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<沖縄女児暴行20年>苦しみ今も 米兵犯罪後絶たず

毎日新聞 9月3日(木)20時28分配信

 沖縄で小学生の女児が米兵3人に暴行された事件から4日で20年になる。沖縄中が怒りに震えたこの事件を契機に、過重な米軍基地負担と繰り返される米兵らの犯罪に苦しんでいた県民の激しい反基地感情が爆発し、翌年の日米両政府による米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の全面返還合意に至った。だが、今も普天間飛行場の返還は進まず、米兵らによる事件事故も後を絶たない。

 日米両政府が普天間飛行場の移設先とする同県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前では3日も移設に反対する人たちが集まり、抗議の声を上げた。沖縄本島中部のうるま市から参加した女性(67)は「人として許せない犯行。こんなことがあっていいのかと、たまらない気持ちだった」と、20年前を振り返った。

 1972年の本土復帰後、沖縄での米軍関係者による犯罪は2014年までに計5862件。このうち殺人や強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は約1割の571件に上る。米兵による性犯罪の被害状況などを調べ、女性の人権を守る活動をしている「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表(75)は「表に出ていない事件も数多い」と指摘する。

 米軍は犯罪が起きる度に外出禁止や基地外での飲酒禁止などの再発防止策を取るが、対応は一時的で抜本的な解決策にほど遠い。高里さんは、軍隊は暴力を是認した組織とした上で「その暴力が女性に向かう構造的な問題だ。沖縄から基地をなくさない限り解決しない」と指摘する。

 「またか」。当時知事だった大田昌秀さん(90)は20年前に事件の一報を聞いた時、米軍統治下にあった55年に石川市(現うるま市)で6歳の女児が米兵に暴行、殺害された事件を思い出したという。

 米兵3人による事件の翌月に宜野湾市であった県民総決起大会には約8万5000人が集結し、怒りの拳を突き上げた。壇上で「県政を預かる者として少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と謝罪した大田さんは語る。「沖縄の人間は戦後、一度も人間扱いされてこなかった。この背景が分からないと、なぜ沖縄が基地にこれだけ怒るかが理解できない」

 政府は県民の多くが反対する普天間飛行場の辺野古への移設を強行し、沖縄の基地の整理・縮小も遅々として進まない。高里さんが本土の人々へ訴える。「沖縄が声を上げ続けているのに、なぜ状況が何も変わらないのか。変えたくないという側がいるということではないのか」【佐藤敬一】

 ◇地位協定の壁、依然高く

 女児暴行事件は95年9月4日に発生し、在日米軍の日本での法的地位を定めた日米地位協定の問題をクローズアップさせた。事件後、沖縄県警は米兵3人の逮捕状を取って身柄の引き渡しを求めたが、米軍は地位協定を盾に拒否。身柄が日本側に移されたのは結局、起訴後だった。

 この事件で刑事裁判権を巡る地位協定の不平等さへの批判が高まり、日米両政府は殺人や強姦などの凶悪犯罪の場合、起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的配慮を払う」とする運用改善で合意。その後、取り調べ段階での米軍捜査官の立ち会いを条件に範囲を全ての犯罪に拡大した。

 だが、02年に具志川市(現うるま市)で起きた米兵の女性暴行未遂事件では、運用改善に基づいて県警が要請した起訴前の身柄引き渡しが拒否された。

 「地位協定が基地問題の根源」として、沖縄は抜本的な協定改定を求め続けている。米軍基地・施設は東京都や神奈川県など全国にもあることを踏まえ、地位協定に詳しい池宮城紀夫弁護士は「運用改善と言っても米側の裁量次第で不平等な状況が続いている。沖縄以外でも問題は起こりうるので国民全体で考えてほしい」と語る。【佐藤敬一】

 ◆沖縄で起きた米軍関係者による女性対象の主な事件

1995年9月 沖縄本島で米兵3人が女子小学生を車で拉致して暴行

2000年7月 沖縄市で米海兵隊員がアパートに侵入して女子中学生にわいせつ

01年6月 北谷町で米空軍兵が20代女性に暴行

02年11月 具志川市で米海兵隊員が女性に暴行未遂

03年5月 金武町で米海兵隊員が10代女性に暴行

05年7月 沖縄市で米空軍兵が女子小学生にわいせつ

08年2月 北谷町で米海兵隊員が女子中学生に暴行

10年8月 那覇市で米海兵隊員がアパートに侵入して20代女性にわいせつ

12年8月 那覇市の路上で米海兵隊員が40代女性にわいせつ

12年10月 沖縄本島で米海軍兵2人が20代女性に暴行

(市町村名は当時)

最終更新:9月3日(木)21時2分

毎日新聞

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