“鈴木大地“長官人選のウラ側

2015年9月4日11時57分  スポーツ報知

 10月に発足するスポーツ庁の初代長官に、1988年ソウル五輪競泳金メダリストの鈴木大地氏(48)が就任する方向で最終調整が進んでいる。現役時代は水中に潜ったまま進むバサロ泳法を駆使して活躍した。13年に水連会長に就任してからも周囲の評価は高かった。40代という若さ、マネジメント能力、発信力を買われ、水連の組織ガバナンスも評価されての判断だった。

 Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏、84年ロサンゼルス五輪柔道金メダリストの山下泰裕氏も有力候補だった。だが、川淵氏は日本バスケットボール協会の会長を務めており、男子のナショナルリーグ(NBL)とTKbjリーグを統合して来秋開幕する新リーグに向けた準備のまっただ中。首都大学の理事長としての職務もあり、就任は難しい状況だった。山下氏も暴力問題などに揺れた全日本柔道連盟の副会長として「改革の途上。道半ば」(政府関係者)だった。

 今回は、5年後の五輪・パラリンピックを見据え、金メダリストをトップに据えるインパクトを重視した人事とも言える。新国立競技場問題、エンブレム問題などがっかりするようなニュースが続く中で、久しぶりの明るい話題だろう。

 政府内では、今年春頃から長官人選を進める中で、民間企業からの起用も検討されていた。知名度の高い女性経営者、毎年急激な勢いで成長を続ける企業幹部、IT関連のカリスマ経営者らを推す声もあった。もし決定していれば、鈴木氏と同じようにサプライズになったであろうビッグネームぞろいの経営者ばかりだった。自民党幹部は「民間経営者を考えていた」としつつ、「ただ、長官としての仕事と企業トップの兼任は物理的に無理があった」と明かす。

スポーツ庁の主な役割としては選手強化のほか、スポーツを通じた健康増進、地域振興とある。「地域振興」というからには、やはり経営者的視点も必要にはなるだろう。

 これまでのように単なる予算のバラマキでは許されるはずもない。総工費が膨張して破綻した新国立競技場問題で決定的に欠けていた視点でもある。一連の問題の中で、2020年東京五輪組織委トップからは「3000億円をかけてもスタジアムを造る」という時代錯誤的な発言もあった。建設費の原資は税金であることを忘れているのだろうか。

 開催都市のトップである舛添要一都知事は、5月22日のインタビューでいち早く新国立計画見直しを提言した。都が建設する施設を五輪後も有効活用をしようと、民間企業の募集も始めた。舛添知事が鋭く批判した下村博文文科相も、最後まで計画見直しにこだわっていた1人でもある。「癒着」と批判されるのを覚悟して、民間企業や有識者と極秘に接触を図り、提言に耳を傾けている。また、自民党の若手からベテラン議員まで約70人は「成熟国家」として迎える東京五輪の成功を考え、「負の遺産」としないよう行動を始めた。少しずつだが、前に進み始めたとはいえる。

 スポーツ庁は40代の金メダリストをトップに据え、スタートを切ろうとしている。組織委はどうだろうか。

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