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[FT]中国軍事パレード、他国けん制明白(社説)

2015/9/4 14:00
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 今週北京で行われた第2次世界大戦の終戦を記念する抗日戦勝70周年記念軍事パレードで、習近平国家主席は意外にも融和的な雰囲気を作り出そうとした。習氏は、中国が地域覇権や領土拡大を追求せず、他のいかなる国に対しても過去に受けた苦しみを負わせることは決してないと宣言した。また、「世界平和を守るという神聖な義務を忠実に履行する」とも主張した。そしてさらに、230万人余りの兵力を30万人削減するという驚きの発表を行い、平和への意思表示だと説明した。

天安門前を進む自走高射砲「PGZ-07」のパレード(3日、北京)=AP
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天安門前を進む自走高射砲「PGZ-07」のパレード(3日、北京)=AP

 中国の周辺国が習氏による平和主義のアピールを懐疑的に見るのは無理もない。今回のパレードは北京で6年ぶりに行われた大規模軍事パレードで、中国がこの地域で積極的な姿勢を強める中での開催となった。中国は領有権問題のある地域や海域を「中核的な国益」とみなし、主権を主張している。領有権争いで妥協を許さないこうした中国の姿勢はアジア太平洋地域に紛争をもたらしかねない。

 習氏は抑え気味な言葉で外交辞令を述べたが、それで今週の軍事パレードが発したその奥にある、同国の軍事力が増しているというメッセージがかすんだわけではない。パレードでは大陸間弾道ミサイルや最新鋭爆撃機などの兵器の誇示が目立った。これらはすべて、同国が年間国防予算で過去20年間にわたって2ケタの増強を続けてきた成果だ。米海軍は特に、太平洋の米軍事力の心臓部である空母を脅かす「空母キラー」ミサイルに注目するだろう。中国軍の人員削減は軍縮とは程遠く、むしろ同国が必要とする能力の高度化に自由に使える国防予算を増やすことになる。

 しかし、懸念の最大の理由は中国の強気な態度だ。中国は今週アラスカ沖に艦船5隻を派遣した。一方的に米国沿岸に最接近したこの行為も中国の強気姿勢の表れだ。だが、一番の懸念は同国の領土拡大目標にある。近年、ベトナム、インド、日本、フィリピンは、中国が領有権が争われている地域に侵入していることについて不満を申し立てている。中国は南シナ海の「埋め立て」プロジェクトを行っており、中国本土から遠く離れた領海の主権についての主張を強めるために軍事施設をおそらく備えることになる本格的な島の造成に取り組んでいる。

■太平洋全域から反感

 中国に軍事力の強化や領有権の主張を行う権利は当然ある。気がかりなのは、領有権を主張するときの同国のやり方だ。理想を言えば、中国が国際調停を通じて他国との意見の違いを解消するのが望ましい。例えば、フィリピンは南シナ海の海上境界線を巡る中国との激しい対立の仲裁をハーグの常設仲裁裁判所に申し立てたが、中国はこの件は国際的な判断に委ねるものではないと主張し、仲裁を受け入れようとしない。

 国際裁判所の仲裁に応じることを拒み、急速に強化している軍事的潜在能力を存分に見せつけることで、中国が太平洋全域から反感を買っていることは明らかだ。日本とオーストラリアは防衛費を増やし、米海軍は艦船を太平洋に派遣している。また、インドやフィリピンなどの国々は米国と戦略面での連携を強めている。中国の姿勢は、コントロールできないほど緊張を高める危険性をはらんでいる。

 東アジアは世界で最も繁栄する平和な地域の一つだ。北京の記念式典での習氏の演説はこの状況を維持する決意を示すものだった。中国の外交・防衛政策がこの言葉の方向に向かい始めることを望む。

(2015年9月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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