漁が解禁され、富山県の港で初競りが行われました。
突然、白紙撤回された2020年東京オリンピックエンブレム。
エンブレムの選考に関わった中心人物が新たな事実を語りました。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
オリンピックの公式エンブレムは大会の顔、シンボルです。
ご覧いただいているのは歴代大会のシンボル。
大会の象徴として国内外で掲げられ記念のグッズや広告にも使用され大会の重要な収入源の一つになります。
IOC・国際オリンピック委員会の承認を得た、2020年の東京オリンピックのエンブレムが発表されて1か月余り。
組織委員会はこのエンブレムの白紙撤回を余儀なくされました。
国立競技場の整備計画の白紙撤回に次ぐ、こちらも一からのやり直しとなります。
日本は2020年の大会をつつがなく開催することができるのか。
組織委員会の大会運営能力を問う不安の声が上がっています。
国の威信を懸けて開催されるこの大会。
準備の初動で繰り返される大きなつまずき。
責任の所在をはっきりさせ大会運営の信頼をどうやって回復していくのか問われる状況となっています。
今回のエンブレムを巡るこの異常な状況。
佐野研二郎氏のデザインが発表された直後からインターネット上を中心に模倣ではないかという声が高まりました。
組織委員会、そして佐野氏は模倣ではないということを繰り返してきました。
しかし佐野氏が提出したエンブレムの使用イメージに使った画像が他人のブログから無断で転用されたことが発覚しおととい白紙撤回に至りました。
審査、模倣かどうかのチェックさらにデザインの最終決定誰がどのように行ったのか。
審査過程そのものが不透明ですがそれに加えて審査員の代表すらも具体的に知らされないまま決定したデザインが変更されていたことが取材を通して明らかになりました。
エンブレムの審査委員会の代表を務めた永井一正さんです。
白紙撤回後初めて取材に応じました。
札幌オリンピックのエンブレムを手がけた日本を代表するデザイナーの一人です。
佐野氏のエンブレムはどのように選ばれたのか。
去年11月、大会組織委員会の依頼を受けた8人の著名なデザイナーなどが審査に当たりました。
テーブルに並べられているのは制作者の名前が伏せられた応募作品104点。
審査委員が投票によって2日かけて絞り込んでいきました。
そして選ばれたのがアルファベットのTの右下に赤い丸を施した佐野氏のデザインでした。
しかしことし7月に公表されたものとは丸の位置やTのデザインが異なっています。
永井さんは審査委員会の代表として、佐野氏と共にエンブレムを公表しました。
ところが、この1週間前までデザインの変更内容は知らされていなかったといいます。
デザインの修正内容をなぜ審査委員に伝えなかったのか。
修正を担ったのは組織委員会にあるマーケティング局です。
この局の担当者と佐野氏が直接やり取りして修正作業を進めていきました。
佐野氏のデザインを選んだ審査委員には修正することは伝えたものの詳しい内容を知らせませんでした。
組織委員会はNHKの取材に対し外部への流出のおそれがあるため極めて高い秘匿性の中で修正を行ったとしています。
修正は去年の12月から始まりました。
原案に対して国際オリンピック委員会から似ている商標が複数あるという指摘が出たためでした。
ことし2月、最初の修正案が組織委員会の森喜朗会長と武藤敏郎事務総長に示されました。
このとき両者ともに躍動感がなくなったと指摘し再び修正されることになりました。
そして7月に公表されたのがこのデザインでした。
デザインが修正されたことを知り異論を唱えた審査委員もいたといいます。
反対の理由はデザインに込められたコンセプトまで変更されたのではないかという点でした。
こちらは1964年に行われた東京オリンピックのエンブレム。
佐野氏は、このデザインからイメージを膨らませたと説明していました。
2つの作品を重ねTの文字の一部に丸みを持たせ大きな円と組み合わせることでかつての東京オリンピックを連想できる作品になったとしていました。
しかし審査委員が選んだ原案には東京オリンピックを思わせる大きな円はありません。
このため、一部の審査委員は修正後に示されたデザインは原案とコンセプトが異なるのではないかとして異論を唱えたのです。
原案が修正されていたことに対しエンブレムを応募し落選したデザイナーからは批判が上がっています。
国内外の広告賞で数多くの受賞経験がある古平正義さんです。
佐野氏のデザインは修正前と後では見た目も大きく違い別物だと感じています。
さらに今回の問題の背景にはデザイン業界特有の体質があると指摘する人もいます。
およそ50人のデザイナーを抱える会社の代表、津久井将信さん。
疑問を感じているのが今回のエンブレムの応募資格です。
北京オリンピックでは誰でも応募できこのエンブレムは1万点以上の中から選ばれました。
一方、今回の応募作品は104点。
応募できたのは、組織委員会が指定したコンテストで2回以上受賞したデザイナーに限られていたからです。
今夜のゲストは、元陸上選手で、アテネ、そして北京オリンピックに出場されました為末大さん、そして、デザインの社会学がご専門でいらっしゃいます、東海大学准教授の加島卓さんです。
まず加島さん、このデザインを巡る、この騒動なんですけれども、今、選考委員の代表を務めてらっしゃいました、永井さんの話を聞きますと、最初に出されたデザインは、国際商標に抵触するおそれがあったので、変更をされた、しかしその過程は全く知らなかったと。
この新しい事実、どう受け止めてらっしゃいますか?
