感が特徴なんだそうですよ。
きれいですね。
太ってる。
おいいたか?いやおらんぞ!おのれどこへ逃げた!幕末動乱の京都で徳川幕府に追われる一人の男がいました。
人呼んで…つらくなったらとにかく逃げる!幕末・明治のヒーローにもそんな弱気な青春時代がありました。
幕末に活躍した若き長州の志士たち。
そのリーダーこそ木戸孝允です。
(砲声)けれどもこのリーダー困った癖がありました。
それは肝心なところで…ついにその「逃げ癖」のせいで仲間の信頼を失う事に…。
この臆病者!逃げ回る木戸を立ち直らせたのが…木戸さん逃げるんですか!幕末のクライマックス。
長同盟の裏にあった木戸と龍馬の知られざる友情秘話です。
明治の世日本のリーダーとなった木戸は近代国家をつくろうと奔走します。
そこに立ちはだかった思わぬ壁…。
それはなんと…まげを落とすなんて絶対嫌だ!人々にまげを切らせるために木戸が仕掛けた驚きの作戦とは?今宵はちょっと頼りないリーダー木戸孝允の奮闘物語です。
江戸と並ぶ政治の中心となっていた当時の京都には…中には幕府の要人を暗殺するなど過激な行動をとる者も…。
そんな志士たちのリーダーだったのが…皆で力を合わせ幕府の政を正そうではないか!そんな桂には得意技がありました。
それは「逃げる事」。
ある時幕府の役人に追われていた桂は突然顔や体を汚し始めます。
そこへ桂を捜していた役人が…。
ん?そこの名を申せ。
へえくんだり村の船頭うえ…右衛門ていいやす。
ちきしょうどこへ行きやがった!船頭に変装した桂は役人に気付かれず見事難を逃れました。
ある時はとうとう役人に捕まってしまいますが…。
連行される途中突然用を足したいと言いだした桂。
役人が少し目を離したその時…。
あっという間にはかまを脱いで…。
これより御免こうむりやす。
身軽になった桂は素早い逃げ足で役人からまんまと逃げおおせたのだとか。
いざという時にはあの手この手を使って逃げる事から「逃げの小五郎」とあだ名されたのです。
しかしこの「逃げ」の姿勢が桂を窮地に追い込む事になります。
それは池田屋事件での出来事でした。
旅館の池田屋に集まっていた長州藩士らを…心の声よし。
心の声ここはひとつ…。
記録にはその時の桂の様子がこう書かれています。
「桂小五郎…」。
戦いのさなか仲間を置いて窓から逃げたというのです。
桂さんは臆病者だ!桂は仲間からの信頼を失ってしまいます。
(砲声)あぁっ!1か月後…長州軍は幕府に味方する摩藩や会津藩などの軍勢数万と激突しました。
(銃声)藩の上役から…桂にとっては池田屋事件での失点を挽回するチャンス。
ところが…。
行っても無理!なんと桂は説得役を断りそのまま一人逃亡!兵庫県の北部にある豊岡市出石町。
桂は全てから逃れこの地に身を寄せます。
ここで何をしていたのかというと…。
心の声あ〜あ池田屋では「臆病者」となじられ都の戦では頭に血が上った連中を止めろとむちゃを言われ何もかも嫌になった。
そうだ!このまま町人として生きていこうかな。
なんと桂は町人に姿を変え…そんな時…。
(戸をたたく音)一人の女性が訪ねてきます。
桂はん…。
それは桂の恋人だった芸妓…いわば相棒。
夜ごと潜伏先へ握り飯を届け新選組の厳しい尋問にも決して白状しませんでした。
おお幾松か!よく来たな。
幾松は長州藩から一通の手紙を預かっていました。
それは行方をくらました桂に…しかし桂はどうも乗り気ではないようです。
おっそうだ。
幾松お前もここで一緒に…。
(幾松)あほ!ここで逃げてどないしはります!桂はんはこないなとこで埋もれるお人やおへん。
藩にお戻りになってまたお国のため働いておくれやす!それはなんとひと月にも及びました。
そして…あ〜分かった分かった!帰る!帰ればいいんでしょう!恋人・幾松に引っ張られる形で再び歴史の表舞台へのぼる事になったのです。
ようこそ「歴史秘話ヒストリア」へ。
桂を説得し長州に戻らせた幾松。
2人は明治維新の後正式に結婚します。
夫婦となったあとも幾松は桂に思ったままをぶつけました。
これは海外出張中の桂に幾松がお土産を頼んだ時の手紙です。
「たくさん」を意味する言葉「たんと」を5回も書いてお土産をおねだりする幾松。
時には叱られ時には甘えられ…。
幾松には長州藩のリーダー桂小五郎もほんとぞっこんだったんですね。
戻ってみればなんとびっくり!藩のトップとして迎えられてしまいます。
実は…そこでかつて京都で志士たちのリーダーだった…しかしいきなり木戸を大ピンチが襲います。
長州藩の敗北は火を見るよりも明らかでした。
心の声やっぱり帰ってくるんじゃなかった…。
頭を抱える木戸の前に一人の若者が現れました。
龍馬は木戸に大胆な策を提案します。
