中国の習近平(シーチンピン)国家主席が、3日の軍事パレードでの演説で、中国軍約230万人の兵力を30万人減らす考えを表明した。

 だが、これを単純に「軍縮」と歓迎することはできない。

 陸軍から海軍、空軍、ミサイル部隊へという中国軍の「質」の転換、それに伴う兵器の高度化と表裏一体の動きだからだ。

 中国国防省は、軍の方針について「完全に防御が目的」「永遠に覇権を求めず、永遠に拡張しない」と説明し、平和への貢献を強調している。

 だが、軍事パレードによる力の誇示と、力任せの海洋進出を見るにつけ、説得力を欠く。

 30万人の兵力削減は、主に陸軍で行われるとみられる。今年発表された国防白書は「陸軍を重んじ、海軍を軽んじる伝統的な考え方を打ち破る」と明記した。80年代から続く中国軍の発展過程に沿うものでもある。

 パレードに登場した各種兵器からも、その方向性は明確だ。

 短距離から北米大陸に届く長距離まで、射程が各種そろったミサイル群が披露された。中国初の空母「遼寧」の艦載機が編隊を組んで天安門上空を飛ぶ。航続距離5千キロを超す早期警戒機も姿を見せた。

 中国は核ミサイルを着々と増やし、宇宙空間での攻撃テストも行った。軍事力の実態は相変わらず不透明だが、防御目的を超えているのは明らかだ。

 軍を掌握するという習氏の事情もうかがえる。

 共産党と軍のトップに就いてからの3年弱、習氏は軍の腐敗に切り込み、最高幹部を摘発してきた。自らの手で軍を立て直すという意思が感じられる。

 これまで軍事パレードは10年に一度、国慶節の10月1日に実施しており、次回は建国70周年にあたる2019年と見られていた。慣例を破って戦勝70年にあわせて行い、しかも改革開放後では最大規模だった。全軍への指導力を固める節目にしようとした狙いも見える。

 だとしても、日本を含む周辺国から見れば、艦船、航空機、ミサイルを充実させる中国が、地域の不安定要因であることに変わりはない。

 実際、中国は南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で岩礁を埋め立てて軍事拠点化を図り、領有権を争うフィリピンやベトナムの強い反発を招いている。

 今週、オバマ米大統領が訪問中のアラスカの沖合に中国艦船が出没した出来事もあった。

 軍事偏重を改め、地域の安定に努める。中国のいう「平和貢献」が国際社会の信頼を得る道は、それしかない。