クローズアップ現代「子どもたちの世界に何が〜大阪中1遺体遺棄事件〜」 2015.09.03


こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
深夜、明け方まで出歩く少年少女といえば非行に走るいわゆる不良のイメージが強いのですけれども今、深夜の街には普通の子が漂うケースが増えているといいます。
商店街の監視カメラに映っていた中学生になったばかりの2人の子ども。
あどけなさが残る2人はこのあと事件に巻き込まれ変わり果てた姿で発見されました。
亡くなった平田奈津美さんと星野凌斗さん。
ともに非行歴はありませんでした。
平田さんは吹奏楽部の部活を頑張る活発な女の子。
星野さんは将来の夢を人を助ける人になりたいと書く優しい男の子でした。
2人は何を思い、なぜ夜自宅を出て、翌朝まで街をさまよっていたのか。
スマートフォンなどによって子どもどうしつながりやすくなっている一方で大人からは子どもの世界が見えづらくなってきているといわれています。
共働き家庭が世帯の半数以上を占め、シングルマザーも増加。
生活のため、夜働かざるをえない親も増えるなど子どもを取り巻く環境も大きく変化しています。
犯罪に巻き込まれる危険が漂う深夜の街を、スマートフォンを手にした普通の子どもたちがさまよっているという現実。
今夜は中学1年生の男女2人が亡くなった事件が浮き彫りにした大人たちが気付いていない子どもの世界です。

大阪の繁華街を歩く1人の男。
この11時間後に逮捕されました。
平田さんの遺体を遺棄した疑いが持たれている山田浩二容疑者です。
13年前、男子中学生や男子高校生を車に監禁したなどとして逮捕され去年秋に出所したばかりでした。
NHKが入手した山田容疑者の手紙です。
当時、事件の被害者に宛てて書いたものです。
「今後はしっかりと罪を償っていくことをここに誓います」。
しかし、事件は繰り返されました。

奈津美でーす。

13歳になったばかりだった平田奈津美さん。
学校でも評判の明るくて元気な少女でした。
同級生の星野凌斗さん。
妹思いの少年でした。
2人は深夜に外出し朝まで家に帰らないこともあったといいます。
事件前日も2人は夜10時に自宅近くのコンビニエンスストアにいました。
平田さんはカップラーメンをすすっていたといいます。

男性が心配して声をかけましたが笑って、それ以上答えなかったということです。
日付が変わっても自宅に帰ろうとしなかった2人は友人にLINEや電話で泊めてほしいと頼んでいました。
しかし、泊めてもらうことはできませんでした。

結局、2人は自宅から1キロほど離れた駅前の商店街で夜を明かしました。
事件当日、13日の午前5時。
2人の姿は複数の人に目撃されていました。
しかし、家に帰るよう促す人はいませんでした。

午前5時8分寝屋川市駅前の商店街の防犯カメラの映像です。
2人の姿が映像で確認できるのはこれが最後です。
私たちは深夜、街にいた2人と同じ世代の子ども50人に話を聞きました。
共働きや母子家庭で親が留守がちという子ども。
親が再婚どうしで家にいづらいという子ども。
2人が夜、街で過ごしていた気持ちが分かるという子どもたちが少なくありませんでした。

近年、街頭での補導活動に力を入れてきた警察。
一見、普通の子どもたちのはいかいが目立つようになってきているといいます。
警察の担当者はスマートフォンの普及による親子関係の変化を理由の一つに挙げています。
今、高校生の9割中学生でも4割近くがスマートフォンを利用しています。

中学2年生から高校3年生までの5人の子どもを育てる38歳の女性。
今回の事件をひと事ではないと感じています。
子どもたちが夜自宅にいないことは珍しくないからです。
朝、出るのは8時半ぐらい夜は12時とか過ぎるときもあるので。

心理カウンセリングの仕事をしている女性。
運送会社で働く夫も深夜の仕事が多く2人で家を空けることも少なくありません。
そのため、5人の子どもとはLINEで連絡を取り合っています。
子どもが夜遅くまで外出していてもLINEを通してつながっていれば安心だといいます。
この日も、中学3年の四男が午後11時前になっても帰ってきていませんでした。
しかし、きつく帰宅を促すことはないといいます。

中学3年の四男が帰ってきたのは深夜0時近くになってからでした。

遅かったじゃん。

親子がお互いにスマートフォンを持つことで深夜に出歩くことへの抵抗感が薄れがちだといいます。

お伝えしていますように、今回の事件は、普通の子どもたちが、夜の街をさまよう中で起きました。
大人たちから子どもの世界が見えにくくなっていることで、今、子どもたちが一歩間違えれば、深刻な事件に巻き込まれやすい状況にあることが分かってきました。

