近年の株式の山谷を2000年のITバブルから振り返ってみます。インターネットが広く普及して皆が過剰な期待を持ちました。これまでの株式市場を見ても運河とか鉄道網とかこれまでに無いものが現れると過剰な期待を持ちます。当時はインターネットでもう不況は起こらないとか、経済が驚異的に効率的になるというような記事が日経にも掲載されていました。NASDAQなどは創業間もないIT企業がPER100や1000まで買い込まれていました。この過剰な期待が剥がれ落ち谷を迎えます。9.11は米国人の愛国心を呼び起こし、本来の谷の出現を遅らせてしまいました。この不況対策として金利を下げる等の緩和策を取ったのですが、その緩和策が住宅ローン市場に広がり住宅バブルを引き起こしました。あまりの行き過ぎに引き締めを行ったのですが、住宅価格上昇を前提としたサブプライムローンが広く普及しておりこのバブルが弾けました。当時金融工学の普及でローンの証券化が進み世界中にこの証券が分散されていたのですがその影響を多くの人が把握できず疑心暗鬼を招き、サブプライムバブル崩壊となりました。このバブル崩壊に対処するため世界中で金融緩和策がとられ米国は現在で続くゼロ金利政策とその後の多量の量的緩和を行いました。中国は独自の超特大金融緩和を行ったわけです。その後、日本、欧州も多量の量的緩和を推移し現在の世界的QEバブルを引き起こしています。住宅価格も日本だけが例外ですが、ニューヨーク、サンフランシスコ、バンクーバー、ロンドン、シドニー、香港と驚異的価格になっています。多くは中国からの資金によるようです。FRBが金利引上を行なわなくてもすでに米国債の金利は上昇過程にあり、また米国では最低賃金が今後16ドル/時間程度に上昇し賃金インフレが到来します。
昔と違うのはほとんどの証券口座がインターネットになっており、バブルがはじけた時に皆が恐怖心から株式を売ってしまいます。むかしなら証券会社の窓口に行ったり、電話をしたりして相談しながらポートフォリオ変更をしたのですが、いまはほんの数分で売買してしまいます。個々の銘柄ではわかりませんが、S&P500のような指数ETFで株式を持つなら、たとえサブプライムバブルの頂点で購入しても現在ではその価格をこえています。しかし、人間の心理はこれに耐えることができません。まさにHoward Marksの言う、投資で一番大切なのは心理学であり、経済学でも会計でもない、という言葉そのものです。
多分次の谷底は一年くらいさきで、そのときには主要なメディアが、前代未聞のゼロ金利政策と超級量的緩和不況の回復には数年を要する、というようなことを書き立てるでしょう。そこで多くの人が不安になり売りが売りを呼ぶような状況になり底を迎えるでしょう。その後また長期的Bull相場になると思っています。いくら米国がかつてのようなスーパーパワーを無くしたといっても、軍事、政治、資源、人口動態を考えれば米国の優位性にゆらぎはないでしょうから。
と思っています。
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