかりませんでしたね。
(田上)こんにちは国際堂フルーツです。
703号室の真柴様にお届けするようにと。
ご苦労様です。
こちらでお預かりします。
はい。
さすが特別病室のお見舞い。
国際堂フルーツっていえば超一流の果物屋さんですよ。
理事長もお好きでした。
お亡くなりになった日もそろそろメロンが美味しい季節だからって私たちに差し入れしてくださったんです。
事件の日にも差し入れを?
(妙子)えぇ。
(田上)あぁはい。
あの日も私が配達しました。
その時間はおわかりですか?えーっと…ちょっと待ってください。
あの日の配達は12時半ですね。
注文があったのが11時で私がすぐに配達してます。
季節のフルーツゼリーを8個。
こちらです。
よろしくお願い致します。
(妙子)わぁ美味しそう!8個!?はい。
どうかしました?いやなんで8個なんだろう…。
特別病棟にはさ医師が2人と看護師が5人で7人じゃない。
だからナースセンターに差し入れをするんだったら7つでいいのに…なんで…。
あっ!いた!透明人間!はい!?ほら澄代さんが言ってたじゃない。
犯人は防犯カメラにも映らないような透明人間かもしれないって。
いた!いたよ!結局潤子と一緒にいた男の正体わからなかったですね。
でもどう考えても夫の院長とは思えない。
(携帯電話)森江さん。
はいもしもし。
「あの…わかったかもしれません」わかった?わかったって何が?この事件の真相です。
真犯人は美智代さん以外にいます。
えっ!?真犯人を追いつめるためにもどうしても菊園さんの協力が必要なんです。
えぇ…。
つまり…。
わかりました。
ご協力します。
検事どうされました?森江弁護士がこの期に及んでなんだっていうんです?検事?ちょっと森江さん!ありえませんって。
いくらなんでもその仮説は。
大体なんの証拠もないじゃないですか。
証拠はこれから探す。
でも美智代さんが無実だとしたらこれ以外には考えられない。
えっ?松原美智代の無罪が勝ち取れる?そのつもりでいます。
だが…だとすると犯人は誰だと言うんだよ。
あくまでも美智代さんの無実を明かすつもりです。
その結果真犯人も明らかになるとは思いますが。
そのために次の法廷である仮説を証明したいと思います。
仮説か。
代表にも手伝って頂きたいんです。
わかった。
(片山)相変わらずまっすぐに突き進む男だね。
(片山の笑い声)証人のご職業を教えてください。
薬剤師です。
シリウス会長谷川病院で薬剤部長をしております。
長谷川洋三郎さん長谷川実さんの殺害に使われた薬物について質問します。
(瀬尾)はい。
2つの殺害に使われた薬物はシリウス会長谷川病院の薬剤室にあったものですね?はい。
事件後確認したところロクロニウム臭化物とシアン化カリウムの量が減っておりました。
最初の事件に使われたロクロニウム臭化物について伺います。
点滴パックにロクロニウム臭化物を注射したとして死亡するまでに何分ぐらいかかると考えられますか?早ければ3分から5分長ければ8分ぐらいです。
次に事件の背景について伺います。
この事件の背景に長谷川家の財産をめぐる争いがあると思いますか?はあ…私はただの従業員ですからそこまでの事は…。
「ただの従業員」ですか?先日長谷川真紀さんがホテルの駐車場で暴走してきた車にひかれそうになった時25日の2時半ですがこの時あなたはどこにいらっしゃいましたか?答えてください。
お答えになれないようですね。
終わります。
(高梨)検察官反対尋問は?ございます。
あなたは真紀さんが襲撃された日の前日千葉のレンタカー店で車を1台借りていますね。
それは真紀さん襲撃に使用された車黒いセダンそれと同型のものですね?押収されたその車のバンパーのへこみから真紀さんが着ていた服の繊維片が検出されました。
つまり真紀さんを車で襲撃したのはあなただという事です。
裁判長長谷川真紀さん襲撃事件は本裁判と直接関係ありませんし瀬尾証人は洋三郎さんを殺害した真犯人でもありません。
長谷川洋三郎氏殺害の真相はこれから明らかにしていきますがその背後には莫大な長谷川家の財産をめぐって醜い争いがあったという事実をまずはご理解ください。
証人あなたにはこのあと警察の事情聴取が待っています。
証人のご職業を教えてください。
弁護士です。
シリウス会長谷川病院と長谷川洋三郎氏の顧問弁護士をしております。
事件当日あなたは洋三郎氏の病室を見舞っていますね?はい。
その時間と一緒に入室した人を教えてください。
今弁護人席にいる森江弁護士今井弁護士そしてわたくしの3人です。
入室した時間は午後2時を回った頃だったと記憶をしております。
はい。
これがその時の映像です。
あなたは理事長が亡くなられた時も駆けつけてますね?はい。
潤子夫人からの連絡を受けて病室へ向かいました。
この裁判の証拠として採用されている防犯カメラの映像は以前ご覧になられましたね?はい。
事件当日も現場にいたし防犯カメラの映像も見た。
では率直なご意見を聞かせてください。
