(2人)あ〜うっかりうっかり!陽気に踊る青年。
この夏世界一の座についたトップスイマーです。
競泳の…ロシアで行われた世界選手権で金メダルを獲得。
来年のリオデジャネイロ・オリンピックへの切符をつかみました。
気持ちで取りにいった金メダルだと思います。
磨いてきたのは強じんなフィジカルを生かした…リスクを恐れない積極的な泳ぎで勝利を目指します。
その素顔は飾らない21歳。
大舞台に挑む時圧倒的な勝負強さを発揮します。
負ける怖さは…ないですね。
追いかけてきたのは同い年の天才スイマー。
共に世界の舞台で戦いたい。
その思いが背中を押してきました。
目指すはオリンピックの金メダル。
しかし代表の座を懸けた大会前に陥ったまさかのスランプ。
大逆転の金メダルの裏に何があったのか。
世界王者瀬戸大也。
その強さと素顔に迫ります。
今年3月。
標高1,800mの町メキシコ・サンルイスポトシ。
ヘイセニョール!世界選手権に向けた高地合宿。
リラックスした表情を見せていました。
朝9時午前の練習をスタート。
…と思いきや。
どっちでもいいよ。
屋外のプールで泳ぐと言いだしました。
外?確かに気温は昨日ほどじゃない。
型にはまった練習は好きではないと言う瀬戸選手。
丸2時間悠々と泳ぎました。
よ〜い。
(ホイッスル)そしてようやく本格的な練習。
酸素の薄い環境でスタミナを強化するためのタイムトライアルです。
4分1秒42。
コーチが設定したタイムに届きませんでした。
それでも。
エヘヘ。
どんな時でもマイペースです。
瀬戸選手が戦う400m個人メドレー。
バタフライ。
背泳ぎ。
平泳ぎ。
そして自由形で競われます。
最も得意とするのはバタフライ。
最初のバタフライでリードを奪い逃げきる。
それが瀬戸選手の必勝パターンです。
そのバタフライには一つの特徴があります。
息継ぎの回数です。
2回に1回しか顔を上げないのです。
400m個人メドレーのほとんどの選手は1かきごとに息継ぎを行います。
回数を減らす事で得られるメリットは大きな推進力。
息継ぎの時上体は起き上がり水の抵抗を多く受けます。
その抵抗を減らす事ができるのです。
スピードは得られるものの肉体に大きな負担を強いるこの泳ぎ方。
支えるのが瀬戸選手の豊富な肺活量。
あ〜無理だ。
およそ6,000cc。
成人男性の2倍近い値です。
いった。
…って感じです。
更にストロークと呼ばれる水のかき方にも特徴があります。
指摘したのは日本水泳連盟で泳法分析を担当する…まずは一般的なストローク。
水中に腕を入れたあと肘を曲げ力を入れやすい形を作ってから水をかきます。
一方の瀬戸選手。
大きく腕を伸ばして水をつかみ一気にかいていくのです。
比較すると瀬戸選手のストロークは多くの水をかく事ができています。
これも大きな推進力につながります。
少ない息継ぎと多くの水をかくストローク。
それが瀬戸選手が世界と勝負するバタフライです。
そして瀬戸選手最大の武器は大舞台での勝負強さ。
世界を驚かせたのが2年前の世界選手権でした。
決勝に進んだ瀬戸選手の自己ベストは…勝つ事は難しいと考えられていました。
しかし…得意のバタフライで序盤から果敢に攻めます。
中盤でも粘りを見せトップに食らいつきます。
そして終盤に見せたのは驚異のラストスパート。
自己ベストを1秒半縮めての金メダルでした。
自らの想像を超える泳ぎで起こした番狂わせ。
大舞台で実力以上の泳ぎを見せる瀬戸選手。
1つのデータがあります。
これまでに泳いだ世界大会の決勝レースは9回。
そのうち実に6回で自己ベストを更新しているのです。
コーチも驚く瀬戸選手のメンタル。
スポーツ心理学のテストで分析を試みました。
「失敗を恐れずに決断できるか」など試合での心理状態に関する52問。