全国でも有数の勢力を誇っていた摩藩を長州藩の味方につける事で幕府に対抗しようというのです。
しかしこの提案に長州藩士たちは猛反対!断じて承知できません!摩はにっくき敵ですぞ!摩はかつて禁門の変で戦った相手です。
当時長州藩士はわらじの裏に……と書いていました。
これを日々履いて踏みつけるほど摩を憎んでいたのです。
それでも摩と手を結ぶと言われるんですか!心の声摩への恨みは分かる。
かといってこのままでは長州藩は滅んでしまう…。
ええいしかたない!そこで木戸は激高する長州藩士たちを鎮めるため長州ではなく摩から頭を下げて同盟を頼んでくるという形で調整を進めていきました。
長州の海の玄関口下関で…木戸と龍馬は摩側のリーダー西郷隆盛を待ちます。
待てど暮らせど肝心の西郷が現れません。
心の声西郷…。
やはり摩は信用できん!賊許すまじ!長州藩士たちは更に同盟反対を叫び木戸に詰め寄ります。
心の声ここで逃げるわけにはいかん。
なんとかせねば…。
木戸は仲間たちの怒りをなだめつつ再度摩藩に交渉の約束を取り付けます。
長州藩のみんなが納得する形で同盟を成立させるには摩側から同盟してほしいと頭を下げてもらわなければならない。
木戸は西郷が話を切り出すのを待ちます。
ところが…両者は見合ったまま10日ばかり時間だけがむなしく過ぎていきました。
摩は我らを愚弄しておるのか!もうやめた!長州に帰る!しびれを切らした木戸は西郷との会談を打ち切り……とその時。
・木戸さん逃げるんですか!交渉の場に遅れて到着した龍馬。
記録によると会談が全く進展していないと知った龍馬は木戸を強く責めたと言います。
龍馬は真に日本の事を考えるならばこれまでのいきさつは捨て本音で西郷に立ち向かうべきだと迫ったのです。
心の声このままでは同盟など無理だ。
しかしこちらが頭を下げては長州にいる連中は納得するまい。
分かった坂本君。
龍馬の言葉に木戸は逃げずに西郷と相対する決意を固めます。
すると今度は木戸から話の口火を切ります。
しかし木戸が語ったのは同盟を結びたいという言葉ではありませんでした。
禁門の変の恨みある摩に我ら長州の人間が頼み事などできるはずもありません!木戸は長州の方から同盟を乞うわけにはいかないという本音を洗いざらいぶちまけました。
木戸の真正面からの言葉を聞いた西郷はひと言。
「ごもっともでございます」と口を開き木戸の言葉を全て受け止めました。
ここに「長同盟」が成立。
巨大な反幕府勢力が誕生しました。
やがて…逃げずに西郷と向き合った木戸の覚悟が260年余りに及ぶ徳川の時代を終わらせ明治の世を切り開いたのです。
明治に入って新政府トップの一人となった木戸は「五箇条の御誓文」や「廃藩置県」など数々の改革を断行。
日本の近代化を推し進めます。
しかしその木戸の前に立ちはだかったのは日本古来の伝統でした。
時は明治。
近代国家建設のため奔走する木戸の前に難題が立ちはだかります。
それは…これは明治初期の東京を描いた錦絵です。
町並みが西洋風に変わっても人々の頭の上には昔ながらのちょんまげがのっていました。
幕末に日本を訪れたロシア人はちょんまげをこう評しています。
そんな西洋人の見方に木戸は危機感を抱いていました。
お隣…清の人々の独特の髪型「辮髪」もイギリス人に奇妙な風習と見なされ清国を未開の国としていっそう蔑視する事につながりました。
心の声このままでは日本も未開の国として西洋の植民地にされてしまう。
日本が生き残るにはちょんまげをどうにかしなければ!生き残りのカギは「髪型」?とにもかくにも明治4年。
木戸は新聞にこんな歌を載せます。
「ジャンギリ頭をたたいてみれば文明開化の音がする」。
「ジャンギリ頭」つまりまげを切った髪型にして初めて日本は文明国になれると訴えたのです。
そして木戸自身も…。
新政府内でいち早くまげを切り落とし模範を示しました。
更に同じ年の8月にはいわゆる「断髪令」を制定。
法律でもまげを切る事を推奨します。
(雷鳴)しかしまげは1,000年も続いた伝統の髪型。
ちょんまげをなくそうという木戸の政策は日本中で大騒動を巻き起こします。
鳥取県では…。
ある男がまげを切ってさっぱりしたところ…。
妻がその頭を見て仰天!身の毛がよだつと夫婦の縁を切られてしまいます。
断髪した頭は女性から大不評。
日本各地で「断髪離婚」が起こりました。
ああちょんまげを切ったばかりにこんな事に…。
更に福井県のある村では村長が村人を集めてまげを切らせたところ…。
なんでまげを落とさねばならねえんだ!ふざけるな!事態は一揆へとエスカレート。
6人が騒乱罪で死刑になるという大事件に発展してしまいました。
ちょんまげをやめる事を人々はなかなか受け入れられなかったのです。