今、子どもたちの世界に何が起きているのか。
東京・渋谷で子どもたちの見守り活動を行うNPOの代表橘ジュンさんです。

この日、橘さんが最初に声をかけたのは一見、普通に見える中学2年生の女の子でした。

家族との折り合いが悪く深夜1人で出歩くことが多いといいます。
橘さんは電話番号を渡し何かあったら連絡するよう伝えました。

この日、橘さんは家を出てきたという高校1年生の女子生徒と待ち合わせをしていました。
しかし、彼女の姿が見当たりません。
10分後。
待ち合わせとは違う場所で女子生徒が見つかりました。
知らない男性に連れ去られそうになっていたといいます。

橘さんのNPOには実際に危険な目に遭ったという子どもたちからの相談が相次いでいます。

夜とか暗いでしょ、そっち。
あんまりひと気ないしあれ、シャッター街だったよね。

電話やメールでの相談は多いときで、1か月に延べ1000件以上に上ります。
中でもスマートフォンを通してつながりを求めるうちにトラブルに巻き込まれるケースが増えているといいます。

この高校3年生の女子生徒もトラブルに巻き込まれた一人です。
日本海側の地方都市に住む女子生徒は母子家庭で育ちました。
15歳のころから1日や2日、短い家出を繰り返すようになっても仕事に追われていた母親は何も言わなかったといいます。

そのとき居場所を求めたのがスマートフォンのアプリでした。
女子生徒が利用したアプリ。
自分の近くにいる人が自動的に顔写真付きで表示され見ず知らずの人に簡単につながることができます。
女子生徒はアプリに頻繁に暇と書き込み見知らぬ人との会話を楽しんでいたといいます。
しかし、知り合った男性から付きまとわれ襲われそうになったことが何度もありました。
それでも自分の居場所はここにしかないといいます。

大人からは見えにくい子どもたちとどう向き合っていけばよいのか。
名古屋にあるこのNPOは行政や民間企業の支援の下スマートフォンを使ってネット上での子どもの見守りを行っています。

あっ、この子家出しそうですね。

子どもがよく利用するアプリを日常的にチェック。
犯罪に巻き込まれそうになる子どもたちを探し出し、直接メッセージをやり取りすることでトラブルを未然に防ごうとしています。