JOC日本オリンピック委員会がオリンピックに出場したアスリートに対して行ってきたテストです。
(取材者)早いですね。
5分で終わった。
分析をしたのは…テストの結果を12の項目に分けて数値化しました。
これがロンドンオリンピックに出場した選手の平均データ。
それに対して瀬戸選手は…。
ほとんどの項目で平均を大きく上回る値が出ました。
中でも村上先生が注目したのがリラックス能力の高さ。
そして勝利意欲の低さです。
大舞台でもふだんどおりリラックスできている事。
そして結果にこだわり過ぎない傾向が勝負強さを生み出していたのです。
日本代表チームの平井伯昌監督。
瀬戸選手のメンタルはあるアスリートに通じるものがあると言います。
全くおんなじではないんですけどそういうようなのをちょっと感じますよね。
1年後に迫ったリオデジャネイロ。
金メダルを目指す瀬戸選手の最大のライバルは同い年のアスリート。
2人の出会いは9歳の時の全国大会。
その時の衝撃を瀬戸選手は今でも忘れられないと言います。
大ちゃん頑張れ〜。
瀬戸選手の反対から泳いできたのが萩野選手。
13秒差をつけられての完敗でした。
(場内アナウンス)「優勝萩野君」。
瀬戸選手の胸に一つの思いが宿りました。
瀬戸選手は萩野選手の強さを追いかけます。
大会では優勝が狙えるバタフライではなく萩野選手と競える個人メドレーをあえて選ぶようになったのです。
大也いけ〜!萩野選手に負けないスイマーになる。
その思いが瀬戸選手を世界レベルへと導きました。
そこも感覚になっちゃうんですけど。
(実況)さあ萩野はどうだ?萩野はどうだ?萩野公介銅メダル獲得!高校3年生でオリンピックの舞台に立った萩野選手。
その舞台に瀬戸選手は立てませんでした。
常に頭にあるという萩野選手の存在。
バタフライで勝負する瀬戸選手とオールラウンダーの萩野選手。
感覚で泳ぐ瀬戸選手と理論派の萩野選手。
あの出会いから11年。
今度こそ最高の舞台で勝負する。
はいじゃあ何番いく?5番。
5番頑張れ。
お〜っ入った入った!はい次何番いく?5番。
5番。
また5番?おっ入った。
すごい。
いったいったいった。
お〜っ!お〜っ!
(拍手)やった。
思い出したので。
やってみこれ。
めっちゃうまいから。
だろ?世界選手権まで3か月。
ライバル萩野選手との戦いに向けてある課題に取り組んでいました。
それは背泳ぎのバタ足。
直せずにいた癖がありました。
瀬戸選手がチャリこぎキックというバタ足。
足を上に動かす時自転車をこぐように大きく曲がってしまいます。
正しいバタ足はこちら。
足の付け根から動かし全体がしなるようなキックです。
膝が曲がったバタ足は水の抵抗が大きくなるためスピードが落ちてしまいます。
これまでバタフライなど長所を伸ばす方向で練習してきた瀬戸選手。
オールラウンダーの萩野選手に背泳ぎで逆転されるレースが相次いでいたのです。
染みついた癖を矯正するのは簡単ではありません。
キックのメニューだけで一日1,000m以上。
地道な練習に毎日のように向き合いました。
梅原コーチは瀬戸選手の変化を感じていました。
テンポテンポテンポテンポテンポ〜!弱点を克服し世界選手権で萩野選手に勝つ。
はあ〜。
気持ちを高めていたそのやさきの事でした。
(シャッター音)フランスで合宿に臨んでいた萩野選手が緊急帰国。
練習に向かう途中に自転車で転倒し右肘を骨折したのです。
瀬戸選手が追いかけてきた萩野選手。
萩野選手の欠場で金メダルの期待は瀬戸選手に集中しました。
大会出発の1週間前に行われた追い込みの練習。
5秒前。
いくよ!よ〜いスタート!泳ぎにいつもの迫力がありません。
(梅原)24秒5。
目標タイムから大きく遅れてしまいます。
