銀河系内である可能性が高いニュートリノとX線放射を観測 411年ぶりの銀河系内でのII型超新星の前触れか?
- 2015/09/04
- 20:40
ニュートリノ望遠鏡「ANTARES」がさそり座の方向に顕著なニュートリノバーストを観測した。X線天文衛星「スウィフト」が同じ座標でX線を観測し、その範囲に他の銀河が無い事から、411年ぶりの銀河系内でのII型超新星の前触れではないかと注目されている。
プレスリリース:
The Astronomer's Telegram (ATel #7987) . "ANTARES neutrino detection and possible Swift X-ray counterpart" (3 Sep 2015; 12:18 UT)
The Astronomer's Telegram (ATel #7992) . "Pan-STARRS imaging of the x-ray source position within the ANTARES neutrino detection region" (3 Sep 2015; 20:08 UT)

「Pan-STARRS」が示した、「ANTARES」及び「スウィフト」の観測データと一致する位置にある恒星「USNO-B1.0 0626-0501169」のIバンド画像 (中央部の緑丸で示された天体。赤い部分は明るすぎて観測できない領域を示す。) 。
画像引用元 (The Astronomer's Telegram)
大質量の恒星が、燃料が尽きて最期に大爆発を起こす現象である「II型超新星」は、観測技術が発達した近年では何例もの観測がある。しかし、銀河系内でのII型超新星は、1604年10月9日にへびつかい座の方向約2万光年で観測された「SN 1604」を最後に (観測されていないだけで実際には発生している可能性を除き) 411年間観測されていない。1つの銀河内では50年に一度程度の確率でしか発生しないため、特に近年の観測体制と技術が発達している状態でII型超新星を観測する事は、恒星の進化と内部構造を探る上で重要な手掛かりとなる。そのようなII型超新星は最近では1987年2月23日に観測された「SN 1987A」があり、実際に超新星爆発の前触れであるニュートリノが観測されているが、これは銀河系外の大マゼラン雲で起きた物であった。
SN 1987A の事例から、II型超新星では可視光線など電磁波での顕著な明るさの増大の前にニュートリノ放射が観測される事が分かっている。これは、超新星爆発の前兆として、恒星の中心核が急激に収縮する過程で、全エネルギーの99%がニュートリノの形で放出されるからである。ニュートリノは非常に他の物質との相互作用が弱く、恒星のような高密度の場でも抵抗なくすり抜け、またほぼ光速に等しい速度で放出される。電磁波の放射は、収縮して高密度となった中心核にその周りの物質が落下し、余りにも硬いため跳ね返った運動エネルギーが変換されて放出されるが、ニュートリノの放出とはタイムラグがある。電磁波は光速で運動するが、ニュートリノもほぼ光速で運動するため、そのタイムラグが遠方の観測者では数時間から数日の差となって現れる。いずれにしても、もし銀河系内でII型超新星が発生する場合、その前触れとしてニュートリノが観測される可能性が高い。
世界時2015年9月3日12時18分、フランスのニュートリノ望遠鏡「ANTARES」を管轄するD. Dornicらは、顕著なニュートリノバーストの観測と、それに伴うX線天文衛星「スウィフト」の観測結果を "The Astronomer's Telegram" 報告した。ANTARES は、フランスのトゥーロン沖、深度2500mの海底に設置された、長さ350mの光電子管アレイ12本で構成されたニュートリノ観測装置である。スウィフトは、NASAのX線天文衛星で、継続時間の短い天文現象でも素早くその座標を観測点に置く事が出来る即応性を特徴としている。
ANTARES によれば、世界時2015年9月3日7日38分25秒に顕著なニュートリノバーストを観測した。座標はさそり座の方向、赤経16時25分42秒/赤経-27度23分24秒で、不確かさは18分である。ANTARES はすぐさまその座標をスウィフトに送信し、スウィフトはその後10時間観測を行った。その結果、ANTARESが想定した座標に、磁束5×10-13~1.4×10-12erg/cm2/s (0.3-10 keV) という強いX線を観測した。座標は赤経16時26分2.12秒/赤緯-27度18分14.8秒で、不確かさは2.4秒である。
この発見が注目されているのは以下の点である。まず、ニュートリノとX線の放射源が一致した事である。次に、この座標の範囲内に既知の銀河が発見されていない事である。ANTARES によれば、この範囲に18.5等級以上の銀河は存在しない。この事は、放射源が銀河系内である可能性を強くする。実際、4台の望遠鏡で掃天観測を行っている「Pan-STARRS」が報告した所によれば、ANTARESおよびスウィフトの観測データに一致する座標にある天体では、R等級で12.6等級の、スペクトル型がG型かK型の恒星「USNO-B1.0 0626-0501169」が最も良く一致するという。Pan-STARRS1ではIバンドで23等級の天体までを網羅しているが、この範囲内において銀河や元々存在する明るいX線源は無い事からスウィフトの観測データを支持している。
尚、注意されたいのがこの座標のすぐ近くに存在する恒星「アンタレス」である。アンタレスは、さそり座で最も明るい赤い1等星である事で有名であり、そして赤色巨星の段階にある事から、天文学的なスケールで近いうちに超新星爆発を起こす天体ではないかと見られている事は確かである。しかし、アンタレスの座標は赤経16時29分24.45970秒/赤緯−26度25分55.2094秒と、わずかながらANTARESやスウィフトが示した座標からずれている。そしてPan-STARRSが報告している通り候補となる恒星もある事から、現段階ではアンタレスを仮定する要素はない。最初に観測した装置が ANTARES という名称な事からも誤解されいてるが、これは偶然である。