初めは街頭での声かけを行っていましたが、最近はスマートフォンを使った活動に力を入れています。

今夜のゲストは、ネットいじめや非行など、子どもの世界についての研究を続けていらっしゃいます、筑波大学教授、土井隆義さんです。
容疑者の逮捕から10日余りがたちましたけれども、今回の痛ましい事件の全貌がまだ明らかになってはいない、その中で、ずっと子どもたちを見つめてこられたお立場から、多くの人々は、深夜、あのようにうろうろしている子どもたちっていうのは、非行少年少女かなと思った方は、少なくなかったと思うんですけれども、実は、普通の子どもだった。
一体、何が子どもたちの世界に起きているのか。
背景として、何が、一番大きな変化だというふうに見てらっしゃいますか?
そうですね。
やっぱり普通の子っていうところが、ポイントだと思うんですよね。
私も親なので。
お子さん、いらっしゃるわけですよね。
子どもの親なので、やっぱり、ひと事ではなくて、とても身につまされるというんでしょうかね、切ない思いなんかもするんですけど、やっぱり、この普通の子ではないっていうところが、一般の方々にとっても、衝撃的なところだったんじゃないかなと思うんですよね。
普通の子が巻き込まれてしまった。
子どもたちが夜、なぜ、こうやって深夜、出ていくのか、しかも普通の子どもが。
そういう人たちが増加しているという、NPOなどの実感もあるわけですけれども、何が、どういう心もようになっているんでしょうか?
VTRにもあったように、子どもたちは、別に、親と衝突をして、出ていってるわけではないわけですよね。
むしろ、親子関係っていうのは、昔に比べると、今のほうが、一般論としていうと、よくなっているんですね。
子どもたちの、いわゆる幸福感も上がっているし、親と子で衝突をすることも今は減っているんですよね。
だから、いわゆる不良っぽい子が家に寄りつかなくて、出て行くわけではなくて、いわゆる普通の子が、するするっと、なんとなく、家を出て行ってしまうという感じになっているので、いわゆる親に対する反発から出ているわけではないというのが、昔と違っているところじゃないかなと思いますよね。
昔は、親と衝突して、反抗する形で小さな家出をするとか、そういうことはよく耳にするんですけれども、どういうふうにこう、変わっているんですか?むしろ深夜歩いてても、今のリポートを見ましても、若干、容認しているっていうか、スマホがあるからということも、要因としてあるようですけれども、わりと寛容な感じもするんですけれども。
今の世界っていうのは、価値観が多様化してきているので、親からしてみると、特定の価値観って押しつけられないんですよね。
だから、ある程度、子どもの意見も取り入れないといけないし、寛容になってきている面もあると思いますよね。
あともう一つ注目しないといけないと思うのは、親と子の間で、いわば、なんというんでしょうね、関係が、従来のような縦の関係ではなくて、横の関係に近い関係になってきていると思うんですね。
だから、それが親子の関係の幸福感にも上がってきていると思うんですよね。
でも、そうやって、よくなっているけれども、親は、そうした子どもの価値観を尊重する、だから容認する。
ただね、そうすると、フラットになっていると、確かにそれはよいことでもあるんですけれども、ここは二面性があって、実は、縦の関係に近いと、確かに親っていうのは、子どもから見ると、うっとうしい存在でもあったわけですが、同時に、一方的に依存できる相手でもあったんですよ。
しかし、親子の関係がフラットになってくると、一方的に依存できなくなってきますよね。
なので、親から認めてもらっている、承認に対する、なんて言うんでしょうね、安心感が、昔に比べると下がっているんですね。
いわゆる承認の質的な劣化っていうんでしょうかね、重さが、昔よりも今は軽くなってきているという面があると思うんですよね。
そうすると、親から見てもらっていても、それだけでは十分ではない。
いわば、承認の質的な劣化を、いってみれば量でカバーしないといけなくなってくるので、その量を求めるために、例えば夜の街に出て、友達と出会ったりとかして、そこで、いろいろ承認を得ようとしているんだと思うんですよね。
ただ、誤解をしていただきたくないのは、別に、やみくもに誰かと出会っているわけではなくて、やっぱり欲しいのは承認なので、自分となるべく、趣味とか価値観ですね、こういったものが似通った人どうしで集まって、そこでお互いに認め合う、そういう場をたぶん、求めている。
それは、いわゆる学校のクラスとか、そういった制度とは別のところに、自分の価値観とか趣味、そういうものを共有し合っている仲間なので、結局学校の中だけで終わらないですからね。
結局、だから夜、放課後とか、夜になっても、そういう相手を求めてつながるために、家を出ていくと。
そういうことが起きてきている。
でも中には1人でさまよっている子もいましたよね?
いますね。
後半、ありましたよね。
基本的にはだから、欲しいのはやっぱり、承認だと思うんですよ。
ただ、学校とか、リアルな人間関係の中で、やっぱり承認が得られにくい子どもが一方では、いるわけですよね。
今、人間関係がとても流動化してきているので、流動性が高まるということは、自由になってきているんですが、自由になったということは、裏を返すと、それだけ言ってみれば不安定な関係でもあるわけですよね。
そうすると、結構ですね、社交的なことが得意な子っていうのは、結構、友達作りやすいんですけど、やっぱり中には、そういったことが苦手なお子さんもいますよね。
そうすると、学校の中で、友達ができない。
そういうお子さんは別の所に、例えばネットの中とか、別の所に、そういう相手を求めて、そこで承認を得たい、そういうお子さんがいる一方でいるのも、また事実ですよね。
人間関係が趣味で固まっても、しかしそれだけでは安心できない部分というのも、やっぱりあるんですかね。
もしかしたら、その仲間から、仲間外れにされるかもしれないという、そういう不安感というのも、あるっていうふうに聞くんですけれども。
人間関係が流動性が高まってくるということは、僕が、私が、そのつきあう相手を選ぶのは自由だということですよね。
裏を返すと、相手が選ぶのは自由なので、僕が相手を選ぶ自由は、相手が僕を選んでくれないかもしれない。
このリスクですよね。
不安感と併存しているので、そうすると、自由度が高まった分だけ、人間関係に対する、友人関係に対する満足度は上がっていくんですけど、裏っ側では、本当に自分って、友達できるんだろうかという、いってみれば不安感ですよね。
不安感が高まってくる。
今回の事件では、そうやって、深夜いた子どもたちに、あまり声をかける人がいなかったっていうこともあるんですけれども、そういう社会、その中でどうやって悲劇をこれから防いでいくのか?
結局ね、同じような価値観で固まっているのは、大人も同じなんですよ。
そうすると、大人たちも、それぞれがグループになってしまって、同じ地域社会にいながら、違った住み分けを行っているんですね。
そういう隙間に落ちたお子さんに、目が届かないんですね。
だから今、なんていうんでしょうね、心理的な距離を、むしろ、縮めていかなければいけないと思うんですよね。
そのためには、大人たちがまず関係を閉じない、いろんな人とつきあっていく。
それを子どもたちも、学んでいくと思うんですよね。
だから、子どもに関係を開けという前に、まず、大人たち自身が、関係を開いていかないといけない。
そして、そういう心理的な距離を縮めていくことによって、子どもたちの心理的な距離も縮まっていくんじゃないかなと思いますよね。
そういう子どもを見たら、やっぱり思わず声をかけられるように、心理的になっていくということですね。
この夏あの生き物が動き出す
イカ大王様だ〜!2015/09/03(木) 01:00〜01:27
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「子どもたちの世界に何が〜大阪中1遺体遺棄事件〜」[字][再]

大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人が殺害された事件。事件は2人が夜間の街をはいかいする中で起きた。子どもたちにいま何が起きているのか。事件の最新情報と共に伝える

詳細情報
番組内容
【ゲスト】筑波大学大学院人文社会学研究科教授…土井隆義,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】筑波大学大学院人文社会学研究科教授…土井隆義,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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