点滴パックに薬物を注射する事が可能だった人物は何人いますか?それが可能だった人物は被告人1人かと考えます。
いえ実はもう1人だけいたんです。
(傍聴人のざわめき)その人の名は…。
その人の名は…長谷川洋三郎。
えっ…?亡くなられた長谷川理事長自身です。
洋三郎さんはあの日自殺を図られたんです。
これは殺人事件ではありません。
防犯カメラに映っていないのも当然です。
外部からは犯人など侵入してはいないからです。
それはありえない。
なぜですか?もしも弁護人の推論どおり自殺だとしたら部屋にベッドの近くに注射器が残っていたはずです。
はい私もそれは疑問でした。
点滴パックに薬物を混入させた注射器は一体どこに消えてしまったのか?考えられる事は1つ。
最初に飛び込んだ人間が処分したんです。
(実)父さん!父さん!DC用意して!はい!父さん?父さん!あの時最初に理事長の死に気がついたのは実さんでした。
注射器は実さんが隠したんです。
なぜそのような事をしたのか?それは洋三郎さんの自殺を隠し被告人に殺人犯の濡れ衣を着せるためです。
洋三郎さんが自殺だったと判明してしまうと遺産の半分は美智代さんが相続します。
実さんは自分の取り分を減らさないために美智代さんを犯人に仕立て上げ相続人から排除しようとしたんです。
しかし理事長は結婚の事実を家族にも知らせていなかったはずです。
それは被告人も証言をしています。
はい。
遺産争いに美智代さんを巻き込まないためにご家族にも秘密でした。
ただし洋三郎さんがただ1人本心を語られたであろうと推測される人物がいます。
洋三郎理事長ほどの思慮深い方が遺書や遺言書を残さないとは考えられません。
恐らくご家族にも内密でその信頼しうる人物に送っていたんでしょう。
ただ1人真実を打ち明けられた人物それは理事長が心から信頼していた顧問弁護士片山証人あなたです。
しかし理事長は知りませんでした。
あなたが実さんや潤子夫人と内通していた事を。
本件は他殺に見せかけた自殺であり一連の事件の首謀者はここにいる片山証人です。
よって弁護人は被告人の無罪を主張致します。
終わります。
今のは全て推論に過ぎません。
客観的な証拠が何もない!
(高梨)証人は不規則発言を控えてください。
検察官反対尋問は?ございます。
あなたと長谷川潤子さんの関係を教えてください。
何を言ってるんです?そんな事は本件となんの関係もない。
あなたは今証人です。
聞かれた事だけにお答えください。
本件との関係はすぐに判明します。
(高梨)続けてください。
あなたと長谷川潤子さんは愛人関係にありますね?バカな事を…。
ここにHOTELWORLDの宿泊者カードがあります。
「長谷川実潤子」と記されていますが宿泊したのは実さんではありません。
敬称欄に「Mr.」「Ms.」「Dr.」とあります。
外資系のホテルや航空会社に時折見られる署名方法です。
この長谷川実というサインをした人物はミスターに印をつけましたが本物の長谷川実氏ならドクターに印をつけたはずです。
なぜならドクターというのはただの尊称ではなく急病人が出た場合ホテル側が協力を要請するためだからです。
シリウス会長谷川病院の医師たちは洋三郎理事長の命によってドクターでチェックインする事を教育されています。
しかしそれは署名をした男が実さんではないという事しか示さない。
私だとも言い切れないはずです。
そのとおりです。
では筆跡鑑定を受けますか?次にここに5月12日付けの世田谷郵便局の書留記録があります。
「差出人長谷川洋三郎受取人片山郁夫」とありますがあなたが受け取ったのはなんですか?これこそが長谷川洋三郎さんの遺言書だったんじゃないんですか?本件の背後にあるのは長谷川家の莫大な遺産を狙ったあなたの計画です。
確かに理事長の自殺を美智代さんの犯行に見せかけたのは実さんの独断だったかもしれない。
でもそれを利用してあなたと愛人の潤子は全財産を自分たちのものにするために実さんを毒殺し瀬尾を利用して真紀さんを狙った。
実さんが亡くなればその遺産は妻である潤子が4分の3を相続する。
真紀さん殺害計画も真紀さんが相続した遺産を狙ってのものだった。
法律家の意見とは思えませんな。
真紀さんが死んでもその遺産は潤子さんにいく事はありません。
はい。
姻族への相続を日本の民法は認めていない。
けれど潤子が真紀さんの特別縁故者として認められれば問題なく全財産を独り占め出来る。
生計を同一にしている潤子なら特別縁故者として認定される確率は高い。
まさにプロの法律家だからこそ思いつく計画です。
そしてもちろん最終的には全てをご自分のものにするつもりで。
本件を陰で計画した人物は洋三郎理事長の遺書から自殺を知りうる人間そして長谷川潤子に全ての遺産を受け取らせる法律知識のある人間つまり長谷川病院の顧問弁護士であるあなただけです。
大丈夫だって言ったじゃない!俺の言うとおりにしてれば全てうまくいくって言ったじゃない!あなたが…あなたが言ったの!