私たちは順番として、最初に最終案を知ってから、そのいろいろな段階を経て、最初の原案を知ったという状態になっています。
一般的に今までデザインが選ばれるときは、最終案だけを見ていたんですけれども、今回に関していえば、その選考プロセスも可視化されるようになったというところは、いろいろな批判があるところだと思いますけれども、評価できるところでもあると思います。
最終発表のとき、こちらですけれども、1964年の東京オリンピックの、いわばデザインを意識して、作られたものであるという説明がされた。
しかし、原案を見てみると、この大きな丸の、そのコンセプトというのはなかった、何かこう、デザインとデザインを比べてみると、なんか統一性がないようにも見えるんですけれども。
今回の件で私たちは、たぶんデザインとコンセプトの関係について、考えさせられるようになったんだと思います。
こちらの場合は、模倣の疑いがかけられたあとに、原作者の方が、ここのTと丸を組み合わせたものであるという説明をして、模倣とは違う見え方が可能であるということを説明されてました。
それに対して、先月の28日にこちらの案が分かったわけですけれども、これに対しては、これに対して、そのコンセプトが与えられている状態ではないので、私たちが知らない状態になりますので、これをどのように見ていいのかが、ちょっとまだ分からない状態で、視覚的な印象論だけがちょっと加速してしまったところがあるのかなというふうに思います。
ずっと模倣か否かということで見てきて、ところが、そのコンセプトというものの理解というのは、十分されてこなかった、つまり、コンセプトを通してデザインを見た場合、そして、模倣かどうかということで、デザインを見る場合と変わってくるんでしょうか?
ここは非常におもしろいところだと思うんですけれども、一つのデザインのコンセプトが変われば、見え方が変わってしまうということを、今回、私たちは経験したんだと思います。
コンセプトがはっきり説明されると見え方が変わってくるんですか?
そうですね。
最初にその模倣と言われたものに対して、違う説明のしかたが可能かもしれないという形で、Tと○。
そのあとは、どちらが模倣と思うのか、もっと設計されたデザインだと思うのか、説明のもっともらしさがせめぎ合った状態になっている。
そういう意味で、コンセプトが変われば、デザインの見え方も変わるということが、今回、われわれ経験したことだと思います。
為末さんは、国立競技場、これも白紙撤回されたプロジェクトなんですけれども、その検証委員会のメンバーをされている中で、そういった立場から、今回の問題、どう見ていますか?
国立競技場も、今回、ロゴのことですけれども、両方、組織委員会も恐らく関わっていることだと思うんですが、一番僕が感じるのは、オリンピック自体のコンセプトですね、なんのためにオリンピックをやるんだっけというところが、かっちり決まって、それをもとに、こんな国立競技場を造ってくださいね、こんなロゴにしてくださいね。
市民の側から見ると、出てくるものを通して見ていくと、あっ、そうそう、こういうオリンピックに俺たち、向かっていくんだっていうのが、見えてくるはずなんですけれども、それらが見えてないっていうのがある気がするんですね。
ですので、一番中心にあるはずのオリンピック自体のコンセプトっていうのは、もっと伝えるべきでしょうし、市民の側に理解するように努めるべきなんじゃないかなというのを感じますね。
そして、今回の特徴はネットによって、批判がどんどん高まっていった。
こういうプロジェクトが批判にさらされたときの対応というのはどうだったんでしょうね。
恐らくインターネット上にある言論というか、ことばの空間っていうのは、少し独特の空間がある気がするんですね。
いわゆるインターネット上の作法というか、ルールみたいなものがあると思うんですけど、これがどれぐらい組織委員会の方で、理解している方がいるのかなというのを思うわけですね。
ですので、こういうのって、年齢で分けていいのか分からないですけれども、やはり10代、20代、30代の方、デジタルネイティブの方が使っているような使い方と違う気がするんで、これをもう少し理解する人たちが今後入ってくるというのが、すごく重要なんじゃないかなというふうに思いますね。
専門家の方々、デザイナーの方々から見て、模倣かどうか、一般の市民が、ネット検索で見ながら、模倣かどうかっていう議論、このへんのギャップですね、一般市民と専門家のギャップ、ネット時代、どう見えてますか?
そうですね、専門性に関しては、今まで専門家の中で評価できたものが、インターネットの登場によって、専門家以外の方でも専門性についてコメントできる状態になったので、やはり技術が変わることによって、何をおもしろがるか、および何を模倣だと判定するのかのその関わり方っていうのがまず変わってきたのだと思います。
業界も変わってきていますか?