これらの結果は、まだ予断を許す状態ではないが、しかし銀河系内での久々のII型超新星の前触れとして注目されている。
プレスリリース:
The Astronomer's Telegram (ATel #7987) . "ANTARES neutrino detection and possible Swift X-ray counterpart" (3 Sep 2015; 12:18 UT)
The Astronomer's Telegram (ATel #7992) . "Pan-STARRS imaging of the x-ray source position within the ANTARES neutrino detection region" (3 Sep 2015; 20:08 UT)
「Pan-STARRS」が示した、「ANTARES」及び「スウィフト」の観測データと一致する位置にある恒星「USNO-B1.0 0626-0501169」のIバンド画像 (中央部の緑丸で示された天体。赤い部分は明るすぎて観測できない領域を示す。) 。
画像引用元 (The Astronomer's Telegram)
大質量の恒星が、燃料が尽きて最期に大爆発を起こす現象である「II型超新星」は、観測技術が発達した近年では何例もの観測がある。しかし、銀河系内でのII型超新星は、1604年10月9日にへびつかい座の方向約2万光年で観測された「SN 1604」を最後に (観測されていないだけで実際には発生している可能性を除き) 411年間観測されていない。1つの銀河内では50年に一度程度の確率でしか発生しないため、特に近年の観測体制と技術が発達している状態でII型超新星を観測する事は、恒星の進化と内部構造を探る上で重要な手掛かりとなる。そのようなII型超新星は最近では1987年2月23日に観測された「SN 1987A」があり、実際に超新星爆発の前触れであるニュートリノが観測されているが、これは銀河系外の大マゼラン雲で起きた物であった。
SN 1987A の事例から、II型超新星では可視光線など電磁波での顕著な明るさの増大の前にニュートリノ放射が観測される事が分かっている。これは、超新星爆発の前兆として、恒星の中心核が急激に収縮する過程で、全エネルギーの99%がニュートリノの形で放出されるからである。ニュートリノは非常に他の物質との相互作用が弱く、恒星のような高密度の場でも抵抗なくすり抜け、またほぼ光速に等しい速度で放出される。電磁波の放射は、収縮して高密度となった中心核にその周りの物質が落下し、余りにも硬いため跳ね返った運動エネルギーが変換されて放出されるが、ニュートリノの放出とはタイムラグがある。電磁波は光速で運動するが、ニュートリノもほぼ光速で運動するため、そのタイムラグが遠方の観測者では数時間から数日の差となって現れる。いずれにしても、もし銀河系内でII型超新星が発生する場合、その前触れとしてニュートリノが観測される可能性が高い。
世界時2015年9月3日12時18分、フランスのニュートリノ望遠鏡「ANTARES」を管轄するD. Dornicらは、顕著なニュートリノバーストの観測と、それに伴うX線天文衛星「スウィフト」の観測結果を "The Astronomer's Telegram" 報告した。ANTARES は、フランスのトゥーロン沖、深度2500mの海底に設置された、長さ350mの光電子管アレイ12本で構成されたニュートリノ観測装置である。スウィフトは、NASAのX線天文衛星で、継続時間の短い天文現象でも素早くその座標を観測点に置く事が出来る即応性を特徴としている。
ANTARES によれば、世界時2015年9月3日7日38分25秒に顕著なニュートリノバーストを観測した。座標はさそり座の方向、赤経16時25分42秒/赤経-27度23分24秒で、不確かさは18分である。ANTARES はすぐさまその座標をスウィフトに送信し、スウィフトはその後10時間観測を行った。その結果、ANTARESが想定した座標に、磁束5×10-13~1.4×10-12erg/cm2/s (0.3-10 keV) という強いX線を観測した。座標は赤経16時26分2.12秒/赤緯-27度18分14.8秒で、不確かさは2.4秒である。
この発見が注目されているのは以下の点である。まず、ニュートリノとX線の放射源が一致した事である。次に、この座標の範囲内に既知の銀河が発見されていない事である。ANTARES によれば、この範囲に18.5等級以上の銀河は存在しない。この事は、放射源が銀河系内である可能性を強くする。実際、4台の望遠鏡で掃天観測を行っている「Pan-STARRS」が報告した所によれば、ANTARESおよびスウィフトの観測データに一致する座標にある天体では、R等級で12.6等級の、スペクトル型がG型かK型の恒星「USNO-B1.0 0626-0501169」が最も良く一致するという。Pan-STARRS1ではIバンドで23等級の天体までを網羅しているが、この範囲内において銀河や元々存在する明るいX線源は無い事からスウィフトの観測データを支持している。
尚、注意されたいのがこの座標のすぐ近くに存在する恒星「アンタレス」である。アンタレスは、さそり座で最も明るい赤い1等星である事で有名であり、そして赤色巨星の段階にある事から、天文学的なスケールで近いうちに超新星爆発を起こす天体ではないかと見られている事は確かである。しかし、アンタレスの座標は赤経16時29分24.45970秒/赤緯−26度25分55.2094秒と、わずかながらANTARESやスウィフトが示した座標からずれている。そしてPan-STARRSが報告している通り候補となる恒星もある事から、現段階ではアンタレスを仮定する要素はない。最初に観測した装置が ANTARES という名称な事からも誤解されいてるが、これは偶然である。
これらの結果は、まだ予断を許す状態ではないが、しかし銀河系内での久々のII型超新星の前触れとして注目されている。
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