長谷川幸洋「ニュースの深層」
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エンブレム騒動を嗤えない 
新聞の世界でも、こんなにパクリが横行している!

あの経済学者も頭を痛めた大手紙の「ヒドい引用」

2015年09月04日(金) 長谷川 幸洋
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〔photo〕gettyimages

業界の人なら誰でも気づいている

東京五輪のエンブレム問題が大炎上した。盗用は今回のエンブレムに限った話だろうか。実は新聞記事や社説の世界でも似たような模倣、盗用、盗作、アイデアのパクリがしょっちゅう起きている。コピペ文化の一掃は、まずマスコミから始めなければならない。

まずエンブレム問題について。大会組織委員会は佐野研二郎氏のデザインを取り下げ、再公募を行う。ところが、問題の核心であるエンブレム盗用を認めたのかといえば、組織委も佐野氏本人も認めていない。

それでも取り下げざるをえなかったたのは、佐野氏の過去の作品やエンブレム活用の展開例にした羽田空港の画像が盗作、あるいはコピペに基づいていたからだ。五輪エンブレムの原案自体も他作品との類似が指摘されている。

佐野氏は自分の事務所のホームページで「模倣や盗作は断じてしていない」と強調する一方で「エンブレムのデザイン以外の私の仕事において不手際があった」と認めている。

だが、羽田空港の画像はとても「不手際」などというレベルではないだろう。完全なコピペによるアレンジだ。元の作品には著作権が明示してあったのに、わざわざコピーライトの文字を消しているのだから、確信犯といってもいい。

サントリーのトートバッグはスタッフの仕事と説明していたが、これも言い訳にはならない。私はサントリーの件が報じられた直後、テレビ番組で「佐野氏は自ら取り下げるべきだ」と発言した。

組織委に言われる前に、創作に関わるアーティストのプライドにかけて、自ら決断すべきと思ったからだ。その時点で取り下げていれば、コピーライトの消去という「自殺行為」も発覚しなかったかもしれない。いまとなっては手遅れである。

組織委もお粗末だった。記者会見で原案と資料を発表して「これでオリジナルと証明できる」と胸を張ってみせたが、会見自体が墓穴を掘ってしまった。こうなると組織委の運営能力にも疑問符がつく。

再公募するなら、少なくとも審査委員を全員入れ替えて、選考過程も完全に透明にすべきだ。デザイン業界の人間を集めてきて「専門家が選び直した」などと言っても、そんな内輪の専門家自体の能力と公平性、中立性が疑われているのだから、話にならない。

さて、そこで本題の新聞コピペ問題だ。記者たちは自ら「コピペがある」などと口が裂けても言わないが、業界の人間ならだれでも気付いている。

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