日本中で続発する断髪への抵抗に木戸は頭を抱えます。
心の声
(木戸)どうすれば断髪してくれるのか…。
悩む木戸にある光景が浮かびます。
それは明治になって行われた「東京遷都」での事。
初めて人前に現れた明治天皇に熱狂する人々の姿でした。
心の声もし陛下がまげをお切りになれば皆断髪するにちがいない!木戸は明治天皇に国民の模範になってもらおうと考えます。
しかし明治天皇のまげは伝統を何よりも重んじる宮中の人々によって固く守られていました。
特に断髪に強硬に反対していたのが…。
公家の岩倉具視です。
むやみに…そう公言していた岩倉は古式ゆかしい自分のまげを切ろうとしませんでした。
心の声岩倉様の理解を得なければ陛下に断髪して頂く事など到底不可能だ。
そんな中ちょんまげをめぐる騒動に転機が訪れます。
(汽笛)西洋文明を学ぶため外国に使節を派遣する事になり岩倉と木戸は共に使節団の一員となったのです。
心の声
(木戸)まげに対する西洋人の偏見を知れば岩倉様も考えを改めるかもしれん。
これはアメリカ上陸直後に撮影された使節団の写真です。
木戸や他のメンバーが洋装の中岩倉だけが伝統的な和装に身を包んでいます。
行くさきざきで…その歓迎ぶりに岩倉は気を良くし自らの格好に自信を深めます。
しかしアメリカ人の本心は厳しいものでした。
岩倉はアメリカに留学していた息子にこう告げられます。
使節団が歓迎されているのは父上のまげと着物が珍しいからにすぎません。
アメリカ人は文明が開けていない国の奇妙な風俗として喜んでいるだけなのです。
実際新聞「ニューヨークタイムズ」にはこんな記事が掲載されていました。
表では自分の姿を歓迎していたかに見えたアメリカ人が裏では野蛮な格好と見下していた。
アメリカ人の本音を知った岩倉は衝撃を受けます。
そして木戸は…。
日本の伝統を守るのは大事な事です。
しかし今は日本が文明国である事を示す必要があるのです。
岩倉は決断します。
ついに自らのまげを切り落としたのです。
ワシントンの日本公使館にはすぐさま岩倉の断髪前と後の写真が並べられました。
日本の全権大使が文明国の一員だという事をアメリカに示したのです。
うんよく似合っている!これで日本も立派な文明国だな。
一大事じゃ!「岩倉断髪」の知らせが日本に伝わると宮中の空気は一変します。
こうして…宮中にもようやく近代化の風が吹き始めました。
明治天皇に文明開化の模範になってもらおうという木戸の思いがついに届いたのです。
心の声陛下よくぞご決意下されました!「聖上御断髪あそばされそうろう」。
新聞で天皇断髪が伝えられると日本中に衝撃が走りました。
こうして日本人の見た目もまた「文明開化」へと大きくかじを切る事になりました。
ちょんまげの壁を乗り越えた木戸はせきを切ったようにさまざまな改革に着手。
近代国家日本への道を切り開いていったのです。
今宵の「歴史秘話ヒストリア」最後は…そんなお話でお別れです。
ここを築いたのは明治政府の要職に就いて間もない木戸孝允でした。
幕末の動乱のさなか志半ばで命を落とした仲間たちを木戸は生涯忘れる事はなかったのです。
中にはヨーロッパに留学させた子供もいました。
更に木戸の援助は長州藩と敵対した会津藩にも及びます。
明治以後会津の人たちが置かれた厳しい立場を思いやり土地や資金の面倒を見るよう新政府の伊藤博文に働きかけるなど救済に尽力しました。
数々の改革に取り組んでいた…明治という新しい時代を築くため共に戦った同志に囲まれながら木戸は静かに眠っています。
2015/09/02(水) 22:00〜22:45
NHK総合1・神戸
歴史秘話ヒストリア「“逃げの小五郎”とよばれて〜長州のヒーロー・木戸孝允」[解][字]
長州藩のリ−ダー・木戸孝允(たかよし)。明治維新の立て役者だが、若い頃は「逃げの小五郎」というあだ名を付けられるダメリーダー!?木戸孝允の意外な青春時代を描く。
詳細情報
番組内容
明治維新の立て役者・木戸孝允(たかよし)。若き日の木戸は、ここぞと言う時に「逃げ」てしまう悪い癖が…。池田屋事件では、仲間を見捨ててひとり逃げ、西郷隆盛との交渉でも、やはり逃げかかった。しかし、木戸はそのたびに恋人や友人の励ましで、踏みとどまり、時代と闘ってゆく。やがて近代国家建設に取り組む木戸の前に強大な敵が立ちふさがる。それは“ちょんまげ”!?明治日本を作り上げた木戸孝允の意外な青春物語。
出演者
【キャスター】渡邊あゆみ
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
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