何か…この日瀬戸選手は練習を途中で切り上げました。
目標としてきた萩野選手の欠場。
そして高まる金メダルへの期待。
なんとか前向きに捉えようと努めていました。
迎えた世界選手権。
瀬戸選手は400m個人メドレーを含む3種目にエントリーしました。
最初の種目は200mバタフライ。
世界ランキングは1位。
1つ目の金メダルを狙っていました。
(スタートの合図の音)
(実況)勝負のレーススタートしました。
しかし…。
持ち味の攻めの泳ぎが見られません。
(実況)そして左から2人目日本の瀬戸。
3人目が坂井。
6位に沈みます。
(実況)1分54秒24。
坂井は4位で瀬戸は6位!そして同じ日に行われた…
(スタートの合図の音)
(実況)手前から3人目瀬戸大也の長い一日もこのレースで終わりです。
ここでも得意のバタフライで出遅れます。
決勝に進む事すらできませんでした。
う〜ん…まさかの2連敗。
瀬戸選手に何が起きていたのか。
400m個人メドレーまで3日。
どう立て直すのか。
梅原コーチが行ったのはバタフライの基礎練習。
息継ぎのタイミングそして水のつかみ方。
動きの一つ一つを確認していったのです。
本番直前に取り組んだ異例の基礎練習。
瀬戸選手には戸惑いもあったといいます。
基礎練習の指示を出した梅原コーチ。
自分の泳ぎを見失っていた瀬戸選手に本来の泳ぎを取り戻してほしいと考えていたのです。
スタート台に立った瀬戸選手。
心は定まっていました。
(スタートの合図の音)
(実況)勝負のレースが始まりました。
ここまで出遅れていたバタフライ。
リードを奪います。
リスクを恐れずに突っ込む瀬戸選手本来の泳ぎです。
バタ足の改善に取り組んできた背泳ぎ。
(実況)瀬戸は前半から勝負を懸けてきたのか!?2位で後半の平泳ぎへ。
瀬戸選手独特の感覚もよみがえっていました。
そして最後の自由形。
大舞台で俺は勝つ。
(実況)瀬戸大也!さあ残りは25m切っている!残りは15mに入りそうだ!
(解説)いやこれはもう間違いないでしょ!
(実況)瀬戸がいく!瀬戸がいく!世界水泳日本初の連覇へ向けて…諦めずにつかみ取りました!瀬戸大也歴史に残る金メダル!自己ベストを更新しての金メダル。
無心で泳ぎ切った400mでした。
かつてない重圧を乗り越えてつかんだ金メダルでした。
世界選手権の1週間後。
オリンピックに向けて早くも動き出した瀬戸選手。
と思いきや…。
シンクロで使う鼻栓で遊び始めました。
自分らしさを忘れずに前へ。
いい意味で言うと…最高のライバルと目指す最高の大舞台。
瀬戸大也21歳。
見つめる先は来年のリオデジャネイロ。
(テーマ音楽)2015/09/03(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「大舞台で俺は勝つ 競泳 瀬戸大也」[字]
8月の世界選手権で金メダルを獲得した競泳・瀬戸大也選手。持ち味は常識を覆す攻めの泳ぎ。最新の科学で肉体とメンタルの強さの秘密に迫り、リオへの挑戦の日々を追った。
詳細情報
番組内容
世界選手権、400m個人メドレーで2大会連続の金メダルを獲得した瀬戸選手。強さの秘密は、強じんなフィジカルをいかした豪快な泳ぎと「大舞台ほど楽しめる」というメンタル。直前の不調を跳ね返して五輪代表内定を決めた。常に視野に入れているのがライバル・萩野の存在。「地力を上げなくては五輪では勝てない」。始めたのは「バタ足」の改善。さらなる高みを目指す日々に密着。
出演者
【語り】萩原聖人
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – マラソン・陸上・水泳
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