エンタメ

ひばりと錦之助の恋の行方

 高岩が東映に入社した54年は、東映時代劇の全盛期だった。京都撮影所では1日に7~8本の映画を同時に撮影するのも当たり前で、撮影所に泊まり込む毎日を送っていたという。

「撮影所に入ってみて驚いたのは、まるで江戸時代がそのまま続いているかのような世界だったことです。編集の親分だった宮本信太郎とか、東映のスタアであり重役でもあった片岡千恵蔵のような御大など、撮影や照明や装置、各職場に殿様のような人がいる派閥の世界。今の社員にそんな話をすると、信じられんって言いますよ」

 51年に東横映画・太泉映画を吸収合併して発足した東映は、満州の国策映画会社だった満映の出身者たちを受け入れて娯楽映画の制作に邁進していた。

「私が東映に入社するといったら、周りから『東映ってどこにあるの。東宝とか大映なら知ってるけど』と言われたくらい。ひどい貧乏会社で、それがこんなに大きくなるとは誰も思わなかった。平均年齢が20代で人件費が安く済む中で、本当に映画が好きな若い人たちが集まって、猛烈な勢いで映画を作っていくうちに、会社が大きくなっていったんです」

 その頃、若手スタアとして大人気だったのが美空ひばりだった。少女歌手としてスタートしたひばりは、やがて映画女優としても人気を博し、東映でも「ひばり捕物帖」シリーズ(60年~)などに出演していた。そのひばりが、歌舞伎界のプリンス、中村錦之助(のちの萬屋錦之介)と共演した時のことだった。ステージママであるひばりの実母・加藤喜美枝と、お目付け役的存在だった三代目山口組・田岡一雄組長、当時製作課長だった岡田茂の三者で、深刻な話し合いが持たれたことがあった。料亭内での一幕を、高岩が語る。

「ひばりのお母さんと田岡さんがどうしてもひばりの名前を出演者のトップに出せと言って聞かないのです。しかし、歌舞伎界の御曹子をトップにしないわけにはいかない。『今回はひばりさんはトメ(出演者の最後)にさせてください。ひばりさんをトップにするなら、相手役は里見浩太朗になりますよ』と、岡田さんがはっきり言い返したので、田岡さんが感心して、『この人の言うとおりや』と逆にお母さんを諭したのを覚えています」

 ひばりと錦之介には、初恋の物語があり、2人の関係はひばりの最後の病床まで続いたという。

「一緒になることはできなかった。それでも2人の愛情は続き、ひばりさんが晩年、体を悪くした時、錦之介さんは毎日見舞いに行っていました。長年映画界に生きてきて、男優と女優、監督と女優というものは、時には本当に愛し合うことでいいものが生まれるというのが、正直な実感ですね」

 ひばりの人生の終幕には、公開されることのない、錦之介との男女の関係を抜きにした睦み合いのシーンがあった。生身の人間によって作られた時代の映画に、終わりはないのかもしれない。

カテゴリー: エンタメ   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

アサ芸チョイス:

  1. 41796
    PR
    「少額なら大丈夫」が命取り!家族にも話せない“秒速で増え続ける借金利息”の解決策とは?

    ママ友会でのランチ代やイベント費用がかさみ、夫にも相談できないまま参加するお金が足りなくなってつい借金をしてしまった。また、不景気で小遣

  2. 39012
    PR
    薄毛治療までポイント払い!?新橋・ヤマダ電機に開業したAGA専門クリニックはココが凄い!

    東京・新橋──。昼夜問わずサラリーマンが往来するこの街に、家電量販店チェーンのヤマダ電機が新業態店舗「LABI アメニティー&TAXFR

  3. 42670
    PR
    類似品に注意!通販限定の薬用歯磨き粉はお口のトラブルのうれしい味方

    毎日食後に歯磨きするのに、なかなか消えない歯の黄ばみや口臭。他人の口臭に気付いた時に「もしかして自分も‥‥」と思い、拭い去れない不安‥‥

注目キーワード

人気記事

1
東京五輪エンブレム問題・佐野研二郎は高校時代から「パクリ」をやっていた
2
ダサすぎ!片岡愛之助と藤原紀香、「ラブラブ写真」であの業界からの評判が急落
3
本田翼が胸を触られてる?「恋仲」野村周平の“あすなろ抱き”にファン激怒!
4
浜崎あゆみ大トリのa-nation、生中継で空席祭りが赤裸々に!
5
暴言、DV、事故…V6・岡田准一の周辺がトラブルだらけの謎