(警備員)落ち着いてください。
(裁判長)静粛にしてください。
(潤子の泣き声)証人この法廷の前にあなたに全てを告白してほしかった。
代表にも手伝って頂きたいんです。
わかった。
(片山)相変わらずまっすぐに突き進む男だね。
(片山の笑い声)けれどもあなたは何も言ってくれなかった。
(ため息)お前に何がわかる?あの人と2人で苦労してやっと大きくした病院なんだ。
(拍手)確かに遺言はあった。
(片山の声)しかし最後の最後にあの人は間違えた。
若い女に溺れて冷静な判断が出来なくなった。
シリウス会の権利を全て妻の美智代に残すと記してあったんだ。
(片山)まだ若い彼女1人があれだけの医療法人を運営出来るはずがない。
理事長が本当に病院の将来を託すべき人間はこの私だけなんだよ!私なら理事長の遺志を継いでシリウス会を理想の病院に育てられる。
そのために無実の美智代さんを見殺しにして実さんを殺したというんですか?救ったんだよ!あの病院は重い病気で苦しむ人たちを救う砦だ。
実さんや真紀さんに任せておけば利益至上主義の病院に切り替えようとするだけだ。
あの人の理想を継げるのはこの私しかいないはずなんだ。
大勢の人や子供たちを救うための理想の病院を作るために。
私が…私が継ぐしかなかったんだ…。
命を踏みにじる人間が「子供たちのためだ」なんて口にしちゃいけないんだ!弁護士バッジのひまわりは正義と自由の象徴です。
あなたはそれを踏みにじった。
私はあなたを許さない。
本法廷で明らかになったように本件は他殺ではなく被害者自身による自殺です。
よって検察は被告人に対する公訴を取り消します。
なんと言っていいかわかりません。
愛した人が自殺をしたという事実は本当におつらいと思います。
理事長は尊厳死を認めるべきだとおっしゃってました。
ガンの末期治療は激しい痛みを伴います。
延命治療ではなく尊厳死を認めなければいけないって。
苦しむ姿をあなたに見せたくなかったんですね。
最後に微笑んでくれました。
美智代さん。
はい。
その窓から流れ星が見えた。
何かお願いしましたか?
(笑い声)そんな年じゃない…。
今さら何かを望む年じゃない。
お礼をね。
お礼?お礼を言ったんだ。
人生の最後に君に会わせてくれた事をね。

(一同)乾杯!噂には聞いてましたがねあんたが森江さん?はい。
よろしくお願いします。
いい顔してるじゃねえか!いやいや…お父さんね…いや大将森江先生がいい顔というのは…。
いやぁ味のあるいい顔だ。
お前もよ男は中身で見た方がいいよ。
(喜助)はいよ!はいよ!いただきます。
(澄代・由香)いただきます!うまい!うわ〜美味しい!
(喜助)へいそうかい。
好きなものなんでも言っとくれ。
はい!中トロ!
(喜助)え?あっいえいえ…。
それにしても検察と弁護人が組んでの真相解明。
もうマスコミ大騒ぎですね。
今なら森江事務所再建出来るんじゃないんですか?そうですよ先生!今こそ事務所再建です!そしたら私も所属させてください。
あんたちょっと待ってよ。
あんたずーっと先生の事バカにしてたじゃないの。
してました。
「してました」って…。
いやいやでも今度の件で興味を持ちました。
森江先生みたいな存在もちょっと研究してみようかなって。
研究って何?珍しい動物見つけたみたいだね。
(一同の笑い声)じゃあ森江事務所再建に向けてもう一度乾杯しましょう。
でも先立つものがないし…。
はいはいはい乾杯!森江事務所再建に…。
(一同)乾杯!
日本全国には地域伝統の踊りがあります
2015/09/02(水) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
弁護士・森江春策の事件[再][解][字]

透明人間の完全犯罪、偽造結婚で殺された病院長!?死のカプセルが相続人を狙う!

詳細情報
◇番組内容
『弁護士・森江春策』シリーズ第3弾!大手法律事務所の“イソ弁”になった、森江。大病院の顧問弁護士に着任した早々、病院理事長が殺された!莫大な遺産が絡んだ事件の意外な真犯人を、森江が暴く!
◇出演者
中村梅雀、若村麻由美、金田明夫、竜雷太、角替和枝、高橋かおり、長谷川初範、いしのようこ、金子さやか、矢島健一 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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日本語
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