東京オリンピックのエンブレム問題で、撤回が正式に決定した。1日午後、組織委員会が、経緯などについて会見した。最初の佐野さんの当初案ですね、審査委員会で1等ということになった案を、皆様方に発表いたしました。それが、いろいろな観点から、IOC(国際オリンピック委員会)の通常の手続き、すなわち、世界中の商標登録と問題がないかどうかというチェックにかけられた結果、似たようなロゴがあると。このままでは、適当でないと。何らかの対処をすべきであるという話がありましたので、われわれは、これを修正するということにいたしまして、第1次修正案、それを組織委員会が、チェックいたしまして、さらに、最終案にしたと。それが、今まで皆様方にご覧いただいていた、オリンピックのロゴでありました。それをご覧いただいて、おわかりいただけたと思いますけども、ベルギーのリエージュのロゴとは、コンセプトも違うし、もちろん、子細に見れば、似ているところもあるんですけれども、似ていないところも、たくさんあり、全く違うものであるということをお話しし、この点については、私は、ご理解を得たというふうに思っております。そういう意味で、8月28日まで、われわれは、ベルギーのロゴとの関係においては、全く問題がないということを申し上げ、続けてまいりました。翌土曜日に、一部、佐野さんの案の展開例ですね。展開性を説明するための写真に流用されたのではないかという指摘がなされた。それから、翌日曜日、今度は、そもそも、一番最初の佐野さんの案によく似たロゴがあると。これは、ヤン・チヒョルトさんという、ドイツのタイポグラファーの展覧会で、よく似たものがあるという、ご指摘がありました。私どもも、それを見て、全く違った、新たな事態が起こったというふうに認識をいたしまして、まず、佐野さんご本人から、お話を聞く必要があるだろうというふうに、月曜日、昨日(8月31日)判断いたしました。同時に、審査委員会の皆様方にも、これは、佐野さんのものを1等として選んだ皆さん方でありますので、その方々にも意見を聞こうということで、現実にお集まりいただいたのは、委員長の永井(一正)先生だけなんですけど、きょう午前中に、佐野さん、それから永井さん、私ども若干、お付きの人もいるわけですけれども、話し合う機会を持ちました。佐野さんからは、まず、展開例に使った写真というものは、もともと、応募した時に、審査委員会の内部資料のために、あれを作ったんだと。ところが、同じものが、7月24日、公式エンブレムとして発表される時に、それが使われたわけですけども、審査委員会のクローズドな場では、これは、デザイナーとしては、よくある話なんだそうでございますが、それが、公になる時には、権利者の了解なり、なんなりが必要だというのが、これが当然のルールでありますけど、それを怠ったと。それは、不注意でありましたと。24日に、そういうことだったものですから、8月28日の記者会見でも、いったん公開されたものですから、当然、それは扱えるだろうという判断で、使われたということであります。佐野さんは、そういうことでございますけれども、組織委員会としても、そのあたりは、重々ご注意を申し上げるべきではなかったかということは、反省いたしますけれども、そういう経緯でございました。それで、佐野さんのお話によれば、その権利者に、事後的ではありますけども、了解といいますか、どうしたらいいかということを、お話をさせていただいておりますというご説明でありました。それから、ヤン・チヒョルト展におきますポスター、バナーにつきましては、佐野さんは、確かに見に行きましたと。しかし、ポスター、バナーというものが、どういうものであったかは、記憶にありません。自分は、独自に、あのデザインを作りましたと。今、見てみると、確かに丸い円が、「T」の字の右下にありますけれども。あのポスターの方は、ドットということですね。「T」ドット。佐野さんのは、日の丸であるとか、鼓動であるとか、情熱であるとかといったようなものを、もろもろをイメージしながら、「T」に隣接してつけたものであり、色も違いますと。これは、模倣ではないと。わたしは、全く模倣はしていませんと、自分のオリジナルであるというふうに思っていますということでありました。永井審査委員長は、わたしは、これについて、「どういうふうにお考えになりますか」と伺ったところ、デザイン界の理解としては、そのように、佐野さんの9分割されたデザインの基本、それは、ピリオドとは全く違うものであるので、違うものと認識できる、十分できるものであって、佐野さんの言う通り、これは、佐野さんのオリジナルなものとして認識されると、自分は思いますと。デザイン界としては、そういう理解でありますということでありましたが、同時に、ここまで、いろいろな形で問題になったときに、一般の国民の方々が、今のような説明で、本当に納得されるかどうかということについては、現状、問題があるかもしれませんと。これは、永井さん自身のお話でありました。残念ながら、自分のこのような説明、それから、佐野さんの説明は、専門家の間では、十分わかり合えるんだけど、一般国民には、わかりにくい。残念ながら、わかりにくいですねという話がありました。われわれ組織委員会としては、佐野さんの原案が、模倣でないということに対する専門的な説明。これは、私どもは、専門家ではありませんので、そういうことに対する判断する立場には、ありません。専門家の判断を良として、そのように理解いたしました。しかし、一方で、一般国民の理解は、なかなか得られないのではないかということについては、1つの永井さんのお話と同じように、われわれも、共有する懸念であると。大変難しいのではないかといったお話をいたしました。このように、それぞれ、お話したあとで、いろんな意見交換といいますか、協議をいたしましたが、佐野さんからは、「わたしは、デザインが模倣であるから取り下げるということは、できない」と。しかし、模倣ではないけれども、いろいろな昼夜を問わず、佐野さん本人、及び家族に、いろいろな、彼の言葉によれば「誹謗(ひぼう)中傷」がなされるということが続いていると。それから、第2に、自分はデザイナーとして、オリンピックに関わるということが憧れ、夢であったけれども、いまや、一般国民から受け入れられないということで、むしろ、オリンピックのイメージに悪影響を及んでしまうということを考えると、1つ、法律的な問題で、ちょっとわかりにくい話なんですけども、原作者、佐野さんのあのエンブレムは、当選と同時に、組織委員会の所有物になっております。ですから、原作者としての立場なんですね。所有者としての立場ではない。しかし、原作者として、提案を取り下げたいというお話がありました。われわれは、佐野さんは、どうも所有権が、自分には、いまやないので、自分が取り下げることは難しいというようなこともおっしゃっていたらしいんですけれども、原作者としての立場で取り下げたいという、お話がありました。
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