[東京 2日 ロイター] - 自民党の福田達夫衆議院議員は人口減のなかで日本が今のポジションを維持できるかは、ぎりぎりの状況だとし、7割の家計が依存する中小企業の意識の引き上げが必要だと指摘した。地球規模で資源の限界が迫るなか、「稼ぐ」というフローの価値だけでなく日本人なりの豊かさを発信するなど、21世紀型の日本へ向け異相の議論が必要になるとの見方を示した。
ー安倍政権誕生で、日本に対する世界の見方が変わってきた。ここから未来へ向け、何を発信していくべきか
「ネーションステート(国民国家)という枠組みが、民族、宗教、インターネット、国際経済化、パンデミック、異常気象などのチャレンジを受け始めて20年経った。近代という欧州から始まった流れが世界を席巻した局面から、次はどこに向かうのかという画期の時代」
「資源は有限だ。2050年に世界の人口は90億人になるといわれるが、グローブシステムでは90億人分以上の穀物は生産できない」
「SNA(国民経済計算)ベースで富を計ることが正しいのか。そうしたフローの部分で幸せを計るという度量衡が正しいのかということを議論しなければいけない」
「フローは飯を食うためのものであり、豊かさは実はストックにある。限られたお茶碗の中に宇宙を見るという尺度を持つ日本人なりの豊かさ。そういう価値を発信する時期に来ている」
「安倍政権の発足で、間違いなく雰囲気は好転した。しかしこれはフローの変化にすぎず、本当の意味で日本が21世紀型のバージョンになるにはまったく異相の議論が必要になるのではないか」
ーフローの議論も大事
「太平洋の小さな国から世界第2の経済大国になったというのが、多くの近代日本人にとってのアイデンティティー。新しい議論をする前に自分たちは21世紀でも普通に稼げるという実感が必要だ」
「中小企業政策をやっているが、この10年で中小企業は100万社なくなっている。人口減少より早く経営者の数は減っているし、企業の数も減っている」
「新しい稼ぎ手が増えないなかで、危機感も高い。日本が今のポジションあたりで生き残るのに間に合うかどうかは正直言うとぎりぎり。新しいシステムが5年くらいで稼動して10年後に回っているという構図にしなければいけない」
─そのための政治の役割
「ソフト面のインフラ提供。1つは大企業や都市部と異なる地域の常識水準の引き上げだ。地方の企業はグローバルコンペティションの中にいるんだという認識が希薄。常識水準、当たり前の水準を引き上げることが原点」
「もう1つ、稼げない構造がある。市場原理ではなく、優位的地位を濫用して中小企業に価格転嫁をさせないという現実がある。現場を歩くと、不誠実な事例がかなり散見されるが、エビデンスがなく、公正取引委員会も取り上げられない。この状況改善は政治にしかできない」
「大きなところ(企業)とともに伸びていくという傾斜生産時代のやり方は、これだけ価値観が多様化し、世界的に何で稼げるか誰もわからないなかでは危険極まりない。この国の70%の家計が依存する中小企業をはじめ個別への目配りが必要な時代」
-アベノミクスの評価
「効果は間違いなくあった。安倍首相がジャパン イズ バックという一言で表現したが、世界が日本を見る目が180度変わった。それだけの転換ができただけでも歴史的成果だ」
「金融政策としての意味合いはあった。ただ、お金が余っている状況なので、それが漏れ出してきたときに吸収できる市場規模でないといけない。そこまでの規模は育っていない」
「財政政策については、政治を安定させるという意味でも必要だったと思う。第1の矢も第2の矢もここまでは正しい。ただ、第3の矢はもともと期待してない。経済界がそんなの俺たちにやらせろというべきだ」
「最初の選挙の時から第4の矢は財政再建だといってきた。矢を入れるうつぼを誰かに見えるところに常に置いておく。いつ射るかは3本の矢があたってから。しかし絶対忘れてはいけない」
-外交・安保について
「日本は近代史の流れの中で西太平洋のザ・パワー(力を持つ国)になった。国際関係学でいえば、冷戦構造後のわれわれG7は旧体制側で、中国やロシアはチャレンジャー。勃興するチャレンジャーにどう対応していくのか、どこに線を引くのかという歴史的段階」
「その線を引いた上で、どういう共存関係を作りましょうかと。日中関係は戦略的互恵関係という第四の政治文書(2008年の日中共同声明)の文脈の中にある。環境問題、食糧問題、高齢化問題、社会保障問題を抱える中国に対し、われわれはソリューションを持っており、ウィンウィンの関係を作ることができる」
「安倍首相の平和安全法制というのは基本的にサポートできる。まだまだ議論すべき点はあると思うが」
(石田仁志 編集:橋本俊樹)
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