そうですね。
やっぱりそれぞれのジャンルに評価のしかたというものが、あると思うんですけれども、インターネットが登場したことによって、ジャンルを越えておもしろがってみたり、ジャンルを超えて模倣を疑うようなことも可能になったというふうにいえると思います。
今回のこのエンブレムの問題を通して、ネット時代、デザインの批評にさらされやすくなったということが浮き彫りになりました。
デザイン業界に広がる波紋をご覧ください。
今回、インターネットでは佐野氏のデザインとほかのデザインとを比較して似ているという指摘が相次ぎました。
画像検索で似たものを探し出すことが容易になりデザインに対して厳しい目が向けられるようになっているのです。
しかし、デザインの世界ではネット上の画像を参考にすることは少なくないといいます。
衣類の生地のデザインを手がける女性です。
ネットで話題になっているデザインなどを見つけると資料として収集。
それを参考にして著作権を守りながら自分なりのデザインを作っていくといいます。
企業の要望に応じて仕事をするデザイン業界ではこうした作業は珍しくないといいます。
こうした中デザインの類似性を自主的に厳しくチェックする動きも広がっています。
商品のロゴや、ホームページの制作などを手がけるデザイン会社です。
ネット上にはデザインに使用できる画像を販売するサイトがあります。
この会社では、利用する際に使用できる地域や期間などを細かく確認しています。
出来上がったデザインは国内の商標と重なっていないか特許庁のデータベースで照合。
さらに、著作権に詳しい専門家に依頼し海外に似たようなデザインがないかもチェックしています。
日本を代表するデザイナーの一人松永真さんです。
50年以上にわたり大企業のロゴや製品のデザインを数多く手がけてきました。
今回の問題を受け松永さんは創作活動に携わる人は改めて、みずからの襟を正さなければならないと考えています。
襟を正しつつ、伸び伸びとしたデザインができるかどうか、問われているわけですよね。
そうですね。
あとのばあいオリジナリティーや責任の場所というのを確定することができると思うんですけれども。
本人には。
デザインの場合には、クライアントありきで、ニーズに対して、達成できているかというところがありますので、やはり責任の取り方は、ちょっと違うところもあるかなと思います。
責任の所在、どう見ますか、今回の問題の。
プロジェクトマネジメントしてるどなたかというのを1人作るのは大事だなと思うので、もう一つ、クライアントの話でいくと、国民がクライアントで、これを組織委員会が受けて、組織委員会がこのロゴのクライアントって、ちょっと難しい構図になっていると思うんですが、この国民の役割、クライアントの期待に応えるっていう構図を作るのが大事なんじゃないかと思うんですよね。
そうですよね。
やり直して、今度こそ、国民の期待に応えられるエンブレムができるかどうか、どういうやり方が大事だと思われますか?
そうですね、今回の件を踏まえて、私たちはデザインの選び方っていうのを、対立図式で捉えるのではなくて、増えたというふうに考えるほうが、よいかなと、私は考えています。
選択肢が増えた?
選択肢が増えたということです。
つまり専門家の方が、今までの蓄積された知見を使って、洗練されたデザインを作っていく場合もあれば、いわゆる市民参加によって、みんなで民主的に選ばれたものを、デザインとして選択していくという方法もあります。
一般的にこれ専門家対市民参加という対立図式でとらえるのではなくて、デザインの選び方に対して今までは専門家しか私たちは知りませんでしたが、市民参加の在り方もある中で、じゃあ、今回、どっちのやり方が、私たちがおもしろいものを選べるのかという考えていくきっかけにしていけばいいかなと思います。
一市民として、どういう選び方がいいと思いますか?
国民投票で選べたりすると、楽しいは楽しいんですけど、でも、仮にフィギュアスケーターの代表を国民投票で選ぶと、本当にいい選手が選べるかなという気がするんです。
そういう意味では、やはり専門家の目っていうのも重要でしょうし、あとは2070年ぐらいまで、50年耐えるロゴと競技場にすべきだと思うので、そんな時間軸で、やっぱり一般のわれわれが見えるかなっていう思いもあるので、おっしゃっているようにこの合わせるのは自由だと思うんですが、やはり専門家の方たちの時間軸を越えた見方っていうのは、すごく重要なんじゃないかなという気がします。
応募はもっと幅広くという方向で進んでいるそうですけどね。
ですから、いろんな方、名前を伏せてね、難しいのは、名前を伏せると、その方がロゴに対してコンセプトをしゃべるのに出てきたときに、誰のロゴか分かっちゃうというところが、これはどう匿名性を守るのかということが難しいなという気がしますね。
これだけその模倣かどうかの議論が巻き起こった中で、新しいロゴを決めていくうえで、作り手、そして受け手に求められることはなんですか?
そうですね、やはり今回の件を踏まえて、デザイナーは、市民に対してより説明責任が求められるということが分かったと思います。
それに対して、市民の方々も、デザイナーが、一体どのような説明をしてるのかっていうことにも、耳を澄ましていくことによって、どこまでを専門性とするのかということをみんなで決めていくってことが、とても大事だと思いますね。
2015/09/03(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「東京五輪エンブレム“使用中止”の衝撃」[字]
佐野研二郎氏がデザインした2020年東京オリンピックのエンブレムが使用中止となった問題。同氏の他の作品についても類似がネットなどで指摘されている。背景には何が?
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東海大学准教授…加島卓,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東海大学准教授…加島卓,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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