[PR]

 名古屋空襲を題材に、女性向けの隔週刊漫画誌「BE・LOVE」(講談社)で連載されてきた漫画「あとかたの街」が最終回を迎えた。名古屋出身のおざわゆきさん(50)が、母(83)の体験をもとに描いた。おざわさんは「戦争が生活に入ってくる感覚を描きたかった。戦争体験者の声を伝える大事な機会になった」と話す。

 連載は、2013年末に始まり、1日発売の第35話で終わった。おざわさんの母をモデルにした12歳の少女あいが主人公。空腹に苦しみ、家族や友人を思い、空襲におびえる――。戦争末期の日常生活や人間模様を丹念に描いた。

 12年に父(90)のシベリア抑留体験を描いた作品を発表した後、母から「私のこともいつか描いて」と言われて構想した。母が住んでいた名古屋・矢場町(現在の中区)から鶴舞公園(同昭和区)まで、空襲時に逃げた道のりを一緒に歩き、話を聞きながら追体験した。「戦争と平和の資料館ピースあいち」(名古屋市名東区)にも通い、語り部から話を聞き、資料を探し集めた。

 空襲前の町並みなどの写真があまり残っておらず、断片的な資料から、漫画で表現することに苦労した。一方で、米軍の資料が充実していて驚いた。「橋の材質を知りたい」とピースあいちに問い合わせた時だ。米軍の地図には木橋や石橋など細かく記されていて、驚いた。攻撃対象を調べ尽くした情報収集力のエピソードは、漫画にも反映した。